第3話 災いの前兆

「そいつらは俺がいた国と同盟国だった国だ。」


「なんだと。ではお前の仲間なのか!あんな残酷な奴らが!」


ハインツが俺のな胸ぐらを掴む。


「どんな奴らかは詳しくは俺も知らない。金髪で鼻が高い奴ら俺達とは人種が違うし所属する国も違う。国同士が同盟してるという事だよ。」


「そうか。奴らは残虐だ。ドワーフを女子供見境無く殺りやがった。」


「少なくとも俺はそんな事はしない。俺は戦場で病気に罹って死んだんだ。俺達の軍隊では投降するくらいなら自決しろ玉砕しろという風に教えられたからな。」


「ジャングルで敵に追い詰められ飢えと病魔にやられて皆死んだ。」


俺は自分がどのようなところに居たか話した。


「お前の国は狂ってるのか。撤退はしなかったのか。」


「死守せよと言われれば撤退はできない。転戦しても撤退はありえん。言い方が違うだけかもしれないが。周りは敵だらけ撤退も出来なければ降伏できない。」


「お前も若いのに苦労を。。いや言葉では表せんよ。済まなかったな。」


ハインツは手を離した。


「いや良いんだ。此方こそ助けてもらったのに素性すら話さず申し訳なかった。お互い気の毒だと思うよ。」


「然し鉄砲か。俺達の世界じゃ五月蝿いし命中率が悪くて大して普及せんかった。猟師が使うくらいだな。」


ハインツは拳銃を見ながら言った。俺達は家路についた。


家に帰るとナターシャが出迎えてくれた。


「おかえりなさい。ご飯出来てるわよ。」


そうして一日が終わった。ハインツとは衝突もあったがお互い分かり合うことが出来たと思う。俺はこの世界でのこれからの身の振り方を考え始めた。




エルフの国 アデルレード 城砦都市キンバル


レジスタンス詰所


「レオ隊長。アーリア帝国の斥候を発見しました。西の森の出口付近にいました。どうしますか。」


通信用の水晶に連絡が入る。

「森に入ったら殲滅しろバレずにな。装備の回収も忘れずにな。」

そう言って俺は通信を切った。


エルフの様な金髪碧眼だが耳が尖っていないこの男は異界からやって来た異界人だ。


「ここでも奴らと戦う羽目になるとはな。」


俺はレオ・ロレンス大尉。1944年のノルマンディーに居たはずだったが気付けばここに飛ばされていた。紆余曲折あってエルフの他アーリア帝国に抵抗する者がいる評議会軍に所属している。


「然し剣と魔法の世界とはガキの頃読んだ絵本の世界だな。」


俺がボヤくとエルフのマークは


「俺達から言わせて見れば鉄の弾を飛ばす武器だの空飛ぶ乗り物の方が非現実的だよ。」


「恐らくだが奴ら持ってるぜ鉄砲も戦車も恐らくアーリア帝国軍の母体となってるのは武装親衛隊だ。」


「すぐにここまで来るぞ奴らは市民の避難をさせておいた方がいい。」


「ここが落ちるというのか!堅牢な砦に囲まれている。あれはドワーフの力も借りて作った砦だぞ!結界もある奴らは辿り着けやしない!」


俺の忠告に対してマークは異議を唱える。


「普通に平地を来るんならな。空から来たらどうだ。」


「まさか…例の空飛ぶ乗り物か!」


「そうだ。盤上の戦いなら此方にも利があるが三次元的な動きをされると話は別だ。」


「なるほどな異界人。だからと言ってはい、そうですか逃げようと言う訳にはいかんのだよ。」


俺達の話を聞いていたのはこの街の長であるシンシアという長老の女エルフだった。お付の騎士2名を引連れて俺の前に立っていた。


「あまり時間が無いのだな。策が欲しい知恵を貸せレオ。」


シンシアが俺に言う。お付の騎士は俺を懐疑的な目で見ている。


「空からの攻撃を防ぐ手立てはありますか?」


俺が問う。


「魔法使いを集めて上空に火炎魔法を放つ位しかないな。」


「ダメです射程が短すぎます。街に兵を入れたら終わる。それまでです。」


俺が言い切ると。


「そもそも空から敵が来ると何故言いきれるのだ!どうにも胡散臭い!兵が降りてくれば我々が斬り捨てる!」


お付の騎士がそうまくしたてる。


「無理だな。斬り掛かる前に穴だらけにされるぜ。」


俺が鼻で笑うと騎士は俺の胸倉を掴もうとした。それをシンシアに諌められる。


「策は全く無いのか。」


「一つだけあります。民の命は助かるが街は壊滅する。。」


俺が言うと。


「聞こう。話せレオ。」


シンシアは俺の目を見つめそう言った。俺が策について話すと皆驚愕の表情を浮かべた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る