第2話 異界から齎された物
「なんだと!では何故俺を助けた?」
俺が問うと。
「奴らは金髪で背が高く鼻が高いエルフに少し似た奴らだった。お前は黒髪で鼻が低い丸腰のガキだったからだよケイゾー。」
笑いながらハインツは言った。故郷にいる親父を思い出し目頭が熱くなった。俺は便所に行く振りをして庭に出て声を殺して泣いた。
「泣いているの?痛いところでもあった?」
ナターシャだった。
「いや大丈夫だ。なんでもない。」
俺は泣いてるとこを見られた恥ずかしさから顔を見られないように俯いて答えた。
「ちょっとしゃがんで。」
俺がしゃがむとナターシャはそっと俺を抱きしめた。
「大丈夫よ一人ではないわ。私やお父さんがいるものきっと助けになるわ。」
そう言って微笑んだ。俺は小さな声で「ありがとう」と言うと暫く身を委ねた。5分ほど経って俺は
「もう大丈夫だよ。ありがとうな。」
ナターシャは「一人で寝れる?」と言って悪戯っぽく笑った。
俺が笑って大丈夫だと答えると「おやすみなさい」と言って家の中へ入っていった。
俺が部屋に戻るとハインツは寝ていた。俺はハインツに毛布を掛けてやり部屋に戻って就寝した。
翌朝台所からの音で目覚める
「おはよう。よく眠れた?」
ナターシャが微笑みかける。
「あぁ、よく眠れたよお陰様で。」
俺は少し照れながら答えた。
「なんだ?随分仲良くなったな。なんかあったのか。」
起きてきたハインツがそう言うと
「別に何も無いわ。この人が悪い人じゃないってことがわかっただけよ。ほらご飯できたから顔を洗って来なさい。」
ナターシャはそう促した。
「ハインツおはよう。昨日は俺より先に潰れたな。」
そう言って俺が揶揄うと
「お前大して呑んでないだろ。便所に行ったきり帰ってこんから寝てしまったじゃないか。」
俺はすまんと謝ると身支度を済ませて食卓についた。
食卓には黒パンとジャムとスープが並んだ。飲み物は牛乳だ。
「そういえばお前のとことこっちで食い物に違いはないのか。」
「いや俺の国ではパンもあったぞ。主食は米っていう穀物が主だったがな。」
俺はハインツの疑問にそう答えた。
「そういえばなんで最初はハインツの言葉が分からなかったのに急にわかるようになったんだ?」
「あぁ。それはな昔から異界から来るやつが多くてな言葉が分からんと不便だからと言葉を翻訳する魔法が多く普及したんだよ。魔術師じゃなくても使える奴が多い。ひとつの言語につき1回唱えるだけで済むしな。」
ハインツはそう言った。
「なるほどなぁ。魔法なんて物語の中でしか知らなかったぞ。」
俺が関心していると
「異界から来た人は新しい技術や文化を持って来ると聞くのだけれど貴方は何か持っているの?」
ナターシャが目を輝かせて聞いてきた。
「そうだなぁこれくらいしか無いぞ。」
俺は腰に着けていた拳銃を弾倉を抜いた状態で見せた。
「なぁにこれ?」
ナターシャがキョトンとした顔で見ている。
「これは銃と言って簡単に言うとだ鉛の弾を撃ち出す武器だよ。」
「はぁ〜コイツがか俺らの街に攻めてきた連中もこれの長いやつを持っていたわい。」
ハインツが言う。
「もしかすると俺と同じ世界から来たのかもな。ごめんなこんな物騒な物しか持ってなくてな。」
「ううん。こっちこそ見せてくれてありがとう。」
ナターシャそう言うと拳銃を俺に返した。
「なぁそれ試しに使ってみてもいいかのう。」
ハインツが聞いてくる。
「いいが。危険なものだから人のいないとこで使おう。手入れしてないから上手く作動するか分からんが。」
俺たちは家から少し離れたところに来ていた。
「試しに撃ってみるぞ。」
スライドを引いて発射するとパンッの乾いた音と煙共に弾丸が発射され木に命中する。
「ほぉ〜どれワシにもやらせてくれよ。」
ハインツに拳銃を渡す。ハインツに撃ち方を説明してやると早速気に向かって撃った。
「なるほどな。弓やクロスボウより早く撃てて連射も効くこれは強いわなぁ。命中率も悪くない。」
「近距離ならな。長距離になるともっと長い銃を使うよ。」
俺がそう言うとハインツは
「それは見た事がある。あっという間に穴だらけにされて皆やられてしまった。鎧も意味をなさなかったな。」
「いったいどんな奴らなんだ?」
俺がハインツに問うと。
「なんでもアーリア帝国だのドイツに由来ある優良人種とか何とか言ってるのを聞いたぞ。」
元の世界では同盟国だった国の名前が飛び出してきた。
俺は自分の生まれた国について話す事にした。
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