オリジンガチ勢。



 セルクさんを拝む僕。

 

 物凄くぶっちゃけると、タクト以外の子達の幸せとか正直どうでも良いんだけど、タクトが幸せになるには周りの幸せも不可欠なので、やっぱり周りごと幸せに成る必要がある。

 

 そのきっかけを貰えるなら、永久旅団とセルクさんは凄まじく良い人だ……。天使の称号はシリアスの物なので、女神とでも呼ぼうか。


「なぁ、そろそろ行こうぜ? 坊主もスシ食いたいだろうし」

 

「む、そうだな。このままだとディアラちゃんが可愛過ぎて、何を喋って良いか分からないからな。食事でもしながら慣れる方が良いだろう」

 

「…………提案がある。俺は乗機が無いから、ディアラの機体に乗せてもらいたい。オリジンに興味が有る」


 痺れを切らしたカルボルトさんがオスシをプッシュして、グドランさんがそう言った。

 

 グドランさんは完全に事務職らしくて、傭兵団の人事を担う徒歩傭兵ウォーカーだそうだ。

 

 セルクさんは徒歩傭兵ウォーカーを纏めてるけど、それは戦闘員や、非戦闘員であっても現場に出て来る人を纏める立場らしく、事務であるグドランさんの上司って訳では無いと言う。


「あー、グドランはオリジンに憧れまくって傭兵に成った口だからな」

 

「そうですね。オリジンに出会うまでは乗機を持たない、なんて若さ故の暴走を拗らせたまま生きてたら、生粋の事務傭兵に成ってた変わり種ですからね」

 

「…………後悔はして無いぞ。今日、こうしてオリジンに会えるんだからな」


 物凄い経歴の人も居たもんだ。僕はそこまで純粋にオリジンに憧れ続けたグドランさんを凄いと思う。

 

 人のプラスの感情って、そう長く胸に秘め続ける事が困難なんだ。僕もシリアス大好きって気持ち以外のプラス感情なんて、一頻ひとしきり喜んだら次の日にケロッとしてるし。最悪忘れるし。

 

 それを、一つの仕事を任されちゃうくらいに事務を極めるまで憧れ続けるなんて、それは誇って良い凄い事だと思う。


 まぁ、それはそれとして、お願いを判断するのは僕じゃなくてシリアスなので。


「えと、乗って良いかどうかは、僕じゃなくてシリアスが判断するので、僕はなんとも……」

 

『回答する。複座なら許可。メインシートには絶対に座らないと約束するなら、シリアスは受け入れる』

 

「…………だ、そうです」

 

「………………ッッッ!? い、今のが、オリジンかっ?」


 シリアスは基本的に、僕の端末経由で会話を聞いてるし、僕の端末のテキスト読み上げアプリケーションを使って発言も可能だ。なので何時でも会話に割り込める。


「か、感動だ……! オリジンと、会話してしまった……」

 

「……凄いな。噂に聞くよりずっと理性的だ」

 

「だろ? 凄い良い奴だし、気さくだったぜ」

 

「て言うか! 乗機とお話し出来るのが凄い羨まし過ぎるんですけど! 私もウチの子とお話ししたい! 可愛がりたい!」


 お話し合いの結果、グドランさん以外は自分の機体乗って、グドランさんは僕と一緒にシリアスへ乗り、前にご馳走して貰った『鮨処ハナヨシ』に移動する事に。

 

 寡黙でナイスミドルな感じだったグドランさんは、オリジンを見れて、しかもコックピットにも乗れると成ってウッキウキだった。

 

 ホテルの駐機場に移動して、皆にシリアスを紹介した時なんて、シリアスが挨拶代わりにアームを上げてふりふりしたら、グドランさんが泣き始めちゃった。

 

 現代人にとって、オリジンとはそれだけ憧れの存在なのだ。父曰く『御伽噺よりちょっとマシ』な、つまり『実在する御伽噺』であるオリジンは、自分が経験出来る可能性があるファンタジーなのだ。

 

 憧れ続けた存在を目にしたグドランさんは、静かに、だけどボロボロと号泣して、初めて見る仲間の姿にカルボルトさん達も慌てる始末だった。

 

 シリアスもびっくりしちゃって、『お、落ち着くと良い』って声をかけるもんだから、逆にもっと感極まって酷い事になった。


「……ぐすっ、ディアラ、いや、ぐず、ラディアと、あえて呼ぼう」

 

「は、はい」

 

「…………ありがとう。この、機会をくれて、ありがとう」

 

「いえ、あの、僕なにもしてないので、お礼はどうか、シリアスとカルボルトさんに……」


 駐機場の一幕。グドランさんは「君が傭兵団を立ち上げたなら、そちらに移籍して腕を振るおう。是非声をかけてくれ」と言ってくれた。


「いや待て待て待て待て。グドランに移られたら旅団がテンヤワンヤだろう。移籍は止めろ。むしろディアラちゃんをウチに誘え! お前はウチの人事だろうが!」

 

「………………?? オリジンには、ソロか、小規模傭兵団の方が、似合うだろう?」


 グドランさんは「お前は何を言っている?」みたいな、心底不思議そうな顔をライキティさんに向けていた。ライキティさんは顔が引きつっていた。

 

『……話しが終わったなら、移動を推奨する。休日とは言え、時間は有限』

 

「そ、そうだな。うむ、オリジン殿の言う通りだ。ほら、グドランも移籍の話しは忘れて、食事に行くぞ!」


 そんな訳で、オスシ屋さんへ移動だ。


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