ラディアの授業。
「ちなみに、このコックピットに付いてる大量のフットレバーは、戦闘機動に使うジャンプとか、簡易反転とか、シザーアームのパワー操作とか、色々な役割が有るよ」
「フットレバーの操作でもアームに作用するのか?」
「物によるね。ぶっちゃけ、コンソールで操作系のコンフィグ設定をすれば好きに変えられるよ。アクショングリップで前進操作とかも一応出来る。…………まぁやる人居ないと思うけど」
鹵獲した機体も初期設定はフットレバー機動な訳で、つまりフットレバー操作で機動制御をするのは、古代文明の視点からでもそうするに足る理由があるって事だ。
人体工学とかも現代より遥かに凄かっただろう古代文明でそう作られてたのに、わざわざ変える必要なんて無い。よほど変な拘りが無ければ、普通はフットレバーで機動制御するはすだ。
「さて、次はアクショングリップとスロットルの基礎ね。これが出来たら戦闘機免許も取れるよ。偵察機も工作機も、射撃武装が積んであると戦闘機免許じゃないと乗れないから注意してね」
「おう。…………シールドダングみたいなデカい機体を輸送機免許で乗れて、アンシークとかデザリアが戦闘機免許なの、ちょっとモニョるよな」
「ダングだって武装したら戦闘機免許が要るからね? 旅団の人事を担当してる人に聞いたんだけど、昔には超長距離砲撃特化のシールドダングが暴れる戦争があったらしくて、旅団の戦闘員もめちゃくちゃ殺されたって言ってたよ」
「マジかよ…………」
グドランさんがしみじみと言ってたから、相当な数殺されたんじゃないかな。
いくらミラージュウルフが強襲用機体でも、単機駆けしないと突破出来なかったった時点でヤバ過ぎる。単機駆けって控えめに言って捨て駒運用の自爆特攻みたいなモンだからね。
「アクショングリップの操作は、まぁめちゃくちゃ難しいよ。一気に操作難易度上がるから」
「そうなのか? フットレバーの操作聞いてたら、そっちも簡単なのかと思ったけど」
「まさかまさか。戦闘機免許がわざわざ分けられる事に納得するくらいには違うよ」
僕はロクデナシの父から叩き込まれてるけど、普通に考えたら子供に覚えさせる難易度じゃ無い。
「アクショングリップはカスタム品だとめちゃくちゃ種類が有るから、その操作の違いも面倒なんだけど、今は基礎だから汎用コックピットの純正品基準で教えるね」
「頼むわ」
「と言っても、口頭で説明するなら凄いアッサリなんだよね。実際にやるのが超難しいだけで」
アクショングリップは引き金、つまりトリガーが重要な操作系になる。
レバーアクションで武装の照準を行って、トリガーで攻撃を入力する。コレだけなら、まぁ照準の感覚が難しいけど、それだけだ。
「問題は、武装の切り替え。シリアスがゼロカスタムだったとしても、シザーアーム二つにテールウェポン一つ、計三つの武器があったでしょ? 作業用なんだけどさ」
「…………なるほど。このコックピットでもアクショングリップは二つ、汎用コックピットなら一つだもんな? 武装の数と操作系の数が合ってない」
「そう言う事。だからアクショングリップに付いてるボタンで武装の切り替えをしながら、アクショングリップが対応する武器を切り替えて操作するんだ。武器が増える程に頭がこんがらがるし、対応武器を纏める操作とかもあって、慣れないとマジで混乱するよ」
ゼロカスタムのデザリアでも三つある武装だけど、対応出来る武器以外はフリーにして置くとか無駄の極み。
だからボタン操作で『左右のアームを同期して同じアクショングリップで動かすモード』とか、『テールと右アームだけ同期して動かすモード』とか、色々な設定を切り替えて使う必要がある。
「……うわぁ、三つだけでそれかよ」
「うん。超大変だよ。汎用コックピットならアームだけでも二つの武器を一つのアクショングリップで操作するし、アーム同時操作、右とテール、左とテール、テールのみ、両アームとテール全部同期、つまり七種類の操作を切り替える訳だね」
勿論、右アームとテールとか、左アームとテールなんて操作方法は使う予定が無いって言うなら、コンソール弄ってコンフィグ設定から消しても良いし、武装を増やした時もそれは同じだ。
「他にも、シザーアームの格闘攻撃にアクショングリップを同期するのか、それともアームの射撃武器を使うのか、それでも操作が変わるからね。本当に大変だよ。しかもそれを戦闘中に、敵の動きを見ながら対応するわけだから」
「…………そりゃぁ、傭兵が高額を稼げる訳だよ。予想の百倍大変そうだわ。超専門職じゃん」
「そりゃそうだよ。それに、だからコレ、カスタムコックピットのアクショングリップにこんな馬鹿みたいな数のボタンが付いてて大変そうに見えるけど、むしろコレって対応範囲が増えてるから楽になってるんだよ。レバーの親指を置く所にあるマイクロスティックとか、第二のアクショングリップとして動かせるから、このレバータイプだと、頑張ればアーム二つとテールの照準を別々に出来るし」
「マジかよ。…………いやそれはそれで大変じゃね?」
「そりゃぁね? 普通は武装を全同期して一斉射とか、そんな使い方が普通だもん。砲門三つを別々に照準する場合とか結構レアケースじゃない?」
「じゃぁ意味無くね?」
「いやいや、『出来ない』のと『出来るけどやらない』は意味が違うよ。必要になった時に、あの時にちゃんとカスタムしておけば〜、なんて、後悔しても遅いじゃん? 一人で複数を相手にする場合だって有るんだし」
「…………それもそうか」
「それで、アクショングリップの操作だけでも大変なんだけど、スロットルレバーの操作も覚えないとダメだよ」
スロットルレバーも、アクショングリップと似たような使い方だ。
基本は武器の出力設定をする操作系だけど、移動用のブースターとかスラスターを装備したなら、その操作もスロットルレバーで行う。要はまたボタンで切り替えるのだ。
「クソ程大変じゃねぇか」
「だから言ってるじゃん。大変だよって。汎用コックピットだとアクショングリップ一つにスロットルレバーが一つだから大変だけど、このコックピットだとどっちも左右に二つ着いてるからめっちゃ楽。右と左で別の設定をして置けば切り替えも減るからね。実質的に負担が半分なんだ」
ゴシックローズの操作系は左右にアクショングリップとスロットルレバーが付いてて、例えばシリアスにブースターを増設したなら、左のスロットルをブースターと同期して、右を武装と同期すれば切り替えが要らなくなる。それだけでもかなり楽だ。
汎用コックピットのクソデカスロットルレバーくんも趣があって良かったけど、ゴシックローズのスロットルレバーも程良い小ささで使い易い。
スロットル操作の時にアクショングリップから手を離す必要があるけど、汎用コックピットだと普通はアクショングリップとスロットルレバー一つずつで操作する訳だからね。
二つに増えた操作系の一つから手を離すくらい問題無い。問題無い操作を心掛ければ良いのだから大丈夫だ。
手を離してる間だけ、離した方とは反対の握ってる操作系へと必要な同期操作をして置けば良いのだし。
「いや、…………いや大変じゃん。頭がおかしくなるわ」
「まぁ、当たり前だけど教えてすぐに全部覚えろだなんて無茶は言わないよ。乗機を手に入れたら少しずつ覚えれば良いんだし」
「でも、免許無いと乗ったら捕まるだろ?」
「都市の中ならね? 外なら大丈夫だから、傭兵団では都市外で実機練習とかするみたいだね。それと、傭兵ギルドもそうだし、免許取得が出来る施設で申請すれば、有料で練習用の実機を使わせてくれるらしいよ。ギルドの五階にある試験用の実機がそれ」
「…………うわぁ、マジかよ。練習の為にまたあの地獄のエレベーター参加するのかよ」
いや、別に僕が外にデザリアを用意すれば良いんじゃないかな?
都市への乗り入れだけ誰かに手伝ってもらったりさ。もしくは、現役の傭兵に依頼を出して、機体を借りつつ操作を教えてもらうとか。
「方法は沢山あるよ?」
「…………やっぱり、楽をしたいなら金か」
「そりゃそうだよ。
「違いねぇや」
空気になってるスピカにも、ちゃんと覚えたかを確認しつつ、僕は狩場に到着して狩りを始めるのだった。
「じゃぁ、実演も兼ねて戦うから、モデリングデータと僕の動きを良く見ててね」
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