第6話藍原家の伝承(後編)
突然のことにおどろいた私と白府、そして月子さんから、シロヘビのまがたまを巡る両家の争いの話を聞くことができた。
「このシロヘビのまがたまを先代の当主が買い取る時、先に作者である絵師の個展に出展した後、藍原家が買い取る約束をしていたのです。ところが個展でその絵を見た蛇之目家の当主が、この絵を欲しいと言い出したので、先に約束をしていた藍原家の当主と争いになりました。争いの末に約束通り藍原家が買い取ることになったのですが、あきらめきれなかった蛇之目家はなんと絵を運ぶ運送屋を買収して、絵を蛇之目家のところへ運ばせたのです。それを知った藍原家の当主は落胆し、もう一度同じ絵を描いてくれと絵師に頼んだそうですが、同じ絵は二度描けないと絵師が言うので、今度は絵師と口論になりました。それで、その絵師と藍原家の関係は途絶えてしまい、その当主は死ぬ間際に『あのシロヘビのまがたまをもう一度見たかった』と言って亡くなったそうです。」
さらに月子さんの話は続く。
「その次の当主は先代の意思を引き継ぎ、シロヘビのまがたまを返してくれと蛇之目家に何度も交渉をしたのですが、ことごとく追い返されてしまいました。そこで当主はわが屋敷の庭から蛇之目家の倉庫の床までを、地下通路でつなぐ計画を立てたのです。莫大なお金と人員を使って通路を掘らせて、そして通路が無事に完成というところで、その当主は急死してしまいました。」
「そこまでして、このシロヘビのまがたまを取り戻したかったのですね。」
「はい、ですが次の当主はシロヘビのまがたまに関心はなく、むしろ地下通路を掘ったことで藍原家の財政が底をついたということもあり、シロヘビのまがたまの存在は忘れ去られてしまいました。私は藍原家の過去の文献を見て、シロヘビのまがたまの存在を知ったのです。」
「このシロヘビのまがたまに、そんな過去があったとは・・・。早く気づいていたら、早くから返すことができていたのに・・・」
白府は自身の無知を、後悔したのだった。
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