ご乱心。



「さーて、お昼休憩だー!」

 

『ラディアもしっかりと休む。恐らく、自覚が無いだけで疲労は溜まってる』

 

「でも僕、シリアスと一緒に居て、こうやってお喋りするだけで疲れとか吹き飛ぶよ?」

 

『……スキャニングの結果、本当に疲労物質の低減が確認出来るので、シリアスは驚いてる』


 スキャンの結果、僕は本当にシリアスと喋ると疲労がある程度飛ぶらしい。知ってた。だって本当に幸せだもん。

 

 ダングに戻ると、中にはおじさんの言う通りに生体金属ジオメタルの残骸が山積みオブ山積みだった。崩れたら人死が出るレベル。

 

 まぁガレージ備え付けの固定バンドで縛ってるから大丈夫だけど。

 

 さて、ガレージの中に凄まじい匂いがする。これは殺人的な匂いだ。

 

 勿論悪い意味ではなく、良い意味で。

 

 料理上手なおじさんが居て、失敗する訳ないもんね。


「おじさーん」

 

「おう、帰ったか。昼はお前に貰ったスパイスから、カレーだぞ。忙し過ぎてボット操作とスピカの手伝いで仕上げちまったが」

 

「多分その方がアンシークパイロットは喜ぶよ」

 

「はっはっはっは! だろうな! と言うか通信聞こえてたぜ」


 今日のお昼はカレーライスだ。スパイスは僕が用意した物で、アルバリオ邸に行く度にアズロンさんがお土産にくれるのだ。


「はーい、旅団の皆さん。お昼は天然香辛料と培養肉をたっぷり使って、スピカちゃんが混ぜ混ぜしたカレーライスでーす!」

 

「まじか!? 天然香辛料の料理食えるの!? しかも女の子の手料理!? やっぱ割り良い仕事だなコレ!?」


 ダングの近くで機体を止めて降りて来た三番機さんがひゃっほいしてる。

 

 しかし、全員が同時に降りる訳にはいかないので、アンシークは交代でお昼を食べる。センサーで見守って、野生のデザリアが襲って来ないかを見てるのだ。

 

 なのでローテーションを決めるべきなんだけど、三番機さんは勝手に降りて来たらしく、一番機さんがキレ気味に通信で文句言ってる。

 

 向こうのシフトは向こうに任せて、僕はガレージの隅っこで作られてたカレーをスピカから受け取って、モグモグタイムだ。


「…………む? 味付けがちょっとだけおじさんっぽくない。コレがスピカの味……?」

 

「わ、わっ、なにか間違えたかな……?」

 

「いや、美味しいよ。タクトもきっと喜ぶ」


 取り敢えずグループの女の子はタクトが喜ぶって言っておけば問題を回避出来るのでオススメだ。

 

 今回の仕事は、戦闘が全部僕の仕事なので、仮に今アンシークの索敵にデザリアの襲撃が引っ掛かると、僕はカレーを投げ出してシリアスに乗り込み、防衛しないといけない。

 

 なので僕はさっさと食べる。しかし手軽にモリモリがつがつ食べれるカレーってチョイスは良いなぁ。食器にライスとカレーを入れるだけだから、凝った盛り付けとか要らないし。

 

 スプーンで流し込む様に食べれるからスピーディに摂取出来るし、何より美味しい。肉と野菜の旨みが汁に溶け込み、それにスパイスが飾り立てる。ある意味で『食べ物の完成系』の一つとすら言えるだろう。


 まぁ最近やっとマトモな料理を食べれる様になった孤児ぼくの食レポとか、信憑性ゴミクズだけどね。


「あー! ラディアだけ飯食ってズルい!」

 

「馬鹿言うなアホ! ラディアは一人でずっと戦ってたんだから、先に飯食うのは当たり前だろ! 今日一番働いてるのはラディアとおやっさんなんだからな!」

 

「でもよぉ、俺も腹減ったぁ……」


 生体金属ジオメタルの残骸を運び出すタクトと、その補助の為にもう一機乗ってる誰かが作業を進める中で、周りに居るグループの子達に見咎められた。

 

 しかし僕は本当に忙しいので、先に食べるのはむしろ君達の安全の為なのだよ?


「順番で食べちゃってね。最低でもタクトが食べて、ちょっと休憩出来るまでは休みだから」


 もう利益がヤバいレベルで確定してるから、多少ゆったり休んでも大丈夫だ。

 

 何せ、もう旅団の鹵獲依頼は終わったので、今日を除いてもあと四日は鹵獲祭りを独占して良いのだ。これ最後はマジで幾ら稼げるのか予想も付かない。

 

 一応、僕とおじさんの稼ぎは相談して、おじさんが売却した鹵獲機の利益を折半って事になってる。こっちもシリアスと僕とおじさんで折半しよって意見したけど、流石に無理やった。

 

 二つで一つの癖に二人分請求すんじゃねぇって怒られた。ちくせう。


「ねぇシリアス。これもしかして、VRバトルで使ってる装備くらいは買える稼ぎになるかな?」

 

『不明。しかし、その場合はあえて、バーニア等に手を出すのも良い。そうすればVRバトルではフル武装のフルバーニアが試せる』


 ああ、現実の装備をVRに持ち込めるから、現実で買えばVRでも使えるのか。うん、それ良いな。

 

 ……いや、良いのか? ゲームで装備のお試しをして、現実でハズレを引かない様にって始めたVRバトルなのに、まだ試してないバーニア系を現実で買って良いのか?

 

 て言うか、僕のランクでバーニア買えなくね?


『それが気になるなら、稼ぎの内の少しを使ってバトリーを購入して、しっかりと試せば良い』

 

「あー、うん。あんまり課金したく無いけど、本購入前のお試し費用だと思えば、まぁ……」


 本購入に比べたら雀の涙、いや雀の号泣くらいで済む金額を使えば、好きなだけ試運転が出来ると考えれば悪くない。

 

 試運転無しで外したら、丸っと大金が無駄になる。試して購入してもバトリー代を余計に払う程度で、保険の先取りをしたと思えば良いのだ。


「タクト達の機体にもVRバトル入れてやらせよう。免許無いと乗れないし」

 

『それが良い。タクトは今でも筆記の勉強はしているので、輸送機免許であれば数日で取得可能と思われる』

 

「あ、マジ? 僕それ知らないんだけど」

 

『購入するテキストの精査を手伝った事がある。電子書籍購入もタクトにとっては大きな買い物に違いないので、より効果的で正しく学べるテキストを選んで欲しいと端末に連絡があった』


 話しの内容より、僕の知らぬ間にタクトがシリアスとメッセージのやり取りしていた事実に無限の嫉妬を感じるんだけど。

 

 なに? 僕の彼女にコショコショ話し? 寝取り? つまり戦争か?


「…………ちょっとタクトを機体のコックピットごと吹っ飛ばしてくる」

 

「なんでっ!?」

 

「ちょ、タクト逃げろぉっ!?」

 

『非推奨行動。ラディア、落ち着くと良い』


 僕、ご乱心。


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