第20話 最初の試練
教会を後にし馬車へと乗り込んだ俺と父上には、気まずい空気が流れている。
父上は御者に対し『例の場所でグランのレベルを上げる』と言っていた。なので、これから向かう先には、初心者向けの魔物がいるのだろう。
いつもの俺なら初めての魔物狩りだ! レベルアップだ! と喜んでいたのだろう。けど今の俺は違う何故なら――
時は選定の儀まで遡る。
「選定の儀を行います『我は神の代行者を任されし者、我の前に立つグラン・レイブンの力を解放し、神の祝福をお授け下さい』」
おお!! 強く光りだしたな。これでやっとレベルが上げられるし、重力魔法の制限も解除されるし最高だな。
強い光が収まって〈選定プレート〉を見てみるとグラン・レイブンと俺の名前が書かれていたのはいいんだが……名前の下には固有スキル【足手纏い】と書かれていた。
俺が戸惑っていると、神官も同様にやや戸惑いながら告げた。
「グラン・レイブン様は……神様から固有スキル【足手纏い】を授かりました」
「「ッッッ!?」」
「固有スキル【足手纏い】だと? このふざけた名前は……まさかカースなのか? いや……あり得ん!! グロース帝国建国以来、レイブン家からカース持ちが出たことはない」
神官が告げたことに最初は俺も父上も同じ驚きを示した。しかし、俺は神官の方へと視線を動かした瞬間から父上とは違うことに対して意識が向けられる。
慌てて〈選定プレート〉の前に来た父上が独り言を言っているが……そんな事は、今はどうでもいいんだよ!!
だって、俺の目の前には――
――――――――――――――――――――
[第一の試練]
・固有スキル【圧死奪纏】が【足手纏い】と本人以外の者には表示される。
・【足手纏い】について認識した者はそれがカースであると誤認する。
〈達成条件〉
[第二の試練]を達成すること。
――――――――――――――――――――
俺の固有スキルは【圧死奪纏】だ!!
【足手纏い】じゃない!! て言いたいけど誰にも言えない……最初の試練がこれかよ?
正直、試練の存在を忘れてたよ。転生してすぐの時は、どんな試練が来るのか? なんて何度も考えてたが……数年経っても試練が来なければ、選定の儀が終わるまではないんだろうな? て思って考えなくなった。
最初の試練については何度も予想した。
例えば、狩りを始めてから少し時間が経った頃に強い魔物が現れて、今の俺では勝てる可能性が低いから逃げようと思ったら……目の前に最初の試練が表示されて、戦わないといけない状況になるとか。
でも実際の[第一の試練]はなんだよ? 俺を周囲にカースだと認識させるものだ。
固有スキル【圧死奪纏】が【足手纏い】て俺以外に表示される? 〈選定プレート〉だと俺にも【足手纏い】て表示されてたけど……それは今回だけだろうな。
『少年の頼みごとを叶える為には、強くなる必要があると儂が話した。そうすると予想通り強力過ぎる固有スキルを望んできたというわけじゃな。
それで可能な範囲で強力な固有スキルを取得する為に、必死に交渉してきた。最終的には何とか上手く調整できたのじゃ! 感謝するのだぞ!』
――て言ってたよな。
【圧死奪纏】は記憶を封印される前の俺が神様と交渉した結果、いろいろと調整されて創られた特別な固有スキルだった。
いろいろと調整てのが『記憶封印』の代償とかに加えて神様の試練を乗り越えること。
もしかして、最初の試練についても交渉してたり? 転生前に読んだファンタジー小説の中に主人公がふざけた名前の力を授かる事で追放されたり、不遇になるのがあったな。
まさか、それを参考に【足手纏い】みたいなカース(呪い)ぽい名前を元にして、創られた固有スキルが【圧死奪纏】なのか?
しかし、転生前に読んだ小説とかなら思い出すことができれば、今でも普通に覚えているんだよな。代償の『記憶封印』てのは……本当に不思議な感覚だな。
まあ、考えても何も変わらないし固有スキルの名前については一旦忘れよう。
最初の試練内容は、俺が周囲に
実力主義国家グロース帝国でカースになるという事は力を持たない者になる。
つまり、周りから貴族としては認められなくなるということ。
そうなると、侯爵家長男グラン・レイブンである俺の立場はかなりマズい状況になる。
レイブン家に従える者達には、カース持ちだという目で常に見られる。更にレイブン家の当主である父上は俺と距離を取らないといけなくり、家族仲もどうなることか?
最初の試練は精神的になかなか厳しいものになるだろう。だけど俺自身は自分がカース持ちではなく、優れた固有スキルを持っていると知ってる状況なのは正直助かった。
それについても記憶が封印されていたら、心が折れる可能性も十分にあった。
他にも考えることはあるが、一番の問題は達成条件だな。[第二の試練]がいつから始まるのか? その難易度がどれ程なのか?
謎が多すぎる。
まさか選定の儀でこんな事になるとは思ってもいなかった。
今朝は『俺が転生した世界では、教会絡みの被害を受ける事は無さそうなので優秀な神様に感謝しなればな』と思っていたが……今は神様のこと少しは恨んでもいいよな?
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