ゴンゴン。
…………背中がジャリジャリしてて、意識が上がってきた。
なんで、背中がジャリジャリしてる? なんかチクチクして痛いし。
僕は、えっと?
「………………ああ、えっと、…………たし、か。天使の、
ふむ。なら、
瞼が重い。目が開かない。て言うか体が重い。ダルい?
天国って、地面がこんなにジャリジャリしてチクチクしてるのか。知らなかった。もっとふわふわしてるイメージがあったけど、こんなにチクチクと痛いなら、むしろ地獄…………。
「……え、あぁ、そっ、…………か」
そりゃ、そうだよ。
なんで僕、自分は天国に行けるとか思ってたんだろう。地獄行きに決まってるじゃん。
生きる為だったけど、今まで悪いとは欠片も思ってなかったけど、僕は今まであの天使さんのお仲間の、その死肉を漁って生きてたんだから。
そりゃ地獄行きだよ。天使さんの仲間なら天使じゃん。天国の住人じゃん。
そんな方々の遺体を漁ってお金に替えてたんだから、まぁ順当な結果だよね。うん。納得。
マジかよ、死んだ後にも納得出来るとか、やっぱ僕って割と良い人生送ったんだな。良かった。
「……比較的、まし、な。地獄だ、と」
良いな。
ああ、瞼が重い。体が重い。まだちょっと寒い気がする。砂漠に居たのに、今度は肌寒いのか。マジかよ。
最後にあんなに素敵な天使さんを助けたんだから、ちょっとくらいマシな地獄だと良いな。
いや、マシな地獄だったらクソ親父煽れなく無い? アイツ絶対地獄の最下層でしょ。煽りに行けなくなる。え、それ嫌だな。僕を置いて無様に死んだクソ親父を煽り散らしてぶん殴ってやるのがちょっと楽しみで死んだのに。
マジか。ああ、そんなクッソしょうもない事考えてたから地獄行きなのかも知れないな。
「…………ああ、楽しかっ、たぁ」
ホントに、良い死に様だったと思う。マジ最高。
天使さんが思い通りに動いてくれて、今まで死神かと思ってたデザリアを自分の手で倒せたし。めっちゃ興奮した。正直ちょっとちんちん勃った。
戦いってあんなに興奮する物なのか。ふーん、そっか。なるほど。
「……おや、じ。なぐるの、かんべん、してやる」
こんなに楽しいなら、まぁ、僕なんてほっといて戦場行くよね。仕方無い。
良かった。ああ良かった。人生にこんなに楽しい事があるだって、知らずに死ぬ不幸だけは回避出来た。本当に良かった。
「…………楽しいかった、なぁ」
もっと天使さんに乗りたかった。
運良く生き残って、
「天使さん、と、仲良くなって、名前とか、つけて、一緒に、傭兵やって……」
どんな名前が良いかな。天使さんだから、エンジェルさん? それも良いかも知れない。
でもどうか。天使さんが嫌がるかもしれない。だって、冷静に考えると、人間に人間だからってヒューマンとは名付けないだろうし。
おいヒューマンとかクソ親父に言われたらイラッとする。やっぱり殴るか?
「じゃぁ、デザート、シザーリアだから、うーと…………、シリア?」
デザートシザーリアで、シリア。
可愛い名前だな。きっとめちゃくちゃ可愛い天使さんだ。天国だときっと、くっそ可愛いんだよ。
なんかこう、ちっちゃくて、妹みたいで、ちまちましてて、優しくて気が利く、凄い天使さんなんだ。
「でも、戦うのに、可愛さだけ……?」
……いや良いんじゃない? 別に、名前で性能変わる訳じゃないし。
クソ親父は何だっけ。オオカミ型のあの子に、なんて名前付けてたっけ。
確か、父が
最後に「ス」が付くのがクソ親父流なのかな? いや、二つ名は流石に自分で決めた訳じゃ無いか。て言うか自分で決めて名乗ってたならイタ過ぎる。
…………え、流石に違うよね? もしそうならイタ過ぎて他人のフリしたい。よし、親父が
「……うーん、クソ親父に倣うなら、最後にスを付けて、シリアス?」
おお、可愛いに綺麗な感じも混ざったんじゃないかな。
綺麗で可愛いとか無敵かよ。僕と天使さんの最後のやり取りも、なんかちょっとシリアスっぽかったし、良いんじゃないかな。
「うん。ふへへ、天使さんと、仲間になれたら、シリアスって、呼ぶんだぁ……」
-……ゴンゴン!
えっ、なにっ……、怖っ……。
な、なんか、ゴッツい音がしたんだけど。なんだ、怖っ。目を開けたくない。
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