悩む。
僕は孤児だ。町に戻って人手を集めたとして、この鉄塊の権利を大きく主張出来る訳が無い。
そう言うのは信用がある人が信用してる人に対してやる物だ。孤児が適当にそんな事をすれば、手に入るはずだった利益の殆どを持って行かれてしまう。
「さて、どうしようか……?」
幸い、コックピットのキャノピーが割れて、中に入れそうだ。なら、自分で動かして町まで持って行く?
長く乗る訳じゃない。町まで持てばそれで良い。
もしかしたら、こんな瀕死でもコックピットからの操作なら動くかも知れない。
どっちにしても死ぬなら、有意義な死に方を選んでくれる可能性も…………。
「いやいや、ダメだろ。そんな運び方して、他の元気なバイオマシンに目を付けられて襲われたら、そのまま死んじゃう……」
デザリアに限らず、バイオマシンは同種の仲間にも大して仲間意識を持たない。そしてバイオマシンの主食は
瀕死のデザリアなんて、どのバイオマシンから見てもノーリスクで食える美味しい餌だ。
ボロボロで瀕死のデザリアなんか乗ってたら、同じデザリアに見付かるだけで食い殺される。コックピットに乗ってる人間なんて考慮しない。
と言うか基本的に現代人は殺されるから、ついでにグシャッとされるに決まってる。
つまり、乗って帰るのは控え目で大胆な自殺だ。ナシだ。
「……どうしようかなぁ。諦める手は無いもんなぁ」
それだけは無い。これだけの量の
砂漠の生活は大変なのだ。水も塩も、生きる為に必要な物資は当たり前に高額で、金の稼げない孤児はあっと言う間に渇いて死に絶える。
民間レーションにミネラルは入ってるから塩は除外出来るとしても、砂漠で人間が一人、一日に生きる為に必要な水がボトル三本。一本七シギルだから、二一シギル。子供だと二本で済むから一四シギル。
そこに一日二食、出来れば三食分の民間レーションで三シギル。計一七シギルあれば、砂漠の孤児はギリギリ生きて行ける。
僕がこうやって危険な砂漠を彷徨うのも、それがお金になるからだ。
バイオマシンの残骸、
具体的に言うと、僕みたいな子供が背負える粗末な背嚢を、
普通の大人が普通の給料で普通に働いた場合、月に一五○○シギルから三○○○シギルくらい。
つまり、僕みたいな孤児でも、背嚢を
もっと言うと、砂漠に転がって品質ガタガタの、文字通りに「鉄クズ」の状態の
だからこそ、僕みたいな子供が運べる程度の量でも、砂漠で生きて行ける。きっと、こんなに水が高く無い場所だったなら、もっと楽に生きて行けた。
僕はそんな風に、毎日必死で
ろくに
僕だって出来るなら、
「……一旦隠して、町に戻ってから何か考えようか?」
此処で日に当たりながら長考しても、意味が無いように思えて来た。
ターバンの中が蒸れるし、このまま陽射しに晒され続けるのも正直、普通に命が危ない。いくらナノテクノロジー由来の服だって、限度がある。
この場所が瓦礫の陰とは言っても、その影を殆ど占有しているのは瀕死のデザリアだし、日陰でも気温はバカみたいに高いし。
「いやでも、町に戻ってる間にこのデザリアが死んだら、
僕は、どうすれば良いんだろう…………。
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