永久旅団。



「初めまして、ラディアディアラです……。本当はラディアなんですけど、この格好の時はディアラなので、えと、察して下さい……」


 シリアスのカスタムが終わり、おじさんに支払いも終わって移動した先。

 

 完全にお嬢様に対する態度で案内してくれたホテルマンに連れられて行ったお部屋、カルボルトさんが泊まってるホテルの一室。

 

 そこには四人の人が居た。


「挨拶、痛み入る。私は傭兵団『永久旅団』団長のライキティ・ハムナプル。君と友誼を結んだカルボルト・レイクスーツの上司だ。よろしく」

 

「ご存知、カルボルトだ。永久旅団の切込隊長をしてる。改めて、よろしくな」

 

「初めましてディアラちゃん! 私は永久旅団の徒歩傭兵ウォーカー隊の隊長で、広報と新人育成も任されてるセルリルク・エッケルホークだよっ! ランクは五で、ブリッツキャットに乗ってるんだ! セルとかリルクとか、好きに呼んでね! 団ではセルクって呼ばれるのが多いかな?」

 

「…………人事を任されてるグドラン・リカールだ。よろしく」


 カルボルトさんがずっと団長、団長と呼んでいた女性は、ライキティさんと言うらしい。三十代って聞いてたけど、凄く若く見える。

 

 下手したら十代後半でも通じそうな見た目で、鮮やかでサラサラな赤色の髪が特徴的だ。

 

 傭兵団に所属する徒歩傭兵ウォーカーを纏めてるセルクさんは、緑色の髪が綺麗な女性だった。やっぱり若く見えて、ライキティさんとそう変わらない年齢に見える。やっぱりアンチエイドの効果なのかな?

 

 最後は濃い灰の髪を短く揃えた寡黙な男性、グドランさん。四十代後半に見えて、実際にその年齢らしい。

 

 部屋着でラフなカルボルトさんと違って、三人は全員が、紺色に金の縁取りがされた揃いの服を着てる。団服らしい。カッコイイ。


「か、カルボルトさんって、ファミリーネームがレイクスーツって言うんですね」

 

「おう。そういや教えてなかったな」


 孤児って基本的にファーストネームだけで過ごすから、ファミリーネームに無頓着だったのは僕もだ。カルボルトさんだけのせいじゃない。

 

 と言うか、僕って自分のファミリーネームも知らないんだよね。

 

 父が離婚のアレコレでファミリーネームが変わったり戻したり、そのまま独り身の傭兵だとカルボルトさんみたいに名乗らなくなる事もあって、僕は父が最終的にどんなファミリーネームだったのか知らない。

 

 つまり自分のファミリーネームも知らない。

 

 色々あって戸籍も飛んだので、今の僕は正式に「ただのラディア」である。だって知らないんだもん。

 

 スラム孤児にはファミリーネームを持ってる子も居るけど、捨てられたりしてスラム入りしてる訳だから基本誰も名乗らない。嫌な思い出が詰まってるから。


「…………ふむ。可愛い」

 

「ですね! 本当に可愛い!」

 

「や、止めてください……」

 

「……もしウチの団に入ったら、若い奴らが浮き足立つな」

 

「性癖捻じ曲がる事請け合いだよな。可愛いから男でも良いっつって」


 人を性癖破壊機みたいに言うの止めて下さいませんかね?


「て言うかカルボルトさんが原因ですからね? 僕、まだ微妙に怒ってますからね?」

 

「スシ奢ったじゃん」

 

「それは悪びれずに弄って良い理由にはならないかと。…………カルボルトさんも見た目綺麗ですし、女装してみます?」

 

「あ、悪かった。すまんかった。もう言わんから、その道連れにしてやるってくらい笑顔を止めろ」


 シリアスが本気になった時の、スキャニングからの陽電子脳ブレインボックス全力演算で成される女装クオリティ、カルボルトさんも経験するべきだ。

 

 ムキムキだけど、顔が綺麗だからきっと、たぶん、良い感じの美人にしてくれるよ。シリアスが。


「許せって。今回は団長がスシ奢ってくれるって言うからさ」

 

「…………オスシ、オスシぃ」

 

「よっぽど気に入ったんだな」


 だって美味しいもの。

 

 フードマテリアルの再現って、生食用の魚と相性が悪いみたいで、オスシやサシミって食べ方が難しいのだ。

 

 だからフードマテリアルが当たり前の現代に於いて、魚料理と言えば火が通ってるのが当たり前。と言うか料理の完成品を出力するのが一般的で、なるべく生魚を作らない方が良いと言われてる。

 

 手料理愛好家派閥の悩みは大体生魚の利用方法だと言われてるくらいだ。


「生魚、オスシ、オサシミ…………」

 

「フィッシュモンスターかよ」

 

「ボク、サカナ、タベル……」


 茶番を挟みつつ、改めまして。


「えーと、改めまして。ランク一傭兵のラディアです。デザートシザーリアのオリジン、シリアスに乗ってます。今日はよろしくお願いします」

 

「ふむ、可愛い」

 

「団長、さっきからソレしか言ってませんよ!」

 

「いや、しかし、他に言葉が見付からないのだ。正直、ちょっと感動して、内心で神に感謝してる」


 そも、今日はカルボルトさんから団長さんを紹介されるって話しだったけど、他の人はどうしたんだろう。


「ああ、グドランは完全にオマケだが、セルクは少しばかり用事がある感じか。用事って程で無いんだが」

 

「えっとね、ディアラちゃんのお友達のタクトくん! 最近良く徒歩傭兵ウォーカーとして仕事を任せたりするんだけど、すっごい働き者だよね! ディアラちゃんのお友達って事で、私もついでに挨拶に来たの!」


 え、マジか。タクトにお仕事くれる人なのか。もうこの時点で僕の中でセルクさんはめっちゃ良い人判定だ。

 

「タクトを、よろしくお願いします……」

 

「うん! 任された! タクトくんはね、少しずつ稼いで、グループの子達全員に情報端末を買う為に稼ぐみたいだよ!」

 

「ああ、端末さえ有ればとりあえず徒歩傭兵ウォーカーに成れますもんね」


 ありがてぇ、ありがてぇ……。

 

 これでタクトと、その周りがより幸せになる。


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