第3話

   

「だいたいねえ、ゆうこは心構えがなってないんだよ! 合宿途中で帰らなきゃいけないのも、補習があるからでしょ? 試験で赤点たくさんとったからだよね?」

「うん。だから合宿半分だったから、練習足りないから、こうして帰り道でも練習してる……」

「そこじゃなくて、まず試験で赤点とらないようにしよう、ってこと! そうすれば補習もないから、部活もきちんと参加できるよね?」

「いや、それは私だけでなくお互い様……」

「わかってるよ! これは自分自身にも言い聞かせてるの! でも少なくとも私は、自業自得だと思って納得してるよ? ゆうこみたいに、駅のホームで練習したりしないよ? 薙刀もきちんと仕舞ってるよ?」

 セミロングの彼女の口調は、どんどんヒートアップしてきた。

 それでも理路整然と友人を説き伏せようと試みているらしく、発言内容には、状況や背景の説明が多い。はたで聞いているだけの私にも、事情が理解できるほどだった。

 おかげで、先ほどの「合宿ならば」の疑問もきれいに解消したし、木刀もどきの正体も判明する。

 彼女たちは高校の部活で薙刀をたしなんでおり、その合宿を途中で早退するところなのだ。なるほど薙刀は、時代劇でも大奥の女たちが手にする武器だから、きっと女性向けの武道なのだろう。

 私が小さい頃に流行はやったロボットアニメでは「ビームナギナタ」という武器も出てきたが、あれは柄の両端に刃があったので、明らかに薙刀とは別物。時代劇に出てくる薙刀こそが、本当の薙刀のはず。

 ゆうこの持つ薙刀は時代劇の薙刀とは異なり、先端も金属製の刃ではなく、柄と同じ木製のようだが……。考えれてみれば、剣術だって真剣ではなく木刀や竹刀を使うのだから、競技用の薙刀ならば、これが普通なのだろう。

 色々と納得できた私は、あまりにもスッキリしたために、つい声に出してしまう。

「なるほど、あれが本物の薙刀か……」

   

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