第4話 WelcometoHell
城塞都市キンバル近郊上空
飛行軍艦プリンツ・オイゲン
「ブリッジ高度1000を維持しろ。降下猟兵は降下準備を開始!いいな訓練通りやればいい。」
アーリア帝国軍の指揮官フュラー大佐は真下に広がる森を見つめていた。
「まさか奴らも上から敵が来るとは思うまい。」
「一方的な戦いになるでしょうな。エルフ共を大量に捕獲出来そうですな。」
副官の男は微笑みながら言う
「我が国は建国したばかりで資金が不足しているからな…。エルフを諸外国に売り払って外貨を獲得しなければならない。」
「ハッ!肝に銘じております。」
「兵達の士気はどうだ?」
「士官クラスはドイツまたは先のクーデターに参加した者を配置しております故に士気は高いです。しかし下士官の中には新兵も混じっているので若干の不安があります。」
フュラー大佐は副官の意見に若干の不安を覚えた。だが賽は投げられたと思い。その不安を頭の奥へしまい込んだ。
「第1小隊降下開始します!全員俺に続け!」
降下猟兵30名がキンバルの街に向けて降下して行った。
兵士たちは地表付近で風魔法を唱えるかスクロールを使って風を起こして反動を殺して着地する予定だった。
「風よ!風よ!」
一人の新兵が降下して間もなく風のスクロールを唱える。
「早すぎるぞ!上等兵!落ち着くんだ。」
小隊長が諌めるが。スクロールの効果が切れてしまう。
高度はまだ高い。
「うわあああ!くそ!風よ!風よ!」
新兵はスクロールを持って必死に唱える。どんどん高度が下がっている。
「うわあああ!隊長ー!」
全員風魔法を唱え始める。皆が勢いを殺して着地する中新兵はそのまま地面に落下した。
「各分隊は予定通り攻撃開始!通信兵は本部との回線を確保!」
小隊長が号令を掛ける。小隊長は通信兵から通信用の水晶を受け取る。
「本部!降下完了。新兵が1名降下中の事故で死亡しました。他29名は全員無事降下しました。作戦通り攻撃を開始しました。」
「こちら本部了解した。速やかに敵陣を制圧せよ。くれぐれもエルフ共は生け捕りにするように。」
そう言って会話は終わった。
「上等兵の遺体は作戦終了後に回収しろ。」
小隊長は目を見開いてこと切れている上等兵の遺体の瞼を閉じた。その後、遺体に向かって敬礼をした。近くにいた兵達も倣って遺体に敬礼する。
小隊長は短く十字を切り、眉間に皺を寄せながら
任務へと戻った。
他の分隊から報告が入った。
「隊長、妙です。エルフ共どころかドワーフ1匹いません。どこの家も無人です。」
通信兵からも報告が入る。
「本部施設と思われる建物に入った第2、第3分隊から報告です!エルフ共は確認出来なかったとの事です。引き続き索敵を続行するそうです!」
「何だと……。奴らは何処へいった!どこに隠れた。通信兵本部と繋げ。」
「本部こちら第1小隊。エルフ共どころかドワーフ1匹いません。目下捜索中、指示を求めます。」
小隊長が指示を本部に仰いだ。その報告はフュラー大佐にも伝わる。
「なんだと!エルフ共が居らんだと!」
フュラー大佐が怒鳴る。副官は
「ハッ!家屋は何処も無人だそうです……。」
「捜索しろ!何としてでも見つけ出せ!」
フュラー大佐は副官にそう告げた。
「対地監視班!何か地上に変わった動きはあるか。」
地上を監視している対地監視班にフュラー大佐が問う。
「いえ、特におかしな点は見受けられません。魔導師に生命探知もさせましたが、降下猟兵以外の人型生命は居ないそうです。」
突如本部の建物から日が上がる火達磨になった兵士が入口から出てきてのたうち回った。
「なんだ、何が起きている。状況報告急げ!」
フュラー大佐は副官に問う。
「街のあちらこちらから爆発が起きています!外に出ようにも火に囲まれており脱出も困難です。」
副官がそう答える。
「クソっ!高度をあげろ。火災に巻き込まれるぞ。」
「兵を見捨てるのですか!」
副官が詰め寄る。
「馬鹿者!このまま高度を落としたら兵達も俺達も火達磨になるぞ!一度退避する。壁の外に着陸して鑑に残った兵力を再編成する。」
フュラー大佐がそう言うと
「分かりました。。操舵手高度を上げろ!」
副官が指示を飛ばす。
突如、プリンツ・オイゲンに衝撃が走った。
「今度はなんだ!」
「報告します。エルフと思われる軍団が壁の上から魔法で強化したと思われる火矢を放ってきてます。艦内で火災が発生しております。高度を維持できません!」
下士官が報告してくる。
「とにかく壁の外へ降りるぞ!白兵戦用意!」
艦長の指示で人員が慌ただしく移動する。
「艦長!!前方からロケットが!」
「何……!」
艦長が壁の上を見た。
「くたばれ。ナチス野郎!」
レオ大尉が艦橋目掛けてバズーカを発射した。弾頭は艦橋に命中しプリンツ・オイゲンは沈んだ。
そして城塞都市キンバルは灰となった。
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