イベント合流。



「アヤカ・スーテムさんの代理で来ました、傭兵団砂蟲団長のラディアです。外部参加の子供ですが、一応保護者の代わりも務めさせて頂きます。どうぞ皆様、宜しくお願い致します」


 燦々と照り付ける日差しの中で、平気で帽子を脱げる事を新鮮に思いながら、僕は脱いだ帽子を胸に当てる形で、傭兵式敬礼の亜種で持って挨拶をする。

 

 場所は遊び会の予定地、その一次集合場所。…………と言う名の現地だ。時刻は十二時二○分。予定時間の一○分前である。


「よ、傭兵さん……?」

 

「子供では?」

 

「いや、でも、バイオマシンで来たぞ?」


 集合場所に選ばれた会場は、釣りが楽しめる施設の内の一つとして知られるビルであり、魚の養殖を主とする企業が経営してるアミューズメントビルの入場口前。

 

 ビルの一階ゲートを正面として右に駐機場、左に駐車場を備える此処は、ビークルロードとマシンロードが干渉しないまま上手く敷地内にアクセスしてる。

 

 僕は当然右側の駐機場にシリアスで入って駐機、そのままキャノピーとハッチを開放してメカちゃんとムク君を連れ出た。

 

 施設入口前の広場でその一部始終を見ていた子供が、メカちゃんやムク君の事を知ってる子達が騒ぎ出し、釣られて親達も僕らを認識したので、寄って挨拶した。

 

 子供の数はパッと見で数え切れないが、親の数は二○人程か。

 

 どうやら、これでフルメンバーっぽい様子。主婦会って言うのが一つのスクールでも複数有るのかな? それとも、欠席等が多くてこの人数なのだろうか?

 

 僕には分からないけど、とにかくこの人達が、僕が合流するべき相手なのだろう。


「えーと、スーテムさんとこの代理さん?」

 

「はい。ラディアです。アヤカさんからは幹事さんへ、余った一枚分のチケットコードが返却されてるかと思いますが、参加者三名の内一人が僕と言う形に成ります」

 

「スーテムさん本人はどうしたのかな? 何かトラブル?」

 

「いえ、旦那様が職場からまた別のイベントチケットを貰って来てしまった様でして、要するに予定がブッキングしたのですね。それで、本当は旦那様が今日の遊び会へ付き添いする予定だったのですが、上のお子様二人を連れて其方のイベントに行ってしまわれました。そして、旦那様が付き添う予定に合わせて、アヤカさんも予定を入れてしまってたので、手が足りなくなってしまったんですね。それで、ちょっとした縁で僕が呼ばれた次第です」

 

「その、傭兵さん、なんだよね? 保護者代わりって言うのもアレだし、その、証明は可能かな?」

 

「此方が僕のライセンスに成ります」


 二○程居る大人の内の、幹事っぽい男性が出て来て対応してくれた。

 その男性の後ろに子どもが三人着いて来て、もう見るからに「話しが聞きたい!」ってお顔である。

 

 そんな様子を他所よそに、僕は幹事さんに傭兵ライセンスを見せる。ランク二なので、登録だけしたなんちゃって傭兵では無い事が分かるだろう。しかも機兵乗りライダー登録だし。


「ほ、本物なのか…………」

 

「一応、アヤカさんからはお子様をお預かり出来るくらいに信用を頂いております」

 

「そう、みたいだね。うん、失礼した。私は今回の遊び会の幹事、フォルフォードだよ。宜しくね」


 ガッチリと握手をして、僕は正式に『参加する子供兼保護者』として遊び会に合流した。


「いや、しかし、立派なバイオマシンだね。私はバイオマシンに余り詳しくない質なんだけど、君の機体はなんて言う種類なんだい? 初めて見たよ」

 

「僕の愛機はデザートシザーリアと言います。ラビータ帝国ではガーランドの警戒領域でしか産出されない機体でして」

 

「なるほど、ガーランドか。最短の都市経由ルートだと、七日は掛かる場所だったかな? ふむ、このご時世に七日の距離は遠いな。この辺で見ない訳だ」


 僕が親との話しを続けると分かったお子様達が、標的をメカちゃん達に変えて突撃した。同じくコックピットに乗っていたのだから、色々と聞ける事は有るだろう。

 

 そうして一○分経ち、予定時間になる。

 

 好奇心に目を光らせるお子様に囲まれたメカちゃん達に声を掛ける。


「ほら、時間だよメカちゃん。ムク君も」

 

「はーい!」

 

「たのしみぃ〜」


 うん、僕も楽しみだ。なにせ皆と違って僕は人生初めての釣りだ。ワクワクしてくる。

 

 突然の参加である僕はぶっちゃけ、右も左も分からない訳だが、それを言うとメカちゃんもムク君も「おしえてあげる!」と力いっぱいだ。

 

 それに周りに居るお子様ズも話しを聞いてて「え〜、知らないのかよダッセェなぁ〜」とか「ねぇねぇ、ようへいなのっ!?」って関係無い事とか、「わたしもおしえてあげゆっ!」とか舌足らずな台詞と共にしがみついて来る子とか、まぁ要するに群がられた。


「では、受け付けを済ませようか。皆、子供の事を良く見て進もう。迷子が居たらすぐに対応を!」


 フォルフォードさんから号令が掛かって、親達はそれぞれの子供の手を引いてビルに入って行く。

 

 僕もメカちゃんとムク君の手を取って、更に自分の親に着いて行かなかった子達とワラワラと着いて来て、僕達もアミューズメントビルに入場する。


「…………おぉ、なんか予想とちょっと違う」

 

「そうなのー?」

 

「うん。もっと何か有ると思ってた」


 僕らが今日遊ぶフィッシング専門アミューズメントビル、『スパーダフィッシャーマーズ』の一階は、なんと言うか、ただのゲートだった。

 

 こう、端末からチケットのコードを読み取ったらフラップゲートを通すだけ、みたいな空間に成ってる。ただそれだけで、他に何も無い。

 

 いや、案内板とエレベーターゲートは有るので、何も無いは間違いだけど。でも『アミューズメントビル』なのだから、もっとこう、一階からガンガン楽しい雰囲気を提供されるかと思ってたので、拍子抜けした。


「あのね、ここはちがうのー」

 

「まずはね、ちかにいくんだよぉ」

 

「それでね、それでね、ちゅりざおえらぶのぉ〜」


 ゲートの読み取り機に端末を翳して、貰ったチケットコードによってフラップゲートを潜りながら、お子様達が教えてくれる情報を繋ぎ合わせる。

 

 ふむ、つまりは地下一階がアミューズメントビル、スパーダフィッシャーマーズのスタート地点であり、此処はまだスタートどころか入口ですら無いって事か。


 何回も此処を利用してるだろうパパ様達の後に着いて、僕も殺風景なゲートフロアの奥にあるエレベーターに乗る。

 

 子供に纏わり付かれて乗るエレベーターは少々暑苦しい。十歳の僕が言う事じゃ無いけど、子供は体温が高いのだ。服の素材がナノマテリアルクロスじゃ無かったら、少し汗ばんでいたと思う。

 

 エレベーターが到着した地下一階は、僕が一階で想像していた雰囲気が遅れてやって来たかの様で、とても楽しげな空間になってた。


「フィッシャーマーズへようこそ! こちらでタックルをお選び下さい!」


 さぁ、イベントの始まりだ。


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