犯人

 契約が順調に進んでいくと誰もが思ってい

 た。

 

 しかし…

 オレのせいで契約が破棄されそうだ。

 

 

 さかのぼること数日前

 サキさんが会社に来た後、オレはみんなか

 ら大口契約おめでとう‼︎とたくさんの祝福

 の声をいただいた。

 

 しかし…

 オレの事よく思っていない人もいたのだろ

 う。

 

 なぜかというとその契約の数日後に社内一

 斉メールで

 『紀田は男が大好き人間。そして変な性癖

 がある』

 と流されたからである。

 

 たぶんこのメールをみたところでサキさん

 は、そんな嘘きにする事ないよって笑うだ

 けで済ましてくれるハズだ。

 

 しかしこれはお互いの会社も関わってくる

 のだ。

 

 当人が気にしないからそれでよしとは、い

 かないのであった。

 

 

 一応先方の方は、この情報を流した本人を

 突き止めて謝罪していただければ契約続行

 という条件にしてくれたのだが、一体だれ

 がこんな情報を…。

 

 やっぱり後から入社したオレがいきなり大

 口契約をとったのが面白くなかったのだろ

 うか。

 

 

 それからまもなく犯人を突き止めることに

 成功した会社。

 

 そして犯人は、意外な人物だった。

 

 …

 

 オレは広い会議室に呼ばれて中に入った。

 

 部長が座っていた。

「紀田くん、ま、とりあえずここに座って待

 っていてください」

 と言った。

 

 そして椅子に座って待っていた。

 …シンとした会議室。

 部長と二人きり…とても気まずい。

 

 少し遅れてオレの上司も同席した。

 

 ギシッと椅子の音だけが響いた。

 

 しばらくすると、

 コンコン…

 

 静かに力なくドアがノックされた。

 

 …キィ。

 ドアがあいた。

 

 そこに立っていたのは…

 

 オレが入社まもなく告白してきた女性…

 なぜあなたが今更こんなことを。

 

 オレは、犯人が男性とばっかり思っていた

 のでまさかの女性が入ってきたからびっく

 りした。

 

 部長が

「そこにお座りなさい」

 というと彼女は、静かに頷き座った。

 

「君はなぜあんなことをしてしまったのです

 か?」

 部長の質問に、彼女は…

「はい…ただのフラれた腹いせです。」

 と淡々と話した。

 

 えっ⁉︎

 もう何年も前の話なんっすけど…

 

 でも、かなり根にもたれてたんだな。

 それにたしかにオレはずっと彼女がいない。

 さらに言えば、飲み会もほとんど男性とし

 か行かない。

 

 ダンサーやってた時もそんな感じの噂流れ

 たことあったっけな。

 

 高校の時は、美崎さんがいてくれたおかげ

 で変な噂されなくて済んだけどな。

 

 やっぱり彼女いないって変なのかな…。

 

 しかもずっと高校の時好きだった人が忘れ

 られないってのは、やっぱりやばいのかな

 …。

 

 美崎さん結婚したっぽいし。

 

 あー…

 

 オレは…。

 

 しばらく頭が思考停止していた。

 

 すると部長が、

「紀田くん、どうしますか?処罰は、あなた

 がお決めなさい」

 と言った。

 

 …処罰。

 

「あのー、オレは特に処罰とかは考えていな

 くて、彼女が改心していただければそれで

 充分です」

 と答えた。

 

 すると部長は、

「うん。そうか、君が決めたとこならそれで

 いいよ」

 と言ってくれた。

 

 迷惑メールを送った女性も、

「ありがとうございます」

 と頭を下げた。

 

 先方さんにも彼女がきちんと社長と謝罪に

 行ったらしい。

 

 これで安心して仕事が進められそうだ。

 

 続く。

 

 

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る