美少女とオレ

 美少女は、ドアを開けてオレの隣に座った。

 

「ヲタ芸かっこよかったね。はい、このタオ

 ルよかったら使って」

 

 差し出された薄いグリーンのタオル。

 フカフカそうなタオルだった。

 

 しかし、こんなきれいなタオル借りるわけ

 にもいかない。

 

「あー…大丈夫。気にしないで」

 

 オレは机に伏せて寝ようとした。

 

 すると…パサッとタオルが頭に軽く乗って

 きた。

「え、」

「風邪ひいちゃうから」

 美少女は、強引にオレの頭にタオルを乗せ

 てきて、細い指でオレの頭を拭いた。

 

「あー、いいよ。自分で拭くし…タオルお借

 りします」

 仕方なく頭をワシワシ拭いた。

 

「髪の毛サラサラだね」

「あー、よく言われる」

「ふふ、羨ましいなぁ」

 美少女は、なぜ今ここに居てこんな会話を

 オレとしているのだろう…。

 

 よくわからなかったけど、とりあえず

「タオル洗ってかえすわ、ありがとう」

 とだけ言った。

 

 すると、

「うん。風邪ひかないでね。じゃあ、ゆっく

 り休んで」

 と言い残し席を立った。

 

 …

「あのさっ、」

「えっ?」

 振り向く美少女にオレは言った。

「あんまり、男に優しくしない方がいいよ。

 勘違いする奴だっているだろうし」

 と言い放った。

 

 …まさにオレだ。

 勘違い男。

 しかも、あなたは彼氏がいるじゃないか。

 本当は、ほかに男いるんじゃん。

 オレに構わないでよ。って言ってやりたか

 った。

 でも、言えなかった。

 

「うん!わかった」

 美少女は、明るく返事をして教室を出て行

 った。

 

 あー…もうなんなんだよ。

 美少女が居なくなった後、さっき借りたタ

 オルで頭をくしゃくしゃに拭いた。

 

 オレの心とは裏腹にタオルからは、心地い

 い香りが漂った。

 

 

 次の日

 ヲタ芸を披露した動画を誰かが配信したら

 しい。

 他のクラスから、次々とオレ目当ての女子

 が見に来る…。

 

 オタク仲間が動画がバズってると騒いでい

 た。

 でも、オレにはそんなことどうでもよかっ

 た。

 

 だってただのヲタ芸だ。

 それがバズったからってなんになるんだ。

 

 

 そう思っていた。

 あの頃は。

 

 それから数日が経った。

 落ち着いた生活に戻るかと思えば、事態は

 どんどん悪化しつつある…。

 いや、良くなってきたのか?

 もうそれすらわからないくらいオレは、モ

 テの嵐だった。

 

 しかも、女子からのモテ以外にも男子から

 のオタ芸弟子祈願が増えた…

 

 ぜひ来年は、オレもヲタ芸に混ぜて欲しい

 と…。

 

 えっ…

 オレ来年もヲタ芸披露させらんのかよ…

 

 モテの嵐の中、席に着くと美少女がボソッ

 と言った。

 

「やけちゃうなぁ」

 って。

 

 やきもち⁈

 

 あぁ、美少女はオレがちやほやされるのが

 イヤなのだろう。

 やっぱり美少女は、自分が一番ちやほやさ

 れたい生き物なのかもしれない。

 オレは、勝手にそう思い込んだ。

 

 それからは、すぐ席替えになり美少女との

 接点も無くなった。

 

 そしてそのまま二年生に突入した。

 

 美少女とは、クラスが別々になった。

 

 完全に違う世界だ。

 

 とはいえ、オレはヲタ芸披露の後から人気

 急上昇で何故かイケてるクラスの男子から

 慕われるようになった。

 

 なので、イケてる仲間として一員に入れて

 もらっている。

 

 しかし、オタク仲間とも今でも仲良くして

 いる。

 オタクは、続行中だ。

 

 オタクが認められる日が来るなんて思いも

 しなかったな。

 

 あれからオレはいろんなかわいい子から告

 白された。

 

 でも、誰とも付き合っていない。

 どうしてもあの美少女が頭から離れなかっ

 たんだ。

 

 …

 

 それから数ヶ月。

 

 やっぱりオレは彼女なし。

 そんなある日、とある噂が流れた。

 

 どうやらオレと美少女美崎さんが付き合っ

 てるらしいと。

 

 なんでそうなるんだよ…。

 

 って思ったが友達に聞いて納得した。

 

 美少女美崎さんも告白されても誰とも付き

 合わないし、オレも告白されても誰とも付

 き合っていない。

 だから、あの二人は本当は内緒で付き合っ

 ているのだと。

 

 …なるほどなー。

 

 ってか、美少女は金髪彼氏が他の学校にい

 るからだよって言いたかったけど…そこは

 グッと堪えた。

 

 そういう事にしておいた方がお互いのため

 なのかもしれない。

 

 なのでその噂は、ほっとくことにした。

 

 

 しかし…

 今年の文化祭でやっぱり付き合ってたんだ

 と皆さんに誤解をされてしまうのでありま

 した。

 

 続く。

 

 

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