オレはどこに向かってる⁈
オレは卒業した後すぐに予定通りデビュー
を果たした。
そしてみんなオレを快く歓迎してくれた。
おかげさまでデビュー早々大人気となった。
ってか、大人気すぎて外も満足に歩けない
くらいだ。
そもそもあの動画の凄技の青年が人気グル
ープに迎えられると、入る前から騒がれて
いたのである。
少しプレッシャーもあったがなんとかみん
なに支えられてここまでこれた。
大人気なのは、ありがたい。
しかし…
ただ…オレは…
オレは一体何を目指しているんだろう…。
大人気になってダンサーとしても認められ
てきた。
でも…
でもいつもオレは観客席でついある人を探
してしまう。
どうしてもあのこのあの笑顔が忘れられな
い。
…わかってる。
ぜったいにあの人が居るわけないのに。
いたとしてもこんな大勢の中からみつけら
れたら奇跡だ。
そして今日も大勢の中、あのこを探してい
る自分…
…やっぱりいるわけがないんだ。
わかってはいるんだ。
…オレはもうあのことなんの関係もない。
そもそもオレは最後まで彼女を守りきれな
かった。
結局巻き込まれないようにとオレは見守り
隊を友達にお願いするような所詮そんな人
間なんだ…。
ハハッ。
情けねーな。
オレ…
見届けることも告白もなんもできないまん
まじゃねーか。
もどかしい。
でも今さら…
そんなモヤモヤとした日々を過ごしていた。
とある日、ある仕事でオレがデビューする
前に一番の推しだったアイドルと仕事をす
る機会があった。
それはすごい事だ。
夢にまでみたアイドルが今目の前にいる。
間近でみるとなんとも可愛らしいお人形さ
んみたいだった。
かわいい。
すごくかわいい。
…
ってか、このアイドルやたらオレのからだ
をペタペタしてくる。
…こういうキャラなのだろうか?
と思っていたら休憩中もペタペタとしてく
る。
…
キャラじゃないの?
何?
困っているとスタッフの一人が
「あー、次のターゲットは紀田さんだねー」
なんて話していた。
えっ⁉︎
あのアイドルがオレを⁉︎
このオレを⁈
いやいや、バーチャルの世界では彼女だっ
たけどさ、現実に彼女になったりとかって
マジ想像つかないな。
ってか告白されたわけじゃないし、何を考
えてんだ。
オレは。
うんうん。
自惚れもいい加減にしないとバチが当たる
な。
って事で切り替え切り替え!
と思っていたのだけれど…
やっぱり狙われてる⁈
「お疲れ様でしたー」
と帰ろうとした時、
「待って〜ぇ、ねぇ、連絡先交換しよっ」
て上目遣いでアイドルに言われた。
…えっ⁉︎
スタッフさんの言ってた話、ガチなの⁉︎
あのずっと大好きだったアイドルさんが、
オレと⁈
嬉しい。
そりゃ嬉しいけど…
でも好きは、好きでもアイドルとして好き
だったわけで…
…オレの頭に浮かぶのはいつもあのこの笑
顔なんだ。
オレは完全にあのこで頭がいっぱいなのだ
った。
「ごめんなさい」
オレは深々と頭を下げた。
するとアイドルは、
「あー、つまんない男ー」
と言いながら行ってしまった。
うん。
オレはたしかにつまらない男だ。
それは自分がよくわかっている。
真っ暗になった空を見上げた。
あー、久しぶりにあの絶景みてーなー…
と心から思った。
続く。
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