フィッシャーマーズ。
所狭しと客と、スタッフと、釣りに使う道具? が入り乱れて騒がしい。
僕はやっぱりチンプンカンプンで、申し訳ないけど子供達が好き好きに喋るサラウンドアナウンスじゃ要領を得ない。
なので僕は取り敢えず、その辺に居た遊び会参加者で暇そうにしてるお父様へ声を掛ける。
「ん? ああ、まずは此処でタックル……、つまり道具を選ぶんだよ。そして地下一階からまたエレベーターに乗って、望むポイントフロアに上がるのさ」
聞くと、此処で
このアミューズメントビルは最初の一階、つまりゲートフロアより上が全て、様々なフィッシングポイントを再現されたエリアと成ってて、エレベーターで好きなポイントを選んで向かうらしい。
海から川から湖まで、本当に様々なポイントと魚が用意されて居るそうだ。
「なるほど、有難う御座います」
「いや、良いよ。僕は釣りが好きでね? 君も釣り好きになってくれたら、釣り人としては嬉しいからさ」
ちなみに、この人が暇そうにしてるのは、自分の道具を持って来てるから此処でレンタルする必要が無いのだそうだ。
せっかくだから、僕は道具の選定もこの人に手伝って貰う事にした。なにせ砂漠の孤児なので、釣り道具の善し悪しとか全く分からない。
「ふむ? なら、そうだね。コレで良いんじゃないかな。シーロッドLLA320ミドルライト。海用だけど、基本的に万能なんだ。これ一本持っておけば大体何でも釣れるよ。川でも湖でも使えちゃう」
オススメされたのは、まず釣竿。…………釣竿だよね?
自信は無いけど釣竿のはずだ。歪な銃にしか見えないけど、釣りが好きな人に釣竿って紹介されたんだし。
なんだろうね、これ。トリガーとフィンガーガードが着いた棒?
「ああ、変な形の銃にでも見える? うん、分かる分かる。僕も最初はそう思ったよ。これね、小型の専用レプリケーターとマテリアライザーが内蔵されててね? 起動するとレプリケーターが作動してロッドに成って、終わったらマテリアライザーが余分な素材をマテリアルに戻すから短くなるんだよ。トリガーはリールブレーキでね、ルアーを投げる時にこのトリガーを引くんだ」
色々教えてくれる。僕に教えたそうにしてたお子様達は不満そうだけど、許しておくれ。初めてのフィッシングで失敗したくないんだ。
このロッドは、要するにスイッチを入れると『ニュインッ!』て伸びて、スイッチを切ると縮むんだな。それだけ分かれば良いや。
現代人は取り敢えず「レプリケート技術ってすげぇ」って言っとけば良いのだ。
で、また選んで貰ったリールを付けて、ロッドにガシャッとハメ込む。
ルアーを投げる時にこのトリガーを引くと、『カチンッ』て音がして何かのロックが外れて、そのトリガーを引いたまま振りかぶり、投げる瞬間にトリガーを放すとルアーが飛んで行き、リールから糸が放出されるそうだ。
その後、着水したらリールのハンドルを巻き始めるとまた『カチンッ』て音がして、何かをロックして糸を巻ける様にするんだとか。
「投げ方とかも色々あるけど、まずは普通に楽しんでみて。僕のオススメは六階の海釣りエリアだね。手頃な対象魚が多くて楽しいよ」
なんやかんやで僕の装備を全部選んでくれた。有難い。今日だけでも師匠と呼ぼうかな。
この遊び会は定期的に催されてるらしく、かなり緩い進行をするらしい。
と言うのも、まずメインは子供達なので、子供達が一緒に遊びたい友達と固まって、好きな階層に行って釣りをする。親はその後ろに着いて行って交流するのだ。
ガチ初心者の僕に教えてドヤ顔マウントが取れないと理解した子供達は、もう大半が散って好き好きに徒党を組み始めてる。
メカちゃんとムク君も自分の装備は自分で選んだらしく、それを手伝えない保護者枠でごめんねって思う。
「メカちゃん、ムク君、誰か一緒に遊びたい人居ないの?」
「おにーちゃん」
「おにいさん、かなぁ?」
おぉ、せやった。僕は子供枠の参加者でもあった。
取り敢えず、六階がオススメらしいので、メカちゃん達が誰かと組まないなら、僕らはスーテム家一組だけで遊ぶ事になる。
しかし、そんな事には成らなかった。
「めかちゃーん!」
「あ、きりちゃん!」
「あーそーぼー!」
何やら、女の子二人組がメカちゃんに突撃して来た。そしてその引率もお母様であり、突然女性率が爆上がりした。ふむ、ムク君? ちょっと近くに居ようぜ。男は男で固まろうよ。
だけどそれも叶わなかった。女児二名のマッマに捕まる。
「あらあら、娘達が御免なさいね? ご一緒しても宜しいかしら?」
「勿論ですよ。僕こそ異物が紛れ込んだ様で、申し訳無く思ってます」
マッマさんに対して帽子を取りながらペコリ。するとメカちゃんに絡んでた子達が何やら僕を見てきゃーきゃーしてる。どしたの?
「あらぁ、お行儀の良い子ね? メカちゃんの彼氏さん?」
「あはは、一昨日に知り合ったばかりですよ。それに僕は将来を約束してる相手が居るので」
「あら、そうなの? フリーならウチの娘の彼氏さんにでもどうかなって思ったのに」
バイオマシン持ってるからかな。バイオマシンってだけで市民からすると一財産だもんね。玉の輿確定的な?
でも残念。僕が
…………って言うかさ、シリアス自身が御輿じゃない? 乗り物だし? お金掛けまくったし? 僕って
凄いなぁシリアスは。存在が既に『玉の輿』その物なのか。
「光栄では有りますけどね。僕なんてただ、ちょっと万単位でシギルを稼いでるだけですよ」
「それが凄く素敵なんじゃない?」
「どれだけシギルを積んでも、僕の想う相手の素敵さには適わないので」
ササッと躱して、さっさと釣りに行こう。僕も地味に楽しみにしてるんだよ。
あ、気が付いたら師匠がもう居ない。…………むぅ、連絡先聞いとけば良かったかな。本当に右も左も分からないし。
「じゃぁ、六階で良いですか? 僕が初心者なので、そこが良いって経験者の方に教わりまして」
「あら、良いんじゃない? 釣った魚は捌いてパックにして貰えるからね」
マジかよ。メチャクチャ釣ってお土産にせねば。
ああ、ちゃんと食品保存用の装置を買えばガーランドにも持って行けるだろうし、おじさんのお土産にするのも良いかな。
おじさん、喜んでくれるかなぁ。
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