女の子?



「……設定出来るけど、デフォルト設定もある?」


 右ガチガチ。


 おおお良かった。僕と天使さんが相思相愛だから通じ合えるんだ。

 

 でも、それならさっきの性別の質問に肯定か否定で帰って来ても良いはず。

 

 それでも尻尾フリフリだったんだから、何か理由があるはず。


「…………ふむ。デフォルト設定があって、変更は可能。でも性別を聞いたら分からないって言われたから、その設定が有効になって無い……?」


 激し目の右ガチガチ。おおお、なんか褒められてる気がして嬉しい。好き。

 

 あれか、開発の段階で陽電子脳ブレインボックスに性別の概念を付ける計画はあったんだけど、途中で「兵器に性別要らなくね?」ってなったのかな? 別に男の子でも女の子でも、何か出来る訳じゃないしな。

 

 いや、ナニかを出来るようには、出来たはずだ。古代文明人くらいの技術力なら、可能なはずだ。出来たはず。

 

 …………ああ、そっか、意味が無いのか。別に、例えば陽電子脳ブレインボックス由来の知性と恋がしたいとか、えっちな事がしたいとか、そうなったら別にバイオマシンの物で無くて良い。それはそれで専用に作れば良いんだ。えっちな事が出来る人型のロボットとか、アンドロイドとか。

 

 確か現代でもどっかの国で、そう言うのあったよね。セクサロイドだっけ?


「なるほど。陽電子脳ブレインボックスの知性と恋がしたいならセクサロイドとか使えば良いから、そっち用の設定が残ってる感じとかですか?」


 強めに右ガチガチからの、尻尾ちょいフリ。

 

 …………ん? 強めの肯定が入ったのに、尻尾もちょいフリだと?


「………………ああ、逆なんですね! バイオマシンが先! で、性別付けるって話しが出て、それなら専用にセクサロイド作ろ? ってなって、バイオマシン用の陽電子脳ブレインボックスの技術がそっちに流用された! その開発の名残でバイオマシンの陽電子脳ブレインボックスにも性別の設定が残ってる! でも戦闘兵器には基本的に必要無いから、設定が有効にはなって無い!」


 超強めの右ガチガチ。やった大正解したみたいだ。嬉しい。褒められたみたいで凄い嬉しい。

 

 孤児やってると、誰かに褒められるとか無縁だ。凄い無縁だ。だから余計に嬉しい。もっと好きになってしまった。


「………………はっ!? 軍人ってやっぱり男の人が多いですよね!?」


 右ガチガチ。


「なら、その軍人の為に性別設定の計画が一時的にでも立ったなら、デフォルト設定は女性である方が合理的! 全部がそうじゃ無かったとしても、女性設定である確率の方が高い! はず! たぶん!」


 右ガチガチ。の後にコックピットの中にちょこんと右のシザーアームが入って来て、コリコリと頭を撫でてくれた。えへへへへぇ。


「じゃぁ、天使さんのデフォルト設定は、高確率で女の子!」


 右ガチガチ。やったー!



 男の子でも覚悟してたけどデフォルト設定で女の子だとなんか嬉しい! 心的ハードルはちょっと下がった! 幸せ! 僕今凄い幸せ!

 

 天使さんなら絶対可愛い女の子だ。いや例え見た目がどうでもこの気持ちには些かも陰りは無いけど。て言うかサソリ型のバイオマシンその物に恋してる時点で見た目とか今更だし。でもやっぱり可愛い女の子だと物凄く嬉しい。

 

 男の子ってそんなもんだよね。良かった。僕の変態度も少し下がった気がする。

 

 それに、なんか、こう、こんな感じの人工知性と恋する的な電脳小説とかあった気がするし。そんなの読む機会無いけど。

 

 ネットワークに接続する端末すら手に入らないからなぁ。

 

 …………あ、女の子と言えば。


「………………えと、あの、天使さん?」


 右ガチガチ。


「その、ですね。あの、天使さんに、お名前とか、ですね。あっ、そもそも天使さんって名前有りますかっ!? 機体の種類名とかじゃなくて、個体名です!」


 久しぶりの左ガチガチ。右も良いけど左も可愛い。

 

 じゃなくて、無いのか。お名前無いのか。昔乗ってた人とかは、お名前付けなかったのかな。それとも、天使さんは古代文明人が滅んでから生産されたのかな。もしそうなら、ずっと一人だったのかな。


「えと、じゃぁ、天使さんに、お名前とか、ですね。あの……」


 右ガチガチ。右ガチガチ。からの右ガチガチ。凄い肯定される。

 

 あ、そうだ全部聞かれてたんだった。告白聞かれてたなら名前のアレコレも全部丸っと聞かれてるに決まってるよ。

 

 うわぁ、勝手に名前とか付けて盛り上がってたよ僕。はたから見たら凄い気持ち悪い状況じゃ無いだろうか。僕だったら引く自信がある。

 

 でも天使さん、凄い右ガチガチしてくれた。優しい。嬉しい。好き。


「えと、あの、さっきの、お名前でも……?」


 右ガチガチからの右ガチガチ。からの頭撫で撫で。嬉しい好き。


「はぅ……。じゃぁ、シリアス…………、で、良いですか?」


 右ガチガチからの頭撫で撫でからの右ガチガチ。

 

 もうダメだ幸せで死にそう。人生がクソだったから幸せに耐性が無いんだよ僕。弱点なの。もう僕は天使さんに、シリアスにメロメロなの。

 

 これ以上好きになったら過呼吸になってしまう。…………本当になりそうなのが怖い。


「…………えへへ、えへへへへぇ。幸せだぁ」


 泣きじゃくりながら喚いてた夢が、これから全部叶うかも知れない。

 

 そうだよ、そうなんだよ。全部やって良いんだよ。叶うかも知れないんだ。


 え、ヤバい! 凄い! 何だこれッ!? え、良いの!? 僕こんなに幸せで良いのッ!?


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