反撃開始②
5月6日
朝の占いは12位だった。
今まで大して信じてなかったからその日も適当に眺めていたのだが、ラッキーアイテムがおもちゃのアヒルで適当すぎるんじゃないかとクレームを入れようかと思うほどだった。
もちろん1ミリたりとも信じていなかったが、その日は何故か通学用の自転車の籠におもちゃのアヒルがここ我の席ぞ!と言わんばかりに仁王立ちしていたので、仕方なく学校に持って行った。
駅からは20分ほど歩く必要がある。
実際はスクールバスなんて洒落たものが出ているらしいが、平民たる僕は足を酷使するしかないわけで…。今日は5月にしては暑い。
少し汗ばんだ制服が青春らしさをかき立てるんだろうか。真偽は不確かだ。
少なくとも僕は今の学校生活に青春を感じている節はない。いや、違うか。
僕のとなりのあの子に会ってから僕の中で何かが変わってきていた。
最初は急に話しかけてきて若干困っていたが、少しからかってみると、面白くて仕方がない。明日はどんな反応をするのか考えるだけで眠れなくなったりするほどだ。
これって重症なんかね。
最近はさらに彼女のことならなんでも知りたくなってきた。
いまならストーカーの気持ちが理解できなくもない。
そんな犯罪的思考を繰り広げながら学校へと歩いていた。
学校に着くと視線が気になった。
僕の知っているというか求めていた視線だ。
確信した。彼女だ。
だがしかし、何故下駄箱で彼女は僕を眺めるのだろうか。彼女は僕のことを好いてはいないようだったし、下駄箱で待機する理由も分からない。
気にならないと言ったら嘘になるが、ここでフリーズするのもまた違うな。うーん。
あ、そうだ。聞いてみようそこの彼女に。
***
えーどもども。
こちらのぞみん。まあ小学校で一週間だけ呼ばれてたあだ名だけど。
そんなことはどうでもいいのよ。
あの男を観察していたわけなんだけど、どうも様子が変なのよ。
下駄箱であちらからは見えない位置に潜んでいるはずなのになんか手とか振ってきてるし、なんかこっちに近寄ってくる。
「なんか用かな?」
やばいバレたってか声かけられた。
「もしかしてお出迎えしてくれたのかな。」
お前なんて出迎えるわけ無いだろ。厚かましさの塊かよ。失せろ。
って言いたい気持ちをどうにか抑えて表情筋を殺して「おはよう」と言った。
偉すぎる私。
彼は私の様子が気になっていたようだけど、無言の静寂に耐えきれず靴箱へと戻っていった。
そうそう私は忍耐力も強いのよ。数学の時間とか絶対に挙手しないし。
まぁ睡眠中の弊害かもしれないけど。
そんなこともどうでもよくってよ。
あ、彼が下駄箱を開けるわ。
そう、開けなさい。
取っ手の部分をつかんだ。
そして、思いっきり。
開けない?
どうして?
どうして開けないの?
するとこちらを一瞥してにやりと笑う。
そして靴箱オープン。彼は驚きもせずに靴箱のおもちゃを払い除けた。
おもちゃのG太郎は下駄箱の隅に落ちて、後ろにいた女子高生が悲鳴を上げる。
彼は白々しく「大丈夫ですか?」と紳士対応で女子生徒からの好感度を高める。
利用されていたのだ…。
そしてもう一度私の方に歩いてきて、一言。
「この時期にも虫はいるらしいから気をつけたほうがいいよ。」
プチトマトみたいに潰してやりたくなった。
となりの預言者が可愛い ミックスグリル @Succulent
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