ヲタ芸をしたら…
オレが不機嫌そうにあいさつを返すと
「えっ⁉︎もしかして怒ってる?」
なんて言ってきた。
…オレは怒ってんのかな…?
そもそも初めは美少女にあいさつされただ
けで有頂天だったくせに、金髪男子と歩い
てただけでオレはなにを不機嫌になったり
してるんだ⁉︎
ちょっと美少女と仲良くなっただけじゃな
いか…
オレはヤキモチを焼いた彼氏気取りか…
…ヤバいな。
人間ってやつは。
欲が出てしまうんだから…。
「あー…別に怒ってない…ってか、そもそも
怒る理由もないっす」
と答えるとにっこり、
「ならよかった」
なんて返事する美少女。
…なんだよ。
この会話…。
カップルかよ‼︎
美少女とカップルごっこかよ⁉︎
ってか、美少女には金髪彼氏がいるんだよ
な。
ハハッ。
やっぱりオタクは、おとなしくヲタ芸の練
習でもしてりゃーいいんだよな。
アイドルに夢中になってればいいんだ…。
うっかりオレは隣の美少女に夢中になると
ころだったぜ。
ハハッ…。
オレの心はミキサーにでもかけられたのか
ってくらいズタボロだった。
勝手に美少女詮索して…見直したりへこん
だり。
バカだなぁ。
オレ…
何やってんだか。
それからも毎日おはようのあいさつは続い
た。
たまにたわいもない会話するくらいであと
は、あんまり関わらないようにした。
そしてオレはヲタ芸に専念した。
文化祭でオレたちオタク仲間は、ヲタ芸を
披露する。
あんまり目立つのは好きじゃないけど、ど
うしても出て欲しいとの友達の誘いを断る
わけにもいかなかったから。
そして当日。
みんなで合わせた黒のズボン。
順番が来るまでステージ裏で立ってると、
「やっぱ
と友達に言われた。
そう。今更だがオタクのオレは
いう名前だ。
いよいよ順番がやってきた。
今こそオタク魂を見せてやる‼︎
美少女よ。
オタクだってやるときゃやるんだぜ。
暗くなったステージ。
オレは全力でキレッキレに踊った。
全力で踊って美少女を忘れるんだ。
そして一番盛り上がったのは、オレのバク
転と側転だった。
そう。なぜオタク仲間がオレをごり押しし
てきたのかと言うと、バク転と側転を見ど
ころにしたかったから。
ずっと幼い頃から体操を習っていたので身
軽なのだった。
みんなのテンション爆上がりで無事幕は閉
じた。
拍手喝采。
体育館は、次のバンドがまた盛り上がりを
見せていた。
オレは少し離れた自販機でジュースを買い
地面に座ってゴクゴクジュースを飲んでい
た。
あっつー…
って思いながら下を向いた。
すると、オレの前で影ができた。
…ん?
顔を上げると……
え?
なんか萌えキャラ的なかわいい女子が立っ
ていた。
「え…?どうしたの?」
オレの前で恥ずかしそうに立っていた女子
が口を開いた。
「あ、あの…さっきのヲタ芸すごくかっこよ
かったです。それで、よかったら…わたし
と付き合ってください。」
なんて言いながら頬を赤く染めた。
⁉︎ ⁉︎ ⁉︎
人生初の告白をされた…。
しかもこんなに可愛らしい萌えキャラみた
いな女子に。
えっ⁉︎
ヲタ芸ってやるとモテるの⁉︎
マジか…。
しかし…オレの心はミキサーにかけられた
ようにぐしゃぐしゃだった。
「あの…、気持ちは嬉しいんだけど…ごめん。
付き合えない」
あー…
オレはあの美少女に恋していなければ…
もし、美少女に出会ってなかったらこの萌
えキャラ女子とお付き合いしていたかもし
れない…。
しかし…今は、この子を大切にしてあげる
自信がない。
「わ、わかりました。急にごめんなさい」
萌えキャラ系の女子は、走って行ってしま
った。
あーあー…
何してんだろ…オレは…。
空になったジュースを床に置いた。
カンっと音がなった…。
体育館からは、なにやらバラードが流れだ
した。
あぁ、オレこの曲好きだなー。
体育館から聴こえる曲に耳を傾けた。
しばらくしてガヤガヤ声が聞こえてきた。
あっ、オレ今一瞬寝てた…。
教室で少しゆっくりしよっと。
静かな教室。
机に伏せて昼寝でもしようと思っていたら、
ガラッとドアが開いた。
「あっ、みーつけたっ」
ドアを開けたのは、美少女だった。
続く。
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