プリティとか。
一ヶ月が三○日前後で、週休二日で働く市民が二○日勤務する一般的な勤務形態だと、月に約三○○○シギル。これが中級市民の平均月収だ。
下級市民や上級市民でまた違うけど、大体の都市に於いて一番層が厚いのは中級市民なので、比較としてよく使われる。
そうすると、非正規雇用の孤児が日に二○シギルも貰った場合、月に四○○シギル貰える事になる。無休なら六○○シギルだ。
子供のお小遣いにしてはかなり多いと言える。だってその子供を七人も集めたら中級市民の月収に追い付くのだ。何回も言うが非正規雇用でそれだけくれるのだ。めちゃくちゃ良心的と言える。
「しかも、飯出るし。水も貰えるし。最高だよな」
「ホントだよ。水と飯が欲しくて仕事してるのに、仕事したら金とは別に水も飯もくれるんだから、金が丸々浮くもんな」
「ボスはセルクさん?」
「ん? セル…………? ああ! セルリルクさんの事な! そうそう!」
「めっちゃ気にかけてくれる良い人だよな。めっちゃ可愛いし。ニコニコしてるし」
「でも三十路過ぎなんだよな?」
「バッカお前、アンチエイドなんだから実質若いだろうが。変な事言うとセルリルクさんにチクるからな」
「やめろぉぉおッ!?」
セルクさんは
でも、セルクさんなら年齢の事を言っても「そんな事言っちゃ、めっ、だぞ?」とか言って許してくれそう。だからって侮辱して良い理由にはならないけど。
「…………て言うか、あの人も
「そうだね。ブリッツキャットって機体に乗ってるよ。凄い綺麗な機体だったよ。名前はコルナスだって」
「あー、いいな。自分の機体の名前とか、もうそれだけで羨ましい」
「良いよなぁ。俺も、『これが俺の○○だぜ』みたいな事言ってみてぇ……」
めっちゃ分かる。僕も、僕のシリアスって言う度に内心凄いモニョモニョしてるし。
分かりみを感じながら、仕留めた獲物をシリアスの背中に乗せて移動を開始。背面に武器を積み始めたらコレも出来なくなるから気を付けないと…………。
「なぁ、ラディアはどうやってシリアスの名前決めたんだ? 俺らも何時か自分の機体にカッコイイ名前付けたいから、参考に教えてくれよ」
「ふぇ、僕?」
『便乗。シリアスも気になる。シリアスは何故シリアスなのか』
次の獲物を探しながら、僕はシリアスの名前の由来を聞かれる。大した理由じゃ無いんだけどなぁ。
「えっと、まずね、僕の父がね、名前をライディウスって言って、二つ名がヴィクトリウスって言って、機体の名前がサディウスなんだ。それで、名前の最後が『ス』で揃うのが、父流なのかなって思って、それでシリアスの『ス』が決まったの」
「ほうほう」
「そっか、お前の親父も傭兵なんだっけ」
「それでね、頭の三文字は、すんごく普通に『デザートシザーリア』から三文字取って、シリア。それにスを合わせてシリアス」
語り終えると、微妙な顔をされた。なんでや、納得出来ん。
「いや、なんか、もっと大層な由来とか有るのかと…………」
「オリジンなのに……」
「煩いなぁ! イイじゃん! 音の響きはカッコよくて綺麗で可愛いじゃん! それに、大事なのは由来よりも名前に積み重ねた歴史なんだよ! つまり僕とシリアスが歩むこれからの人生が大事なの!」
『肯定。なかなかの名言だと判断する』
褒められて照れる。でへへ。
僕はシリアスに獲物を乗せながらセンサーを注視する。何処を見てても視界に計器系が表示される状態を維持してくれるホロバイザーは便利だぁ。
端末用のウェアラブル端末を機体に同期すれば要らない設備なんだけどさ。
乗せてる獲物は次の獲物を見付けて狙撃後、その場に降ろしてから狙撃した獲物と戦う予定だ。
降ろしてる間に別のデザリアに食われるかも知れないけど、その場合は食い付いたデザリアも狩るのでどっちにしろ美味しい。
「それに、大層な由来とか考えて名前付けてたら、シリアスの名前って今頃エンジェルとかだからねっ!? もしくはプリティとか! ピュアキュートとか!」
「…………無いわぁ」
「なんだよプリティって」
「なんでや! シリアス可愛いやろッ!?」
「いや、めっちゃカッコイイとは思うけど……」
「この刺々しいアームデザインとかで可愛いとかは、ちょっと思わないよな。コックピットの中だけなら分かるけど」
「それな。コックピットはめちゃくちゃカッコイイし、可愛くもあってセンス良いよな。俺も機体があってお金貯めたら、このコックピットが良いわ」
ちくしょう。感性が合わない。
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