第6話 提督の転生

1943/4/18 ソロモン諸島ブーゲンビル島上空


「敵機!!後ろに回り込まれるぞ!!」


機銃手か必死の形相で機関銃を撃つ。2機の一式陸上攻撃機は数機のP-38に攻撃されていた。ラバウルからブーゲンビル島は日本の防空圏内のはずだった。完全に不意を突かれる攻撃であった。


「発動機被弾。高度が維持できません!」


操縦士がそう叫ぶ。


「いかん!長官をお守りしろ!」


機体が落ちていく中、周りにいた軍医を始めとした者たちが長官に覆いかぶさった。


凄まじい衝撃の後長官と呼ばれた男の意識は消えた。


「どこだここは……。森の中だと?」


私はブーゲンビル島上空にいたはずだった。気がつくとこの森の中に立っていた。


「ここがあの世なのか……?地獄には見えないが。」


暫くあたりを探索する。赤道付近の島にいたはずだったが周りは苔むした原生林のようだった。


「少し肌寒いくらいだな..。」


私はそうつぶやいた。


30分程さまよった時だった人の声が聞こえた。背の低い西洋人と日本人らしき男が畑を耕しているようだった。


「ごめんください。道に迷いましてこちらはどちらでしょうか。」


私が声をかけると背の低い男は何かを呟き、日本人風の男は直立不動で敬礼をした。


俺とハインツが畑を耕していると声をかけられた。顔を上げて見てみると海軍の軍服を着た男性だった。階級章は大将だった。俺は慌てて敬礼をした。それを見た大将は返礼をしながら


「君も日本帝国軍人かどこの部隊かね?」


「ハッ!陸軍南方18師団第二歩兵連隊所属田辺敬三曹長であります!」


俺がそう答えると


「そうか。私は連合艦隊司令長官の山本五十六大将だ。ところでここは何処なんだ。君の所属していた部隊はどこにいった。」


俺が答えようとするのをハインツが遮った。


「そこはわしが答えよう。まずここが何処からだが...」


ハインツは俺が初めてここに来た時のように説明をした。


「そうか……。独国の一部の部隊が国を作ったのか。奴らめ今度はエルフやドワーフという標的を見つけたか。田辺曹長はこれからどうするつもりだ。」


「自分は今はハインツの家に世話になっております。私もこれからどうしていいか……。独国はかつては同盟国ですがエルフやドワーフに対する非道は許せません!」


俺はそう答えた。


「ふむ……。おそらく我々のような転移者が他にもいると思うんだが。」


長官が長考していると銃声が聴こえた。


「敵襲か!」


長官は懐から拳銃を取り出す。


「ナターシャ!家の鍵を掛けて隠れていろ!」


家の方にいるナターシャにハインツが叫ぶ。ナターシャは返事をすると家に隠れた。


「あっちの方だな……。慎重に行くぞ。」


大口径のマスケットと斧をぶら下げたハインツに俺と長官は続いた。


「アーリア軍の偵察部隊です!」


エルフの兵がマークに伝える。


「レオ!俺たちは木の上に上がるぞ!弓で強襲する。敵の陣形が崩れたらマスケットの一斉射で仕留めてくれ!」


「了解した!オリファー、ベント、マック行くぞ。」


俺たちは息を殺しながら森の中を進んだ。少し行くと10名に満たない。小銃や短機関銃を持ったアーリア兵達がいた。


俺は手で合図を送ると木の上のマーク達は一斉に弓を射った。4人のアーリア兵が喉や胸を射抜かれて倒れた。


「敵襲!!木の上だ!」


「ズドドドド」短機関銃をアーリア兵が連射する。直ぐにマーク達は木から木へ飛び移り逃げた。エルフ兵のひとりが撃たれて木から落ちた。


「ぐぁ畜生!撃たれ……!」


木から落ちたエルフ兵は小銃を持ったアーリア兵に脳天を撃ち抜かれ事切れた。俺達はその隙にほふく前進で可能な限り距離を詰めた。


「撃てぇ!」


俺はそう叫ぶと「バン!」というけたたましい音と煙をたてて弾丸が発射された。2人のアーリア兵が倒れた。


しかし「ズドドド」という音と共にベントが倒れた。


「ベント!畜生撃ち漏らしたか!」


アーリア兵は3人残っていた。


俺は手投げ弾をぶん投げると爆発でひるんだ敵に迫りラッパ銃を撃った。「バン!」「パン!パン!」「ズドン」銃声が複数きこえた。


周りを見ると日本兵と将官らしき男、ドワーフが銃を構えて立っていた。


このドワーフこそシンシアの求める武具職人ハインツだったのだった。

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