第14話 帝国城
レイブン家の別邸に着いた時刻は、日が落ちかけた夕方だった。レーヴァン領にある本邸と比べて別邸は小さいものの、内装は本邸以上に豪華な見た目だった。
到着後は用意されていた部屋で二時間ほど休み、夕食の時間となった。
「来たかグラン、馬車の疲れは取れたか?」
「だいぶ取れました。父上こそ大丈夫ですか? 全く休みも取らずに執務室で仕事をしてたんですよね?」
「問題ない。グランは初めてだから疲れただろうが慣れればあまり疲れん」
「そうなんですね。母上は大丈夫ですか?」
「ええ、問題ないわ。帝都に来るのは久しぶりだけど、馬車での移動には慣れてるからあまり疲れないわね」
「それは良かったです。そういえば帝国城にはいつ頃行くのですか?」
「三日後の昼過ぎだ。先程、皇帝陛下の使いの者から連絡があった」
「わかりました。礼儀作法などをもう一度、しっかり確認して緊張しないように心の準備をしときますね」
「グランちゃん、あまり心配しなくても大丈夫よ。まだ子供なのだから多少の間違いくらいは問題ないわ」
〜〜三日後〜〜
とうとう皇帝陛下への顔見せをする日が訪れた。昨日まではほとんど緊張していなかったのだが……今朝からは緊張して朝食もあまり食べることが出来なかった。
皇帝陛下に会ってしまえば、緊張が解けると思うが……帝国城へ行くまでの間は、胃がキリキリと悲鳴を上げている。
そんな事を思って馬車で移動をしてると――前方に大きな建物が見えてきた。
「母上、あれは何ですか?」
「土の闘技場よ」
「闘技場ではなく……土の闘技場で間違いないのですね?」
「ええ、そうよ」
「なるほど……土門、それから土の闘技場ですか。初代皇帝陛下のことが少しわかって来ました。まさかとは思いますが……あの大きさの闘技場が帝都には他にも?」
「帝都には全部で七つの闘技場があるわよ」
「そうですよね……初代皇帝は7ダンジョンに影響され過ぎてませんか? 六門、帝国七大騎士団、第七区画、七闘技場……他にもありそうですね」
前方に見える大きな建物は闘技場だった。大きな円の形をしている円形闘技場を馬車で迂回して先へと進む。
別邸の屋敷がある第三区画から第二区画へ入ってすぐに闘技場は目に入った。
母上から聞いた話によると第二区画には、第一区画にある無の闘技場以外の全ての闘技場があるそうだ。
闘技場は朝5時から昼の12時までの間は帝国騎士団が使用する。
土の闘技場では、土の帝国騎士団が午前中の間は訓練をしている。
午後は夜の7時までの間は、一般にも解放されていて誰でも自由に利用できるそうだ。
闘技場の位置は、土門から帝国城に真っ直ぐと向かえば、第二区画で土の闘技場の入り口へと辿り着く。
他の門も同様にそれぞれの門から真っ直ぐ帝国城のある方へと進めば、門と同じ闘技場へと辿り着けるようになっている。
闘技場が盛り上がりを見せるのは、やはり帝国七代騎士団の新たな団長を決める時に、開催されるイベントだ。
多くの観客が見守る中、次世代の騎士団長候補達が熱い闘いを見せる。 盛り上がることは間違いないし、実力主義国家――グロース帝国らしいお祭りごとだ。
「母上、あれが第一区画にある無の闘技場ですよね?」
「ええ、そうよ」
「なぜ馬車は迂回しようとせず、無の闘技城の入り口へと向かっているのですか?」
「あら? そういえば、言ってなかったわね。無の闘技場にはもう一つの名前があるのよねその名は――『帝国城門』よ」
「確かに闘技場の背後には、城らしき物が見えますが……闘技場が『帝国城門』だとは、流石に思いませんでした」
「前に私言ったでしょ? 『帝都も帝国城も見たら驚くわよ』て、グランちゃん感想は?」
「帝都も十分驚いたのですが……まさか帝国城の門で驚かされるとか予想できませんよ」
まさかの『帝国城門』が無の闘技場だとは思いもしなかった。
まず帝都に闘技場は一つで良いのでは? と思ってしまうし、帝国城の目の前に無の闘技場を作るとか普通ではない。
無の闘技場入り口近くで馬車は止まり、ここからは父上、母上との三人で徒歩で進む。
「うわッ! 闘技場は予想通りですが、本当に帝国城が目の前にあるんですね」
「ああ、私も初めて見た時は驚いたよ。本来であれば出口がある所に、帝国城への入口があるのだからな」
「入口の真上にあるのは演説場ですか?」
「そうだな。無の闘技場は国民への演説の場としても使われるが、まあ一番は《皇女の騎士大会》だがな」
「ここで行われるのですね……演説場の後ろにある階段を上がった先は皇族専用の観戦席と言ったところでしょうか?」
「ああ、皇族が招待した者も使うことは出来るが、基本は皇族専用の観戦席だ」
帝国城の色は白色だ。なぜ白色なのか? というと無属性を表す色が白だから。
7ダンジョンは、それぞれのダンジョンに特徴となる属性ある。
無属性の〈無のダンジョン〉
火属性の〈火のダンジョン〉
水属性の〈水のダンジョン〉
風属性の〈風のダンジョン〉
土属性の〈土のダンジョン〉
光属性の〈光のダンジョン〉
闇属性の〈闇のダンジョン〉
他の六属性の色は火属性が赤、水属性が青、風属性が緑、土属性が茶、光属性が黄、闇属性が紫となっている。
帝都にある〈無のダンジョン〉を表す為に帝国城の色は白色がベースとなり、それに加えて他の六属性を表す六色の色がバランス良く使われている。
そんな帝国城の入り口に辿り着くと、一人の騎士に対して父上が話し掛けた。担当の者を呼ぶように頼み、帝国城の中へと案内されるのだった。
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