どうしよう

 ガラガラっとドアを開けると、そこに座っ

 ていたのは…

 

 

 だれ⁇

 

 ぜんっぜん知らないおじさんだった。

 

 …あと、担任の先生と教頭先生。

 

 はー…。

 うん。わからん。

 オレ一体何したんだよ…

 

 全然話が見えねーし。

 

「あ、紀田くん。ここに座って」

 担任の先生に言われるがままストンと椅子

 に座った。

 

 …おいおい。

 

 オレはこんなおじさん集団に囲まれて一体

 何が始まるんだよ。

 

 息苦しい…

 何が始まるんだー‼︎

 

 と思っていたら教頭先生が

「こちらのお方は芸能事務所の社長さん」

 だというじゃないか。

 

 なんで社長さんがわざわざ…

 

 と思っていたらスッと名刺を差し出す社長

 さん。

 名刺と同時に笑顔も添えてくださった。

 あ、わざわざご丁寧に…

 

 ん⁉︎

 名刺をみると…

 有名な事務所じゃねーか⁉︎

 

 

 この社長さんがオレになんの用だ。

 

 …

 

 すると社長さんが

「実は、きみをスカウトしに来たんだ」

 と言い出した。

 

 えっ⁉︎

 なんの?

 ヲタ芸っすか⁉︎

 

 オレは訳がわからずキョトンとした。

 

「紀田くん?大丈夫⁉︎」

 

「あっ、はい!」

 先生の声に我に帰った。

 

「えと…スカウトとは…なんのスカウトなん

 でしょうか?」

 恐る恐る聞いてみた。

 

 すると社長さん、爽やかな笑顔で

「きみを〇〇グループのバックパフォーマン

 スダンサーとして迎えいれたいんだ」

 と言い出した。

 

 えっ⁉︎

 はあぁー⁉︎

 〇〇グループってあの有名な⁉︎

 

 …そこにオレが⁉︎

 

「すごいじゃないかー」

 先生は、目を見開いてオレの肩をポンとし

 た。

 

 …え。

 

 あんまりいきなりの事で頭真っ白だ。

 

 …

 

「おいおい…紀田くん?大丈夫かい?」

 オレがあんまりポカンとしていたから社長

 さんが心配そうにオレの顔を覗き込んだ。

 

「もしかしてもう進路決まってるのかな?ま、

 三年生だもんね。返事は、今すぐにじゃな

 いから。気長に待つから連絡ください」

 と社長さんは、席を立とうとした。

 

「あのっ、待ってください」

 

「ん?なんだい?」

 

 社長さんは、立ちあがろうとしていたけど、

 もう一度腰を下ろしてくださった。

 

「あの、なんでいきなりオレなんかに」

 

「きみの動画を拝見させてもらってね。毎年

 素晴らしいパフォーマンスを披露していた

 だろう。あれほどひとを惹きつけるのは素

 晴らしい事だと思ってね」

 と、また爽やかな笑顔をオレに向けてくれ

 る社長さん。

 

 …動画。

 

 あぁ、そうか。

 それをみてわざわざ。

 

「わかりました。ありがとうございます。で

 は、少し考えさせていただきご連絡いたし

 ます」

 とお辞儀をした。

 

「うん。じゃいい返事期待してますよ」

 と社長さんは、帰っていった。

 

 …なんか変な汗めっちゃ出たわ。

 

 社長さんが帰ったあと先生が

「きみの将来がかかってるんだからご両親と

 も話し合ってよく決めなさい」

 と言った。

 

 そして横でうなずく教頭先生。

 

 

 それから午後の授業は全然頭に入ってこな

 かった。

 

 

 あー…。

 どうすっかなぁー。

 

 うーん…。

 

 家に帰り両親に三年間の動画を見せた。

 

 うちの両親は、機械にうといからこの動画

 の数字の凄さがいまいちピンときていない

 様子だった。

 

 でも、オレのダンスは認めてくれた。

 

 幼い頃から運動習っててよかったねぇと。

 

 

 ただ動画を見せてもらっただけだと思って

 いた両親。

 

 しかし今日の出来事を話して名刺も見せた。

 

 すると〇〇グループ⁉︎

 お母さん大好きよ‼︎

 と、食らい付いてきた。

 

 そこにそうたが⁉︎

 とびっくりしていた。

 

 …うん。

 オレもびっくりだ。

 

 両親も急にそんなこと言われてパニックだ

 ったけど、ソウタの人生なんだから自分の

 好きなようにしなさいと言ってくれた。

 

 

 …うーん。

 

 どうすっかなぁー。

 

 その晩は、ずっと名刺とにらめっこだった。

 

 続く。

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