第2話 見知らぬ写真

 Aさんは最近、毎晩酒を飲んで、テレビを見ながら寝てしまう。

 深酒してるわけじゃないのに、すぐ眠くなる。

 俺と同じ。

 朝は目覚ましで起きて、シャワーを浴びて、気合を入れて出勤。


 家を出て、駅まで徒歩10分くらい。

 コロナ寡でも在宅勤務制度はなくて、普通に電車通勤。

 乗り換え駅までの30分は座れないから、立ったままスマホを見る。


 Aさんは俺と同じくiPhoneユーザー。 

 格安SIMを契約して古いiPhoneを使ってた。

 今はiPhone13が最新だと思うけど、Aさんは今でもiPhone7を愛用。

 WikiによるとiPhone7は2016年発売で、2019年には廃盤になったらしい。

 でも、5年経っても普通に使える。


 今のiPhoneと違うのは、画面が小さいことくらいだと思う。

 格安SIMを契約して毎月1000円くらいで持てるから、Aさん的には安い方がよかった。友達と連絡を取るためにLineを使えればいいんだ。


 AさんはせっかくiPhoneを持っていても全然使いこなしていない。使っている機能なんて、電話、Line、ネットニュースを見るくらい。俺もほぼ似たようなもんだ。じゃあ、androidでいいだろうと思うかもしれないけど、iPhoneは使いやすい。文字の入力がしやすい。買い替えた時のデータの以降も超楽。


 iPhoneは画面に過去の写真が勝手に表示される。俺はおっさんだから、どういうタイミングで出て来るかわからないで使っているが。

『2020年美味しい食事』とか勝手にタイトルまでつけてくれてる。それで、音楽付きで食べ物の写真が次々とプレビューされて気持ちが悪い・・・。プログラムの何かが食べ物の写真だと認識してるんだろうけど。人の姿は『ポートレート』、冬物の服を着てると『冬』とか・・・勝手に、人物や四季まで識別してタイトルをつけてくれる。不気味だ。


 Aさんは、ある時気が付いた。

 自分のスマホに全裸の女性の写真が保存されてることに!

 Aさんは慌ててスマホをしまった。

 満員電車でヌード写真を見ていたら、女性から変態だと思われてしまう。


 Aさんはソワソワした。

 あの写真は・・・何だろう。


 乗り換え駅でトイレに行って、その時こっそり見てみようと思った。

 10分くらい見るだけなら大丈夫だ。

 何であんな写真が入っているんだろう?

 俺の携帯に・・・。


 Aさんは、トイレの個室に入って携帯の写真を開いて見た。


 プロが撮ったものをダウンロードしたのではなく、恐らく素人撮りだ。

 写っているのは、ダブルベッドくらいの幅広ベッドが置いてある、閑散としたベッドルーム。白いシーツの上に女の子が寝ている。後ろに窓が写っている。海外の家か別荘みたいなつくりの気がした。

 

 その女性はまだ若くて20代半ばくらい。

 髪が長くて強めのパーマがかかってる。

 肌は張りがあって、色白。

 スタイル抜群。

 胸はほどよい大きさで形もいい。

 先端の色もピンクできれい。

 ウエストはくびれがあって、足はすらっとして程よい肉付き。

 全身痩せすぎず、ほどよい丸みがあって、万人が好む体型だ。


 その人は寝ているみたいで、目を開いた写真はない。

 大量の画像があった。

 色んな角度や姿勢で。きわどいポーズを取らされていた。


 中には本番動画まであった・・・!

 Oh, my god!

 若いイケメン風の男が写ってるが・・・Aさんじゃない。


 女の子は寝てると言うより、睡眠薬を飲まされているか、泥酔している感じだった。Aさんは、女性とそんなそんな状況になったことはないけど、寝てるだけなら目を覚ましてしまうだろうってことくらいはわかる。


 だから、その写真は、ちょっと犯罪の匂いがした。


 Aさんは遅刻覚悟で写真を最初から見た。2017年が最初。AさんがiPhone7をゲットした年だ。取り敢えずいろいろな女の裸ばっかり。

 みんな20代くらいのキレイな子だ。


 セミヌードみたいなのから、ポーズをとっているのもある。

 風俗の人っていうよりは、みなモデルみたいにきれいだ。

 何でこんなにいっぱい写真があるんだろう。


 自分が飲んで意識をなくしている間に、夢遊病のように出かけて女の子をナンパしてるんだろうか。

 しかし、俺がそんなにモテるはずない。

 それに、お金でそれほど多くの女性を買うほどの余裕もない。


 それか、酒に酔ってるのに、ネットからせっせとヌード写真をダウンロードしてるんだろうか。

 

 まあいいや・・・これが仮に幻覚でも、かわいい女の子の裸の写真を見られるならいいや。と、割り切った。



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