第21話 ギフトとカース
選定の儀では、神様からの祝福として成人を迎えた者はギフトを授かる。
ギフトは大きく分けて三つある。
一つ目はステータスの解放――ギフトを授かるまでは確認できなかった。ステータスが見れるようになり、レベル、攻撃、防御、敏捷、魔攻、魔防の上限も解放される。
二つ目は固有スキル取得――固有スキルには【成長固有スキル】と【完成固有スキル】の二種類がある。
【成長固有スキル】の場合はステータスプレートで確認すると固有スキル名の横に数字で1と書かれている。最大で10まで上げることができ、また固有スキルがレベル10になると固有スキルが進化することもある。
【完成固有スキル】は名前の横に数字は書かれていない。固有スキルの効果により取得したスキルのレベルが上がることで間接的な成長はするものの、基本的には成長することはない。
ごく稀に特定の条件を達成することにより固有スキルが進化することもある。
三つ目は才能値――攻撃、防御、敏捷、魔攻、魔防のそれぞれに才能値が1から5までの五段階で才能が与えられる。
通常のギフトは『祝福ギフト』と呼ばれ、才能の差は大きくあるものの全員が恩恵を受けられる。
だが、ごく稀に『カースギフト』を授かりギフトで得られる固有スキル、才能値に悪影響を及ぼすことがある。
原因不明で貴族社会では、先祖の悪事を神が許すことが出来ず、神罰によって子孫の誰かが授かるギフトに悪影響が与えられていのでは? と考えられており、呪われた贈り物という意味で『カースギフト』と呼ばれる。
カースの歴史を見てみると、選定の儀以外でもカースになることがある。その代表例としては、二人の人物が歴史の書物などで多く語られている。
一人目の人物は、既に滅んだとある国の騎士団の一つで団長を務めていた者だ。
彼はとても残虐性の強い人で、騎士団に入隊した一番の理由が『合法的に多くの人を殺すことが出来るから』と語っていたそうだ。
騎士団に入隊してから数年が経った頃から隣国との戦争が始まった。
その戦争で相手の部隊を合法的に殺せることを喜びながら、彼は多くの兵の命を奪い――その戦果が国の上層部に評価されたことで騎士団長となった。
騎士団長になってから彼の残虐性は日に日に強くなり、盗賊や隣国の敵兵を殺すだけでは満足出来なくなっていた。
とある日、戦争で隣国にいた彼の部隊が、食料不足の理由で近くの村へと向かった。
最初の目的は脅して食料を奪うだけだったが、幸せそうに暮らす村人達を見て彼は――殺したいと思ってしまった。
人生で初めて大義無き虐殺を行った。
そんな彼にも一つだけ残されていた優しさがあった、子供は殺さないと。
それも時が経つにつれて少しずつ薄くなりとうとう子供まで殺してしまった。
その日から彼は呪われた。
多く敵兵を殺してきた騎士団長が、子供を殺した後から力を失ったことは、当時の貴族社会に『無実の子供を殺すとカースになる』と大きく広まったのだった。
二人目の人物は『原初の神官』が誕生してから約500年の時が経った頃に、とある教会の神官が己の欲に溺れてしまった。
この頃には、人々は魔物を倒す力を得たことで集団規模は小国と呼べるレベルにまで発展していた。
王、貴族、大商人など、権力を持った者達が集団の中で特別扱いされている。
そんな中、一人の神官は思ってしまった。『私は彼らよりも特別な力があるのに、なぜ彼らは私よりも贅沢をしているのだ?』と。
その想いが強くなると疑い始めてしまった――【神の代行者】の義務について。
悪事を働いてはならない。悪事を働いてしまったら神罰により【神の代行者】が消滅し、カースを授かる。
そんな事例は聞いたことがないし、こんな特別な力を持てば、誰だって上手く利用して己の欲を満たすだろう。
そうだ! 神など居ないのだ。 私は【神の代行者】などではなく、私が神になるのだ!
そして、彼は小さな悪事から少しずつ大きな悪事をする様になった。二年後に神罰が下され、初めての事例を作るまで。
神罰が下った後の生活は地獄だった。
毎日、気分が悪く殆ど動く事も出来ない。苦しみから解放される為に、自殺を決意して首を吊るも――死ねない。
神罰からちょうど一年間苦しみ続けた神官に神託が下された。
――――――――――――――――――――
堕ちた神官よ、お主に最初で最後の救済を与えよう。世界中の教会を周り、自身の罪を語り広める事でいずれ救われるだろう。
――――――――――――――――――――
それから神官は苦痛に耐えながらも、世界中の教会へ行き自身の罪を語った。
神罰が下されてから20年後、堕ちた神官はカースから解放された。
二人の影響力は強く、世界中にカースの存在が広まりカース狩り始まった。
しかし、すぐにカース狩りをする者は居なくなった。なぜなら、カース狩りをした者は全員カース持ちとなったのだ。
これらの歴史から実力主義国家グロース帝国では貴族に対し、いくつかのルールがカース対策で作られている。
1、成人前の子供を殺害してはならない。
2、カース持ちを殺害してはならない。
3、カース持ちが身内から現れても、保護者が責任を持って成人まで管理すること。
一つ目はいかなる理由があろうとも、成人前の子供を殺してはいけない。
これは貴族側に正当性があろうとも成人前の子供を処刑などで殺してしまえば、その貴族もカース持ちになる。
それは帝国貴族の一人がカース持ちになるだけでなく、その一族の子孫から新たなカース持ちが現れる可能性を作るから。
二つ目はカース持ちを殺害してしまえば、手を掛けた者が代わりにカースを引き受けることになるから。
歴史的に、カースを見てみるとカース=罪の償いとも考えられる。なので罪を償い切れてない状態で殺害すれば、その者が代わりに罪を償うことになる。
三つ目は成人前のカース待ちを社会に解き放った場合、誰も自分から関わろうとはしないので一人で生きていくのが難しい。
その様に考えると殆どの場合は、罪を償う前に亡くなってしまう。そうなった時に死の一番の原因は、成人前のカース持ちを社会に解き放った保護者となる。
実際の事例としても、カース持ちを成人前に家から追放した貴族の当主がある時を境にカース持ちとなった。
これらの事からカースに対するイメージは悪く、実際にカース持ちの扱いは非常に難しいものだが、どんな事にも例外がある。
それはカースから解放された者だ。
実はカースから解放された者は『堕ちた神官』以外にもいるのだ。
カースから解放された者は、元に戻る場合と特別な力を得る場合の二通りに分かれる。
その違いは簡単で自身の過ちで罪を犯し、カースとなった者と、先祖の罪とされている選定の儀でカースを授かること。
選定の儀でカースを授かった者は『呪いと試練を授かった』とも言われている。
ある少年は不幸にも、選定の儀でカースを授かってしまった。だが彼には強い意志がありカースを乗り越えようと努力した。
まず自分の先祖についての情報を調べ上げることした。それから数ヶ月の時が経ち、ついに先祖の罪を見つける事ができた。
それは大量殺人鬼だった。奪った命は100人を越えるとも書かれていた。
少年は決意した! 先祖が人の命を奪ったのなら、俺は人の命を助けようと。
それから約五年の時が経ち、少年はカースから解放され強力な力を手にした。
このカースに立ち向かった少年と『堕ちた神官』の事例からある予測が立った。
それは犯した罪の10倍の償いでカースは消えるのかもしれないと。
『堕ちた神官』が罪を犯した期間は約二年間で償い始めてから20年後に解放された。
カースを授かった少年も約1000人もの人達を助けた頃に解放されたと言われる。
この罪の10倍償えば解放されることは、カース持ちに取っては希望ではある。
だが殆どの者は先祖の罪が分からず、分かったとしてと償い切れずにそのまま人生を終えてしまう。
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