短期決戦。
僕にバイオマシンの事をうんざりする程聞かせてから死にやがったクソ親父は、幸い、腕の良い傭兵だったらしいし。自称だけど。
「……バイオマシンの操縦基本は、そう大きく変わらない」
僕は今から、この瀕死のデザリアを操縦して、元気なデザリアを討伐する。
これが、頭が沸騰してる僕が思いついた策であり、丸一機分の
完全に頭が茹だってる。正気じゃない。けど、一応の勝算はある。
まぁ、そもそも瀕死のこの子がマトモに動けるかどうかは正直賭けなので、そこで躓いたら仲良く殺される羽目になる。正直、部の悪い賭けだ。
「人生初めての賭け事がこれなのか……。はは、僕はきっと、ギャンブルの才能は無いな」
チラッと燃料計を見れば、驚異の3%。
…………3%!? え、3%なのッ!?
そりゃぁさっき食べさせた微量の、ゴミみたいな量の
それにしたって少な過ぎない!? 本当に本当の瀕死じゃんこの子!
ああ、でも、そうか。うん。そうだよ、この子瀕死なんだよ。うん。
エネルギーが3%しか無いからこそ瀕死なんだ。だから僕を襲え無かったんだ。むしろ当たり前か。ちょっと納得した。
つまりこの子は餓死寸前で、だけど餓死はしてない……!
「なら、行けるでしょ!」
餓死寸前でボロボロの体に、僕は今から鞭を打つ訳だけど、君も生きたまま食われるか戦って死ぬか、どっちが良いかって聞かれたら、多分きっと、後者だよね?
「た、頼むよ? 頼むから動いてくれ……」
この子が動かなかったらその時点で終わりだ。今更もう逃げられない。元々無理だったけど、これで完全にアウトだ。隠れてやり過ごす選択肢すら消えた。既にそんな時間残ってない。
足跡が近付いてくる。もうすぐそこに居る。あと一歩、もう少しで姿が見える。
ガション、ガションと音がして、瓦礫の陰に新しい影が差す。
「……今だぁッ!」
僕はフットレバーを蹴り込んで、瀕死のデザリアに前進を入力する。これで動いてくれなかったら死ぬ。
-ギギガガギャァィイイ……!
けど、賭けに勝った。動いてくれた。
そして、この子は今だけ、ちゃんと僕に従ってくれるらしい。場違いだけど、凄く嬉しくなった。
「行っくぞぉぉおおおおおッッ……!」
叫ぶ。叫んで恐怖を誤魔化し、勇気を心臓に捩じ込んで自分を騙す。
耳障りな金属音がギャリギャリ響いて、瀕死のデザリアは駆動してくれた。全身が錆び付いて居るんだろうか?
動きが鈍い。だけど奇襲は成功して、この子を食べに来た元気なデザリアの横っ腹、角から姿を表した側面に食い付けた。
「短期決戦!」
この子にはエネルギーがもう、3%しか残ってない。出せる出力もゴミみたいなもんだ。
シザーアームも片方無いし、脚も数本無いしで、とにかくパワーも手数も足りない。足が減ってて踏ん張れないのに、踏ん張った先に使うシザーアームも片方無いんだ。正直悪夢だ。もう少しマシな姿で瀕死で居て欲しかった。
こんな状態で時間をかけてたら、同種の
奇襲のアドバンテージを活かしたまま、不利になる前に終わらせるしかない。相手が仕切り直した瞬間、僕とこの子の死が確定する。
「押せ押せ押せぇぇえー!」
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