第7話 昨日の敵は今日の友
「連合評議会東部軍所属のレオ・ロレンス大尉だ!あんたら見たところ日本軍とドワーフのようだが……?」
レオ大尉は警戒しつつ尋ねる。
「私は日本海軍連合艦隊司令長官山本五十六大将です。貴官が警戒するのも分かるが我々はこの世界でドイツと共に、ある気はない。」
「自分も長官の意見と同意であります。日本陸軍曹長田辺敬三です。」
俺はレオ大尉にそう答えた。
「そういう訳だ。ドワーフ族のハインツだ。」
「あんたがハインツか。うちのボスのシンシア様からの親書だ。評議会への協力要請だ。来ていただきたい。」
「アドミラル山本と曹長殿の話もとりあえず信じましょう。私は元英国軍所属です。貴方達に思うとこがない訳ではありませんが、私情を挟める状況ではありません。」
「状況はかなり切迫してるということかな大尉。」
山本長官が訊ねる。
「その通りです。この森も安全ではありません。隣のフェード王国にもドイツ軍の親衛隊が主体となって建国したアーリア帝国が迫っています。国境を面するペンドラ国政府は評議会本部のあるセントラルに亡命しました。現在は親アーリア派の傀儡政権が実権を握っています。」
レオ大尉がそう話した。
「こんなとこで立ち話もなんだ。椅子とテーブルのあるところで話さないか。」
ハインツが提案する。そうして皆ぞろぞろと移動し始めた。
死んだ仲間の死体を持って。
「家の近くに埋めてやろう。簡素なものだが墓石も用意しよう。」
「感謝するよ。俺はマークだよろしく頼む。俺たちは仲間を弔ってくるよ。」
合流したマーク達は仲間を弔うために家から少し離れた開けた場所へ行った。
「ナターシャ無事かい!急ですまないがお客さんだよ。カップは足りるかな。」
ハインツがそういうとナターシャが家から出てきた。
「私は大丈夫だけどお父さん達も大丈夫だった?敬三怪我なはない?」
ナターシャは俺の体をペタペタ触る。
「大丈夫だ。エルフやお父さん達が殆どやっつけてくれたからな。皆にお茶でもだそう。」
「わかったわ。挨拶が遅れてごめんなさい。ハインツの娘ナターシャです。」
そう言ってレオ大尉達に挨拶した。
「連合評議会のレオ・ロレンス大尉です。よろしく!ほんとにハインツさんの娘か?」
「ワシの娘だ!母親似なんだよ。」
ハインツが拗ねたように話した。皆が笑った。
俺はナターシャと一緒に家の中へ戻りお茶の準備を始めた。
「さて、皆かけてくれ。趣味で作った椅子が沢山あって良かったよ。」
ハインツがそう言って皆に勧めた。
「それでレオ大尉。ハインツ親子はさておきキンバル移動後の私と田辺曹長の処遇はどうなる。」
私はレオ大尉に尋ねた。
「悪いようにはしません。実はフェード王国にも日本軍の方がおります。そちらに行ってもらうかもしれません。シンシア様次第ですが……。」
「敬三曹長は兎も角。私は歳をとってるし海軍軍人だ。丘では役に立てるかどうか……。」
「フェード王国には海軍が新設される予定があります。フェード王国にいくとすればそこに向かうことになるかと。」
「正直な話フェード王国の造船技術はどれほどのものかね?」
茶を持ってきた田辺曹長とナターシャを交えて話は進んだ。
レオ大尉はお茶を1口啜ると話した。
「正直言いますと大型艦船に対するノウハウもありません。準弩級戦艦が作れればラッキーくらいに思って頂ければ。」
「アーリア帝国の海軍力はどうなのかね?それにもよるが。」
「ペンドラ国の海軍を接収したものがあります。蒸気船で前装式の単装砲を積んでます。それが戦艦5隻、巡洋艦10隻小型艦船多数これは漁船を改造した上陸艇などですね。」
「うむ……。レシプロ機関の船か。砲に関しても古いようだが評議会の戦力はどのくらいかね。」
「機械化部隊はなく歩兵のみです。フェード王国には砲兵部隊があるようですがはっきりいってアーリア帝国に比べて技術的には半世紀近く遅れています。」
レオ大尉がそう言う。
「それでは戦線の維持は不可能ではないか?」
「我々の世界にはなかった兵科があります。魔法使いです。数は少ないですか機械化部隊の代わりにはなります。」
私は笑いながら
「それは冗談かね?」
といった。レオ大尉は真面目な顔で
「冗談ではありません。私もここに来た頃は冗談だと思ってましたよ。ほぼ寝たきりで車椅子の老人がフェード王国の最終兵器なんですよ。」
「オーギュスト・ピエール・ロマノフスキー魔法師団長 彼が我々の最終兵器です。」
フェード王国 東部 ウォール川付近
爆発音が鳴り響き鉛の雨が降り注いでいた。俺は河岸に作られた塹壕に身を縮こませ震えていた。
「俺、もう死ぬかも……。」
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