兵士転移
@matunaga0079
第1話 異界から来た男
俺は熱帯のジャングルに横たわっていた。ジメジメした蒸し暑さと私自身の熱で服はじっとりと湿り不快だ。俺は病人だったが誰も私の汗を拭ってくれはしなかった。皆怪我人か病人だった。汗の匂いに釣られて群がってくる蚊を払う力さえ残っていたなかった。あまりの高熱で俺は意識を失った。
俺は目覚めた。気が付くとベッドの上だった。野戦病院の御座の上ではない。誰かが運んでくれたのだろうか。不思議に思いながらベットの脇のテーブルに置いてある水をゴクゴクと飲み干す。渇いた喉を瞬く間に潤した。ずっと飲まず食わずだった為生き返った気分だ。
「いったいここは何処だ。西洋建築の建物の様だが。。」
俺がキョロキョロしていると不意にドアが開いた。
俺の胸くらいの身長のガタイのいい髭面の男がこちら見ながら何か言ってる。心配そうな目でこちら見ている。
「あー、何を言っているか分からんがあんたが運んでくれたんだなありがとう。」
俺がそう言うと男はハッとしたように何かを唱えた。
「いやいやすまんな。言葉が違うことを忘れとったわい。これで聞き取れるか。」
「ああ。此処はどこなんだ。運んでくれたことは感謝するが回復した以上部隊に戻らなければならない。」
俺がそう言うと男は
「多分もう戻れんよ。此処はお前さんがいた世界とは違うたまにおるんだ。異界からやって来るもの達が。」
何を言っているだこの男は頭がおかしい奴に助けられてしまったのか。
「とりあえず状況がわからん外を見せてくれないか。」
「構わんよ。ほれ」そう言って男はカーテンを開けたそこはジャングルではなく。針葉樹が生い茂る森だった。そういえば蒸し暑さが全くなく寧ろ肌寒いくらいの気温であることに気づいた。
「どうだ。此処が異界であることが分かったか。自己紹介がまだだったな。ワシはドワーフのハインツだ。お前はなんていうんだ。」
「俺は田辺敬三という。ドワーフと言うのはなんだ人種か。」
「人種というかワシは人ではないドワーフという種だ。小柄だが筋骨隆々で鍛治や板金木こりなんかを生業にしてきた部族だな。」
「なるほどな此処にはあんた1人か。」
「いや娘と2人で暮らしとる。ナターシャ!例の兄ちゃんが起きたぞ!」
しばらくして顔出したのはハインツとは似ても似つかない栗色の髪を二つに結った可愛らしい女の子だった。
「えっと。こんにちは具合はどうですか?」
ナターシャはぎこちない様子で聞く
「あぁ、お陰様で大分調子が戻ってきたよ。ありがとう。」
会話が続かずしばし沈黙が流れる。
ハインツが「ンン!」と咳払いをすると
「よし!飯にしよう腹減ってるだろ。ナターシャ用意を頼む。」
俺は食卓に通された。テーブルには黒パンとスープ、卵を焼いたものに火を通したハムが並んでいた。
「大したものもお出し出来ませんが。良かったら召し上がってください。」
ナターシャは申し訳なさそうに言った。俺は
「とんでもない。肉に卵もあるじゃないか十分過ぎるよ。ありがたく頂くよ。」
「卵は鶏を庭で飼っててなそいつのだ。燻製肉は狩ってきた獣の肉を俺が加工して作ったもんだ口に合うか分からんが食ってくれ!」
「あぁ、頂くよ。いただきます!」
俺は少し酸味のあるパンをスープに浸して食べた。少し薄味だがハムの風味と野菜の旨味がしっかり効いており美味かった。
ハムは少し野性味のある味だが美味かった。卵は言わずもがなだ。俺はあっという間に平らげた。
「ご馳走様でした。美味かったよ。」
俺がそう言うと
「お口に合ったようでよかった。」
ナターシャは初めて微笑んだ。俺が釣られて笑うと顔を真っ赤にして「食器片しますね。」と言って背中を向けてしまった。
「そうだケイゾーお前こいつはイケるか?」
そう言って酒の入ったものと思われる樽を見せてきた。
「あんまり強くはないが少しだけなら付き合えるぞ。」
「よしよしじゃあ呑もう。俺の部屋にこいよ。」
木のコップを二つ持ってハインツの部屋に向かった。
「まぁやってくれ。」
そう言って俺のコップに並々と注ぐ。俺は礼を言って口をつけた。酒精が強い酒だった。内地でたまに飲んでいた焼酎よりも強かった。
「ゴホッゴホッ。強いな!だが美味いよ。」
「そうだろう!俺たちドワーフは大酒飲みだからな。俺が芋で作った酒だ。キツかったら水で割れ。」
1杯目は何とか飲み干し2杯目から水で割った。
「ハインツは何故森の中で暮らしてるんだ?」
俺は疑問に思っていた事を聞いた。他のドワーフ達とは暮らさないのだろうか。
「ふむ。実はなワシらも元は街で暮らしとった。しかしな5年ほど前かな人間の国が進行してきたのだ。以前まではワシらと人間は住み分けをしてお互い不干渉を貫いておった。しかし人間の王が倒され国を牛耳った奴らが人々を陽動して戦争をおこしたんだ。」
「いったいどんな奴らが国を牛耳ったんだ。」
俺が聞くとハインツは俺の目を見て言った。
「お前と同じく異界から来た奴らだよ。」
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