甘えるネマ。



 駐機場にシャムを入れ、活動拠点を手に入れた僕達。


「さて、どうする? 色々やりたい事は有るだろうけど、ネマも睡眠削ってるし、まずは寝る?」


 そう、まずは睡眠が必要だ。平気な顔してるけど、僕達って結構な強行軍でサーベイルまで来てるからね。


 しっかりと休んでダメージを抜かないと。

 

「………………それも、よぃ」

 

「ネマは寝るの好きっぽいもんね」


 しみじみと頷くネマは、もう名が体を表しまくってる女の子だ。凄い気持ち良さそうに眠る。

 

「……らでぃあも、ねる? いっしょ、ねる?」

 

「〝さん〟を付けろよデコスケ野郎。なに、また添い寝でもして欲しいの?」

 

「…………ほしぃ。……………………だめ?」

 

「別に構わないけど」


 もはや、なんか、手が掛かるけど優秀な妹みたいな感じだし、寝かし付けるくらいは別に良いよ。

 

 そう言って頭をクシャクシャすると、ネマは幸せそうに笑うのだった。

 

 なんでこの子、マジで僕に対してこんなに懐くのかな。本気で分からない。女の子って不思議だなぁ。


「……ぇと、ぎゅって、して、よぃ? ぎゅって、して、ねたぃ」

 

「また随分と甘えるなぁ……。まぁ減るもんじゃ無いし、良いけどさぁ」

 

「………………えへっ♪︎ きがえぅ、ね」


 ネマはニマニマ笑いながら、速攻でシャムのパイロットシステムを落とした後、パタパターって走って居住区画に向かった。

 

 なんだろう。もしかして、ネマには兄とかが居て、僕がそれに似てるとか? 兄に重ねてる?

 

 …………いや、それなら同じ都市に捨てられるか。それとも、愛人じゃ無くて本家の兄か?


「分からぬ」


 まぁ良いか。有言実行する優秀な団員なんだし。多少贔屓して甘やかすくらいは良いでしょ。

 

 これまた意味不明な柄のパジャマを着て来たネマを迎え入れ、僕はネマと一緒に睡眠補助剤を服用する。

 

 これは傭兵向けの薬だけど、別に危険な物じゃないし、依存性とかも無い。用法用量を守ってれば便利な物なのだ。睡眠時間の五割増で回復出来る。

 

 僕もネマも、コレを使って時間以上の回復を求めるのだ。服用したら準備完了。すやぁタイムだ。


「…………ねぅ」

 

「〝ます〟を付けろよデコスケ野郎」


 一応、ロコロックルさんに夜まで寝るから連絡不可とメールを送り、ネマにしがみつかれて寝に入る。

 

 本当に幸せそうに寝るなコイツ。めっちゃ抱き着いてくる。

 

 まぁ良いや。すやぁ……………………。


「……おは」

 

「〝よう〟を付けろよデコスケ野郎。おはようネマ。夜だけど」


 起きた。

 

 現在、二○時半過ぎか? 寝たのが十四時半くらい、六時間ちょい寝たのか。かなりスッキリしてる。

 

 この時間に起きたら昼夜逆転必至だけど、そんなのは便利なお薬使えば調整可能だ。このご時世、ナノマシン入って無くても凄い効果のお薬だって沢山有るのだから。


「んー、っと。寝たなぁ。補助剤入りで六時間ちょい寝たら、もう完全回復で良いでしょ」

 

「…………んゅぅ。おっき?」

 

「そだね、おっきだよ。だからシャワー浴びて着替えるよ」

 

「……しゃわ、いっしょ?」

 

「いや違うよ? 頷くと思ったの?」

 

「むぅ。けち」

 

「え、なに、一緒にシャワー浴びたいの? て言うか、また随分と甘えるね?」

 

「………………だめ?」

 

「いや、甘えるのは構わないよ。でもシャワーはダーメ」


 一旦お仕事が落ち着いたからか、ネマが今までに無いくらい甘えて来る。端的に言うとベッタベタだ。

 

 起きてベッドに身を起こしてるけど、ネマは未だにぎゅぅーっと抱き着いてる。『簡単には離さんからな』って意志を感じる。


「……なんで、だめ? わしゃわしゃ、して?」

 

「洗って欲しいの? 何の為にサウナの時に気を使ったと思ってるの君。ネマも一応は女の子なんだから、シャンとしなよ? 僕にはシリアスって言う婚約者が居るから、女の子と同じバスルームとか入れないの」


 剥がしてしまおうとネマの頭をグイグイすると、ネマはイヤーと抵抗する。いや起きたなら離れろや。


『…………報告。流石にシリアスも、よわい八つの女児に嫉妬はしない。そして、おはようラディア』

 

「あ、おはようシリアス」


 そしてバタバタしてると、マイハニーからモーニング。いや夜だけど。


「……ほら、しりぁす、ゆってる」

 

此処ここぞとばかりにお目々キラキラさせやがって」

 

『提案。ラディアもどうせ間違いなど起こさないのだから、さっさと要求に応えた方が時間効率が良い。しかし、ネマもラディアを困らせるのは感心しない』

 

「……………………ごめなしゃ」

 

「え、待って、ネマってシリアスには敬語なの? なんで君は僕だけ舐めてるの?」


 そろそろ、教育的指導が必要だろうか?

 

 しかしシリアスの言う事も尤もなので、僕は観念してネマをバスルームに連れて行くのだった。

 

 全く、手間の掛かる妹分だ。


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