瀕死の死神。
「……うわぁ、デザリアの死骸とか初めて見た」
見た瞬間は死ぬほど驚いてしまった僕だけど、でも良く見るとその死神はボロボロだった。
「…………えっ、うわっ、コイツ生きてるっ!?」
さらに良く見ると、その死神はまだギリギリ生きていた。
砂漠と荒野と遺跡の境目。良くバイオマシンの残骸が転がってるこの場所で、崩壊した遺跡の瓦礫を避けて日陰に回り込んだ僕は、そこに居た瀕死のデザートシザーリア。
デカい。
ただデカい。本当に生き物なのかと疑いたくなる鉄の塊だ。
反った時の尻尾を除けば、体高は恐らく四メートル程か。全長も尻尾を除いて十メートル前後はあって、そこに五メートルは超えるだろう長さの尻尾が備わった大きなサソリ型バイオマシンだ。
砂色の塗装がアチコチ剥げてて痛々しい。経年なのか、戦闘の余波なのか、素人の僕には判別出来ない。
所々は鋭角だけど、基本的には丸みを帯びた生物的なデザインに見える。デカくて怖いけど、カッコよくて、可愛くもある。そんな風に見えた。
「す、凄い。丸一機分の
だからこそ僕は砂漠でも生きて行ける。ちょっとの
今更だけど、いくら何でもボトル一本で七シギルは高過ぎるだろ。塩だってパック一つで四シギルは持って行かれる。ふざけてる。
まぁ塩なんて民間レーションがあれば要らないんだけどさ。
「これだけ
見付けたデザートシザーリア。略してデザリアと呼ばれがちなコイツは、本気を出せば僕なんて一秒もかからずに殺せる怪物だ。けど、目の前に居るデザリアは本当に瀕死に見える。
背中に見えるコックピットのキャノピーなんかバリバリに割れて跡形も無く、右の鋏は良く見ると根元から折れてて動かせそうに無いし、脚も右の一番後ろと左の真ん中がベッキリ折れてる。
勿論、こんなボロボロの状態だろうと、僕を殺す程度の事は簡単だ。相手はバイオマシンなんだから。だけど、このデザリアは本当に限界みたいで、錆びたのか何なのかギシギシ言う体を満足に動かす事も出来ずに、僕に向かって残ったシザーアームを向ける事すら出来てない。
「ほ、本当に瀕死なの? うわぁ、こんな幸運ってホントにあるんだ……」
燦々と照り付ける陽射しに焼かれながら、僕は降って湧いた幸運にはしゃぐ。
だって、こんなに巨大な鉄の塊を独り占め出来るし、このデザリアはまだギリギリ生きてるから、生きた
一シギルあったら最低グレードの民間レーションが一つ買える。つまり一食。
普通の、水道が通ってるごく普通の都市だったら水もタダで飲めるし、一日三シギル、少なくとも二シギルはあったら食って行ける。最低限の栄養は口に出来る。
それが、
「…………いや待てよ? 死にかけなら、もしかして
死にかけのデザリアから剥ぎ取るのだ。もしかしたら本当に、
「……いやダメじゃん。こんな量の金属、どうやって持って帰るんだよ。…………僕はバカなのか」
良く考えれば、僕はどうやってこの巨大な鉄塊を持ち帰る気なんだ? 浮かれ過ぎて皮算用が過ぎる。
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