次のオスシ。



 カルボルトさんの上司が女装した僕に会いたいらしい。うん、嫌だ。

 

 でも、僕の女装云々でオスシ奢ってもらったんだし、八一○万シギルだったし、此処で拒否するのは不義理過ぎる。


『また飯でも食おうや。予定とかどうだ?』

 

「えーと、シリアスのカスタムで少し時間が掛かりますけど、あと一時間ちょっともしたら自由になりますし、予定は特に無いですよ。今日でも明日でも」

 

『おお、じゃぁそうだな、合流は二時間半後に前と同じホテルでどうだ? 今度は団長の奢りで、またスシが食えるかもしれねぇぞ』

 

「マジですかッ!? またオスシ食えるッ!?」

 

『その代わり、坊主は女装な』


 おぅ、ガッデム。

 

 いや、ホストである団長さんが奢ってくれると言うのに、ホストの頼みを断るのはマズイだろう。ちくしょう、食欲から逃れられない……!


『シリアスもこれ聞いてるか? シリアス、坊主のコーディネートよろしくな! 渾身の奴を頼むぜ! 団長の機嫌が良くなるからよ!』

 

『肯定。任された。しかし、ならばシリアスも何か要求したい。女装権を使うなら朝からが好ましい。何故なら一日権だから、中途半端な時間に行使すると時間割合で損をする』

 

『あー、うん。それは団長に言っとくわ。何かしら補填があると思うぜ。アレでもランク八で、アホほど稼いでるからな』

 

『了解した。渾身の「可愛い」をお届けする所存』


 僕、知ってるんだ。シリアスがおじさんに交渉して、居住区画の丸一室を借りて僕用の女装服保管庫にしてる事。

 

 そして、日に日に選ばれる服のグレードが上がってる事を。


「し、シリアスは本当に僕をどうしたいの……?」

 

『可愛くしたい。……あ、否、幸せにする所存』

 

「そこ間違えるレベルで可愛くしたいのッ!?」


 これは、目覚めさせたカルボルトさんの戦犯具合がヤバい。正直ちょっと八一○万シギルも使わせたの申し訳無かったけど、なんか足りない気がして来た。

 

 と言うか、合計額がそれってだけで、僕一人分は三○万くらいだし。


『んじゃ、まぁ二時間半後にホテルでな。今回はラディア一人だし、ドレスコードも問題無いだろうから部屋まで来いよ。エントランスで名前を言えば案内される様に言っとくから』

 

「…………わ、分かりました」


 はい。僕の女装が始まります。


『気合を入れる』

 

「手加減してくれても良いのよ?」

 

『否定。下手に男性要素を残し、明らかな女装感が出た場合、恥をかくのはラディアだと忠告する。完全に女性だと思われた方が良いはず』

 

「…………そう言われたら、確かに」


 下手に女装だとバレるクオリティだと、「あ、この人女装してる。女装が趣味なんだ」って風評が僕を襲うだろう。

 

 けど、完全に完璧に一部の隙も無い美少女「ディアラちゃん別人」になれば、ある意味でラディアぼくは無傷なのだ。僕の精神被害は置いといて。

 

 クオリティが高ければ高いほど、ディアとディアの存在が乖離して僕の名誉が守られる。完全に別人扱いを受ければ良いのだ。


「…………はい。諦めました。どうぞ全力でおなしゃす」

 

『任された』


 そして、物凄い女の子にされた。


「…………えっと、ゴシックロリータ?」

 

『否定。どちらかと言えばクラシカルロリータ。確かにクロスデザインもあしらわれてる。しかし、ゴシックと言う程じゃない』

 

「シリアス、そう言う知識って最初から持ってたの?」

 

『否定。端末を入手後、基本的に常時都市回線に接続して何かを調べている。その一環。人間の装飾文化は興味深い』


 僕は、今回もふりっふりのワンピースを着せられた。けど、前回と違って色は黒が基調となった。

 

 黒ベースに白のフリルやレース、刺繍をあしらわれた物で、ポンチョ型のケープが可愛い服だ。

 

 クラシカルなコルセットスカートがくっ付いてるコンビワンピースで、シリアスによるとクラシカルロリータって分類らしい。黒ベースでふりふりしてたらゴスロリって考えは間違いらしい。


「…………ツインテールにする必要あった?」

 

『コネクテッド・ヘアコンタクトが優秀。遊ばない理由が無い』

 

「あ、遊びって認めちゃったよシリアス…………」


 またも使用されるコネクテッド・ヘアコンタクト。シャワーを浴びれば水に溶けて元通りになる、僕の悪夢の象徴である。

 

 これでまたサラサラ艶々のロングヘアーを手に入れた僕は、端末で監視するシリアスの指導によって完璧に可愛いツインテールを手に入れた。

 

 更にソックスはレースで縁取り、フリルとリボンの飾りが着いた女の子らしい白いフリルソックス。

 

 靴も前回に引き続きパンプス。けど前回と違ってロリータパンプスと呼ばれる物らしい。色は黒で、造形が可愛いだけで装飾は少ない。

 

 そして砂漠ファッションでは外す事が出来ないアイテム、そう帽子。

 

 これはシリアスが用意した候補から好きに選んで良いと言うので、僕が自分で選ぶ事になった。全部この服に合わせたデザインなので、どれでも大丈夫だそうだ。

 

 …………シリアス、もしかして僕に女装パーツを自分で選ばせて、心的ハードルを下げに来てる? マジ? シリアス本気で僕を女装男子にするつもり?

 

 まぁ良いや。選べと言われたなら選ぶさ。望み薄だけど、ダメージが少なそうな物を選ぼう。


 候補一、黒いトーク。頭にチョコンって乗せるだけのアクセサリー的な帽子。完全に女性用。


 候補二、モノクロボンネット。ふりふりした丸っぽい布製の板を頭に乗せて、その端の紐を顎の下に持って来て結ぶ感じの物。帽子って言うよりは、どっちかって言うと頭巾的な物になる。当然これも完全な女性用。


 候補三、モノクロセーラーハット。元は太古に存在した海兵用の帽子のモノクロ版らしいのだけど、元は海兵用ってのが信じられないくらいに可愛らしいデザインだ。これは男性向けのはずなのに、女性用にしか見ない。ちくしょう。


 候補四、モノクロパンケーキベレー。ベレー帽の一種の、パンケーキに見えるデザインのベレー帽の、モノクロ版。説明不要。これはユニセックスだと思うけど、まぁ女性向けだよね。


 ダメージ少なそうな選択肢が見事に無い……! 全部確かにこの服に合いそうだ……!


『他にも、カクテルハット風のルーベンスハットや、ゴシックなデザインにしたカプリーヌ等、沢山の候補があった。帽子が必須の砂漠ファッションは悩み甲斐がある』

 

「楽しそうで何よりです…………。うん、パンケーキベレーにする

よ。ユニセックスだし、比較的マシでしょこれ」

 

『良き。大きい帽子を緩く被って幼女感が出てる。とても良いと思う』

 

「…………よ、幼女感、だと?」


 僕は不安になって、借りてる部屋の鏡を見た。

 

 そこには確かに、十歳にしては幼さが見え隠れするモノクロ美少女が居た。マジか。止めてくれよ。肌の焼け具合が逆にエキゾチックな幼さを醸し出してる。泣きたい。


「…………うぎゃぁーって叫びたい」

 

『代わりにシリアスが「可愛いー」と叫ぶ』


 準備が出来てしまったので、向かいます。辛い。


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