第36話 スライム洞窟のボス
『スライム洞窟』のボス、ビックスライムを目視できるところまで来ている。
図書館での情報でスライム、ロックスライム、ビックスライムの三種が洞窟内にいる事は知っていた。
『スライム洞窟』はビックスライムの討伐=洞窟を攻略した事になる。
なので、ビックスライムを遠目に見つけたタイミングで休憩することにした。
先程は鑑定もしていなかったので、とりあえずビックスライムを鑑定できる距離まで、気づかれないように近づく。
「《鑑定》」
――――――――――――――――――――
【名前】ビックスライム
【レベル】30
【HP】1240/1240
【MP】7140/7140 (+3000)
【攻撃】138
【防御】207
【敏捷】69
【魔攻】138
【魔防】207
<パッシブスキル>
【MPアップ3】
――――――――――――――――――――
いいね! ビックスライムはパッシブスキル【MPアップ】を所持していた。これはかなりテンション上がるな。既にダンジョンスキルの方は〈スキル玉〉で取得しているから無事に討伐できれば両方とも揃うな。
ステータスを見た感じだと防御特化だな。
ロックスライムと比べると防御は低いけどHPが二倍くらいあるからなかなか硬そうだ。
しかも見た目はスライムと全く同じだが、大きさが三倍? いや……五倍くらいある。
あの大きさだと短剣で核破壊は厳しそうだから正攻法でHPを削って倒した方が良さそうな感じがする。
ちょうど『重力支配』を色々と試したかったからそれについては良かった。
MPがパッシブスキルの効果もあって、飛び抜けて高いが……魔法スキルはないよな?
ビックスライムの攻撃に関しては、俺と比べて敏捷がかなり低い。五倍くらいの差があるし、今回は遠距離攻撃メインで戦う予定だから心配する必要はないだろう。
戦ってみないとビックスライムがどのくらい強いのかはわからないが、ステータスとか見た感じだと流石はスライムの上位種だ。
よし! 初上位種狩りだ! まずは不意打ちで魔法攻撃してから鑑定し、どれくらい削れたか? 確認してから考えよう。
「《
「ッッ!?」
土魔法で矢を作りビックスライムに当たる直前に重力魔法で重くした。
攻撃を受けた事でビックスライムはこちらの存在に気づき、ぶるんぶるんと大きく揺れた。なんか意味があるのか?
「《鑑定》」
――――――――――――――――――――
【名前】ビックスライム
【レベル】30
【HP】1240/1240
【MP】7043/7140 (+3000)
【攻撃】138
【防御】207
【敏捷】69
【魔攻】138
【魔防】207
<パッシブスキル>
【MPアップ3】
――――――――――――――――――――
……は? HPが1も減ってないだと? いやMPは減っている。もしかしてさっきのぶるんぶるんと大きく揺れたのはMPを消費して、HPを回復したってことだよな?
魔法のスキルは持ってなかった。そうなると、魔物専用スキルみたいなのがあるのか? それとも元からある能力なのか?
鳥が空を飛ぶようにスライムはぶるんぶるん揺れる事で回復するのか? 今までは核破壊で討伐してたから気づかなかったのか。
もし魔物専用スキルがあるのだとすれば、俺の持っている固有スキル【鑑定・偽装】では能力不足で確認できない。
もしくは人族は魔物を鑑定しても魔物専用スキルは確認する事が不可能で、人族でも取得できるスキルのみが確認可能とか。
機会があれば、魔物専用スキルについても一度調べてみるべきだな。
とりあえず、今は忘れて戦闘に集中しよう。
俺の魔攻の二倍近く、魔防があったとしてもダメージ0はありえない。軽減されても普通に考えてダメージ半減くらいだろ。
さっきと同じ攻撃して、ビックスライムがぶるんぶるんと回復行動を取る前に鑑定だ。
「《
「《鑑定》」
――――――――――――――――――――
【名前】ビックスライム
【レベル】30
【HP】1145/1240
【MP】7043/7140 (+3000)
【攻撃】138
【防御】207
【敏捷】69
【魔攻】138
【魔防】207
<パッシブスキル>
【MPアップ3】
――――――――――――――――――――
なるほど……同じではないがHPが95減っていて、MPの方が97減っているから誤差の範囲内だろうな。これで受けたダメージ分のMPを消費する事で回復するで確定だな。
そうなると正攻法で削り切るならビックスライムのHPは残り約8000となる。魔法だけの攻撃で削り切るのはMP的に厳しいよな。
俺の残りMPは14000ある程度で、もし魔法攻撃だけで削り切るなら16000以上はMPが欲しいところだ。
他の魔物なら頭や目などの急所を狙えば、魔攻と魔防にステータス差があっても問題なく倒せるけど、ビックスライムの場合は中心の核を攻撃しないといけないから厳しいな。
回復が思った以上に厄介だな!! 何か作戦を考えないと、討伐を諦めて帰るパターンも十分ありえる展開だ。
さて、どうするか……。
『スライム洞窟』に来るまでは土魔法攻撃を使う予定はなかった。だから大ダメージを狙える攻撃魔法は覚えていない。
俺が使えるのは本に書いてあった基礎的な土魔法攻撃の四種だけだ。
岩玉(ロックボール)
岩矢(ロックアロー)
岩槍(ロックランス)
岩弾(ロックバレット)
攻撃目的で土魔法を使うと思ってなかったから攻撃よりも防御、補助目的で使うことを土魔法に関しては考えていた。
すぐ使える四種の土魔法攻撃だと一番火力があるのは岩槍(ロックランス)だけど、この魔法は攻撃範囲が他の三種と比べて広い。
今の状況を考えるとMP消費的に攻撃範囲が狭い岩弾(ロックバレット)がベストな選択だと思っている。
岩弾(ロックバレット)は『魔弾系』と呼ばれる基礎的な攻撃魔法の土魔法だ。
『魔弾系』の攻撃魔法は少ないMPで急所を狙って大きなダメージを与えるのが、一番の目的で作られた魔法。
攻撃範囲をできる限り減らして、貫通力に特化した魔法だ。MP消費が少なくダメージが稼げるメリットはあるが、逆に攻撃範囲が狭いので、他の基礎的な攻撃魔法と比べても外しやすいデメリットがある。
今回の場合は動きが遅いビックスライム相手なので『魔弾系』の相性は良いだろう。
ビックスライム相手に使う土魔法攻撃は、岩弾に決めた。
次はどのように攻撃するかだ。
俺が考えているのは一箇所を集中的に攻撃して『魔弾系』の貫通力を生かして、核まで届かせる事でビックスライムを討伐する。
まずは一発撃って様子を見る。
「《
速攻で岩弾を四発撃てば、核まで破壊できそうだが時間が足りない。
三発なら回復される前に使えそうだが……四発目は厳しそうだ。
速攻で岩弾を三発撃ってから至近距離まで近づいて短剣を突き刺す。多少のリスクはあるが試してみる価値はある。
「《
「《身体強化》《加速》《縮地》」
「よっし!! ギリギリ届いたな」
ふぅー危なかった。魔物狩りで初めて全力に近い力を使って討伐した。
今回のビックスライム戦でいろいろと課題が見つかった。
土魔法攻撃をあまり練習してなかったから魔法の生成スピードが遅かった。魔法だけでは足りずに至近距離まで近づいて、リスク覚悟で短剣を突き刺して討伐した。
短剣の刃の長さでは核まで届かなかったから岩弾三発で空いた穴に、片腕を突っ込んで核を破壊した。
身体強化でスライムの消化対策は出来ていたので問題はなかった。もしスライムの行動が回復ではなく、攻撃だったら至近距離で受けていただろう。
スライムだしステータス的には同じくらいなので問題はなかったけれど、ステータス差があったら使えなかった戦法だ。
【土魔法】スキルを育てるだけではなく、しっかりと実戦で使いこなせるように土魔法攻撃を練習しよう。
初上位種戦で得られた物は予想してたよりも多くて大きかった。
明日は魔物狩りをせずに冒険者ギルドにある図書館で情報集め、今後の予定をじっくりと考えながら溜まった疲れを解消しよう。
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