二ヶ月半砲。



 タクトにバイオマシンの操縦を教えてから数日、僕は此処のところ毎日砂漠に出てはデザリア狩りをしていた。

 

 その度にタクトグループの誰か二人を乗せて、その度に操縦の授業をする。

 

 何回も教え続けたからか、段々と授業も効率的になって来た。


「…………ッッおらぁっ!」

 

『笑止、この程度は余裕』

 

「すげぇぇええ……!」

 

「かっけぇええ!」


 可能なら索敵範囲ギリギリからの狙撃でダメージを与えた後に格闘戦へ移行するのだけど、偶に砂の中から突然エンカウントするデザリアも居て、急にセンサーへ現れる反応にちょっと慌てたりもしつつ、僕は順調に狩りを進めている。

 

 パイルバンカーの機能が使えないニードルカノンを叩き付ける様に襲って来るデザリアのテールをアームで挟み、そのまま内蔵されたパイルバンカーを機動してデザリアのテールを叩き折る。

 

 そしてフリーのアームでシリアスの脚を圧し折ろうとして来るデザリアの背面に、炸薬砲を叩き込んで殺す。なるべく使いたく無いんだけど、仕方ない。


「…………シリアス、スキャニング」

 

『了解。…………ダメ、どっちも逝った』

 

「くそぉぉあ、殺しちゃったし稼ぎも減ったぁ……、僚機さんは殺したくないのにぃ……」


 デザリア狩りで重要なのは、陽電子脳ブレインボックス生体金属心臓ジェネレータ、そして生体金属ジオメタルの総量である。

 

 バイオマシンは陽電子脳ブレインボックス生体金属心臓ジェネレータのどちらかでも破壊すれば死ぬので、逆に言えばどちらかは破壊せずに済むのだ。

 

 一つでも一○万シギルで売れる重要な飯の種なのに、突然の格闘戦だったからどっちも破壊してしまった。

 

 もったいない。超勿体ない。この機体はもう生体金属ジオメタル以外の価値が無くなってしまった。

 

 しかも、一気に乱暴に殺したから、損壊部の生体金属ジオメタルとか鮮度最悪だろう。その分値が下がるので嬉しくない。

 

 何より、陽電子脳ブレインボックスを市場に流せば殺さずに済む僚機さんを、無駄に一機殺してしまったのが嫌だ。

 

 もちろん襲って来る相手に容赦などするつもりは無い。けど、殺さずに済むなら殺したくない。

 

 ちくしょう。


「いや、でも数万はするんだろ?」

 

「ひぇぇ、俺らの稼ぎ何年分だよ……」

 

「いやいや、旅団のお仕事って結構稼げるでしょ? 何年分は言い過ぎじゃ無い?」

 

「馬鹿野郎。まだ端末持ってない奴は徒歩傭兵ウォーカーですらないから、貰えるお金もお小遣いレベルなんだぞ」

 

「まぁそれでも非正規雇用の俺らにもちゃんとお金出してくれる分、凄い待遇良いけどな」


 今日も今日とて、名前も知らない顔見知りと、名前も顔も知らなかったタクトグループの新入りさんを乗せて、僕は砂漠に居る。

 

 二人によれば、旅団のお仕事はかなりホワイティだそうだ。


「しっかし、バイオマシン動かすのって此処まで大変なんだなぁ。俺、お前のこと運が良いだけの奴だって思ってたけど、考えを改めるわ」

 

「そうだよな。仮に俺らがオリジンを仲間に出来ても、ロクに動かせなかったわ」

 

「いやー、でも運が良いのは間違いないよ。僕、シリアスに出会えて一生分の幸運を使っちゃったからさ」

 

『その分、シリアスがラディアを幸せにするので、問題無い。ラディアにはもう、幸運など要らない。シリアスが全て賄う』

 

「でへへへへへへへぇ…………」


 幸せぇ…………。


「めっちゃ羨ましい。やっぱめっちゃ羨ましいぞチクショウ」

 

「あー俺も乗機欲しい…………」

 

「僕はタクトにしか用意しないけどさ、タクトにさえ用意すれば、後はタクトが稼いでみんなの乗機買うでしょ。タクトに頼まれたら鹵獲も手伝うし」

 

「はぁー、はタクトしゅきしゅきで仕方ないなぁー!」

 

「…………降ろすよ? 此処から歩いて帰る? 僕は止めないよ?」

 

「ごめんなさいッ! ユルシテ!」


 女装して無い僕をディアラ呼びとかギルティだ。ギルティ過ぎる。本気でコックピットの外に放り出すぞ。

 

 此処は警戒領域でもそこそこ奥の方なので、徒歩で帰るとか悪夢だし。野良デザリアに襲われずに帰れると良いね☆


「…………はぁ、炸薬砲まで使ったのに、両核損壊かぁ。ツイてないなぁ」

 

「あー、弾薬費か」

 

「うん。今撃った弾一発で、一○○○シギルもするんだよね」

 

「…………聞きたくなかったなぁ。今の攻撃だけで何日分の仕事が飛ぶんだよ俺ら」

 

「めっちゃ頑張って一日に二○シギル貰えるから、二ヶ月半分くらいだゾ。無休でも一ヶ月強だな」

 

「つまり炸薬式二ヶ月半砲…………」

 

「なにそのネーミング」


 しかし、登録徒歩傭兵ウォーカーが連れて行くオマケの非正規雇用でも二○シギル貰えるのか。旅団さん優しいなぁ。


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