可愛い彼女の2つの特徴

あれから数日が経過していくつか分かったことがある。隣の彼女は秋本さんであるらしかった。

謎の多き人ではあるが、ある特徴を発見した。


彼女は意外とポンコツだ。


特に予想外の事となると、動揺しまくって瞳がうるうるして可愛い。

僕が教室のドアの前で「わっ!」って脅かした時は尻餅をついて驚いてくれた。

それ以来僕の呼称はハダカデバネズミに降格?したけれどまあ社会性動物だから、僕の協調性の高さを表した良い例えだと信じることにした。


そして、今日は2回目の驚かしチャンスである。

朝からポジショニングに工夫を凝らし、結局前回と同じ場所ドアの下となった。

やっぱりここからの眺めをもう一度見たいという願望からだった。

ポジショニングの次はセリフ決め。

これ以上嫌われると困るから「おっ!はようございます!」で驚かすことにした。

だって挨拶で驚いたなら責任はそちらにあるはずじゃないかという言い訳もできるし。

教室のドアの下にしゃがむ。

彼女の反応が楽しみで腕をわきわきさせてしまう。うん、変態だね。やっぱり自重しよう。わきわき。


「おっ!はようございまーす!」

勢い、発音、全て良し。これは決まった。


しかし、鮮やかに尻餅を着く彼女を拝むことは出来なかった。

「きゃっ!」

彼女の声より少し高めの声。

あれ、学級委員の上田さんじゃないか⁈

とりあえず「あっ、すみません。」と謝罪しつつ、廊下の彼女を確認してみる。

すると、勝ち誇った顔をした彼女がそこにいた。

やられた。

彼女こと秋本さんは上田さんを影武者として先に送り込み、僕を自爆させたのだ。

なんて狡猾なやつだろうか。


そう、まさにこれが彼女の二つ目の特徴。

彼女は絶対に同じ轍をふまないのだ。

そうして彼女は自信満々に僕の隣にやってく

る。

「どうかしたのかい?」

これでもかと言うほどのドヤ顔で鞄を机に置く。悔しいがやっぱり可愛い。

もう俺の負けでいい気もしてきた。

でもせっかくなので楽しませてもらう。


そのままドヤ顔で椅子に座る彼女。

すると教室内に「ぶー」と間抜けな音が響き渡る。

それはオーケストラの演奏の如く美しい音。

周囲のざわめきが一瞬で静止して時間が止まったみたいになる。

ニヤリと微笑む僕。

恥じらう彼女。

そう、ブーブークッションだ。

彼女は今頃勝ち誇っていた自分をタコ殴りにしているだろうけど。もう遅い。

みるみるうちに赤に染まる頬を膨らませて僕を睨む。


その表情がなんともたまらなく可愛い。


今日も僕の勝ちだ。




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