これから

 美崎さんは、オレに何か話がしたかったん

 じゃないんだろうか…

 

「美崎さん」

「ん?」

「あのさ、久しぶりにあの高台行かない?」

「えっ、いいの?行きたい!」

 

 美崎さん…。

 オレなんかと高台に行くだけなのにそんな

 嬉しそうな顔してくれて。

 

 あー…

 かわいい。

 

 そしてオレたちは、長い階段を登った。

 この階段は、何度ものぼったから慣れてい

 るものの、やっぱり疲れるな…。

 

 

 そして絶景の場所に着いた。

 

「わぁー、やっぱりいつ見てもきれー」

「ほんといい景色だわ」

 

 

「ねー、紀田くん」

「んー?」

「わたしさ、紀田くんがわたしのおばあちゃ

 んおんぶして全力で階段のぼってくれた時

 すっごくかっこいいなって思ったよ。あの

 時すごくかっこよかった」

「あー、あん時は必死だったから」

「あとさ、席が隣になった時よくわたしに話

 しかけてくれたよね」

「あ…話しかけたってか、色々美崎さん気に

 なるポイント多くてさ」

「えっ⁈わたし変だった⁉︎」

「うん…実は。」

「えー、例えば何が変だった⁉︎」

 慌てる美崎さん。

 そんな美崎さんがかわいい。

 

「例えば、毎朝おはようって挨拶してきたり

 机ピッタリくっつけてきたり目めっちゃ見

 て話してくるじゃん。だから、オレなんか

 オタクをからかうゲームされてんのかなっ

 てはじめは、びびってたんだ」

「えっ…そうだったの⁈なんかごめん」

「ううん。オレが勝手に警戒してただけって

 か、疑っててごめん」

「あ、ごめんなんてそんな。でもさー…あの

 頃が一番楽しかったなー」

「え、楽しかった⁉︎」

「うん‼︎紀田くんと話せて嬉しかった。でも、

 紀田くん…どんどん遠くにいっちゃうんだ

 もん。」

「え…?」

 それは…

 どういう意味なんだろう。

 

「あの…」

 

「ふふっ、紀田くんがどんどん離れて行くか

 ら、わたしはずっと紀田くんの見守り隊し

 てたんだよ」

 

 え…

 

 

 

 

 

 

「美崎さん、オレさ…高嶺の花って高校の時

 言ったじゃん。アレ美崎さんの事だったん

 だ。」

「えっ⁉︎わたし⁉︎なんで⁉︎」

「なんでって美崎さんは、オタクのオレには

 高嶺の花だったんだ」

 

 美崎さんは、オレを見つめてポロポロ涙を

 流した。

 そして、

「うれしい」

 って小さな声で言った。

 

 …

 

 もしかしてオレたちって隣の席になった時

 からずっと…

 

「美崎さん、オレずっと美崎さんが好きだっ

 た」

 

 泣いている美崎さんを優しく包み込んだ。

 

 すると美崎さんも

「うん。ありがと。わたしもずっと好きだっ

 たよ」

 と言った。

 

 長く遠回りしてしまった。

 

 オタクでもこんな奇跡が起こるんだ。

 

 オレは美崎さんを抱きしめたまま言った。

 

「三年の時ヲタ芸ライトでハート描いたの覚

 えてる?」

「うん」

「あれ、実は美崎さんにこっそりメッセージ

 送ったんだ。」

「えーっ、なら早く言ってほしかった‼︎わた

 しあれは、絶対紀田くんの想いを寄せてい

 る人に送ったやつだって思ってその夜めっ

 ちゃ失恋と思って泣いたんだからぁ」

 と、オレのお腹をぽこぽこ優しく叩いた。

「えっ、マジか。ごめん」

「ううん。今なら許す」

 オレを見上げる美崎さん。

 

 あー…

 めっちゃかわいいんすけど。

 

 オレはたまらず美崎さんにキスをした。

 

 そして、

「もう美崎さんを泣かせるようなことしない。

 だから、これからはオレがずっと美崎さん

 の見守り隊になってもいいかな?」

 と言った。

 すると美崎さんは、

「うん。ありがとう」

 と言ったかと思うと美崎さんがオレにキス

 をしてくれた。

 

 

 えらい遠回りしてしまった。

 でも、こうして美崎さんが今オレの胸の中

 に包まれている。

 

 不思議だけどすごく落ち着く。

 

「好きだよ」

「わたしも」

 

 オレたちは、絶景の場所でこれからはじま

 る。

 

 

 

 おしまい

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ヲタクのオレがまさかの美少女と隣の席になり…マジかよ連発だった件について 猫の集会 @2066-

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