オスシでポヨポヨ。



「では、お子様をお預かりします」

 

「任せるわね。それと、ラディア君も楽しんで来てね? それが報酬なんだから」

 

「勿論ですよ」


 砂漠の過酷さを布教したら、僕はメカちゃんとムク君を預かる。丁度二人なので、シリアスの複座と補助席で事足りる。

 

 けど、補助席の方はモニターが無く、目の前が複座の背もたれだ。

 

 割と使う機会が多いからそろそろ補助席用のモニターも追加しようかと思うけど、今は無いので、目的地までのマシンドライブを楽しんでもらうなら、複座が良いだろう。

 

 ちなみに、まだ朝の九時で、予定は昼の十二時半だ。まだ時間がギリギリるので、適当にお昼を食べてから向かう予定だ。


「じゃぁ乗ってね。メインシートには間違っても乗らないで。乗ったらその時点でお家に返して、僕は君達からの連絡に二度と反応しないから」

 

「の、のらにゃい!」

 

「…………めか、いいこにするぅ」

 

「うん。それと、一番後ろの補助席は前が良く見えないから、二人ともモニターとか見たいなら一緒に複座に乗ってくれる? メカちゃんが先に乗って、ムク君が膝の上とかさ。座席が大人用だからちょっと工夫すれば二人でも大丈夫だと思うんだ」


 シリアスもシャムも、コックピットのメインシートは僕ら子供に合わせた調整がされてる。けど複座は大人も子供も使うので、標準的なサイズとなってる。

 

 そこにメカちゃんが深く座り、股を開けてその隙間にムク君が座れば、まぁ二人一緒に複座も行けるんじゃ無いかと思う。五歳と六歳だし。

 

 そんな訳でチャレンジしてもらい、無事着席。二人ともシリアスのコックピットに感動してるので大人しい。

 

 女の子受けもするデザインだし、むしろゴシック&スイートソードは女性向けカスタムパーツメーカーだし、でもゴシックデザインのコックピットはムク君から見てもカッコイイはずだ。

 

 複座のセーフティを降ろすと変な感じになるので、横引きのシートベルトに切り替えて使ってもらう。どうせ都市内ならば危ない事も無い。ゆるっゆるで装着だ。


「あわわわわ…………」

 

「かっ、かっこいぃ……」

 

『歓迎。短いマシンドライブだが、楽しんで欲しい』

 

「しりあすちゃん!」


 フットレバーを描こうダッシュカバーに備え付けられた端末ケースから、シリアスの声が二人を歓迎する。

 

 僕はその様子を見ながら、メインシートに座ってセーフティを降ろし、起動シークエンスを始める。被った帽子もメインシート脇に付けた帽子用のフックに掛ける。

 

 これは戦闘機動して揺れても帽子が落ちないって言う、地味にハイテクなフックなのだ。

 

 パイロットシステムを立ち上げる、その様子すらメカちゃん達にはワクワクの光景で、パイロットシステムが立ち上がってモニターが映り、画面の端にアヤカさんが映ってるのを見たら元気いっぱいに手を振ってた。

 

 向こうからは見えないよ。僕はホロバイザーの端に薄らと後ろの様子を表示してるから見えるけど。


「では、夜にお返ししますので」

 

『ええ。お願いね』


 準備は完了したので、二人を乗せて発進する。


「ふゎぁぁ…………、けんがくかい、いかなくてよかったぁ」

 

「ほんとだねぇ〜」


 今更だけど、スーテム家の子供達は上から順にハナミナちゃん、シュナト君、メカミナちゃん、ムクニト君が名前だ。

 

 上二人、ハナちゃんとシュナ君は今、お父様と一緒にバイオマシン見学会ってイベントに行ってる。

 

 二枚しかないチケットは、…………正確にはお父様の分含めて三枚なのだけど、大人の付き添いが居ないと子供だけじゃ使えないので、実質余りは二枚のチケットは、メカちゃんとムク君が譲る形で利用者が決まったそうだ。

 

 お兄ちゃんとお姉ちゃんが行きたそうにしてるから、下が空気を読んだんだね。偉い偉い。


「そんな良い子には、お昼にオスシでも奢ってあげようか」

 

「「ほんとッ!?」」

 

「て言うか僕が食べたいからなんだけどさ」

 

『…………昼食まで、魚に侵食された。シリアスは心配』

 

「バランス良く食べるから許してよ。数日の偏りなら多分、どうにか出来るでしょ?」


 シリアスからマシンドライブのオススメコースなんかを出して貰って、ルート案内に従って走る。

 

 後ろの二人も、普段から見るビークル視点では無く、バイオマシンの高さから見るマシンロードの景色に興奮していた。


「しゅごぉーい……」

 

「シュナ君みたいになってるよ」

 

「あっ、えへへ……」


 発言の七割が「しゅげぇぇええええ!」のシュナ君。その弟であるムク君も、しゅげぇぇええええの素質は有るらしい。

 

 サーベイルでは、ドライブ用のマシンロードなる素敵空間も存在して、海側の外壁近くに在るトンネルに潜れば、ガラス張りの海中トンネルが四○キロ程楽しめた。

 

 様々な海洋生物を下から眺め、海を照らす日に晒される様を見るのは堪らない時間だった。今度絶対にネマを連れて来てやろう。

 

 これは確かにしゅげぇぇええええが出なくても、しゅごぉーい程度ならポロッと出てしまうだろう。

 

 何より、シリアスのコックピットは真上までしっかりと見えてしまうハーフパノラマなので、景色は思う存分楽しめる。


「楽しかった?」

 

「うんっ! おにーちゃん、ありあとー!」

 

「しゅてきだったぁ〜」


 結構な時間を潰してから、十一時前くらい。僕は今日も今日とてウオナミに行く。昼に来るのは初めてだけど。


「…………あっ、またのご利用、有難う御座います」

 

「ども。連日すみません。…………ところで、お姉さんって何時いつ休んでるんですか?」


 ウオナミへ来れば、何時いつものお姉さんがボックス席まで案内してくれた。この人は何時いつ休んでるの? 僕が来る時毎回居るじゃん。もしかしてウオナミってブラックなの?


「ではごゆっくりどうぞ!」

 

「はーい。…………じゃぁ、メカちゃんもムク君も、好きな物を好きなだけ食べて良いよ。でも、食べ切れない程取っちゃダメだからね?」

 

「「はーいっ!」」


 席に座った僕は速攻でオオトロを注文。アンダーベルトで受け取ってモグモグしゅる。うんみゃぁあ…………。

 

 二人は最初遠慮してたけど、僕がマジで何も気にせず色々頼むから慣れてしまった。オオトロ、チュウトロ、アカミ、ビンチョウの食べ比べから始まり、ズワイガニやアマエビなんてネタも美味しい。


「ほ、ほんとに、なんでもたべていいの……?」

 

「おこられない……?」

 

「少なくとも、僕は怒らないよ? 怖かったら、お昼にオスシ食べた事は家族にも内緒にすると良いよ。ほら、そしたら怒らない僕しか知らないし、怒られ様が無いよね?」


 食べながらも、後で親に怒らる事を気にしてるメカちゃんのお口に、チュウトロを放り込んであげた。あむあむしてる。


「デザートとかも好きにして良いから。あ、でもお腹いっぱいに成ってデザート食べられないとか言って泣かないでね? 流石にそれは僕もどうしようも無いし」


 アナゴも美味しい。エビ良い。僕、アマエビとクルマエビだとクルマエビの方が好きかな。生のアマエビより、ボイルしたのかな? 火の通ったクルマエビの剥き身を握ったオスシが食べ易かった。


「……ふぅ、食った。大いに食った。少し食休み」

 

「………………おにゃか、くるしっ」

 

「たべ、すぎたぁ……」


 全員、お腹がポヨンポヨンになるまで食べた。

 

 午後のフィッシングはスポーツらしいけど、この腹具合で大丈夫だろうか? 少し心配だ。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る