第13話 帝都グローリア
「グランちゃん帝都が見えて来たわよ」
「あれが帝都ですか……」
「正面に見える大きな門あるでしょ、これから私達が通る土門よ」
「本当に領都レイブンの領都門から一本道で帝都の土門に繋がっているんですね」
「凄いわよね……六門の全てが一本道でそれぞれの領都門に繋がっているのよ」
「馬車の中で聞いた時は……正直疑ってましたが本当だったんですね。この一本道で門と門を繋ぐことを、初代皇帝陛下が拘って実現させたんでしたよね?」
「そうよ。初代皇帝陛下が突然『〈無のダンジョン〉がある帝都と残りの6ダンジョンがある領都門を一本道で繋ぐ』と言ったことで、仲間の1人が実現させてあげたそうよ」
「凄いですね。四侯爵家の領都門だと馬車で片道二週間ですよね? 光と闇のダンジョンでも一週間は掛かりましたよね? 当時は森や山などの障害物あったと考えると……作業にどれだけの時間が掛かるのか? 想像をするだけでも疲れてしまいますよ」
「それがね〜グランちゃん驚くわよ! たった六日なのよ」
「ッッは!? そんなこと……本当に可能なんですか?」
「実際に実現してるわ。規格外なのは、初代皇帝陛下だけではないのよ『神速の暴風姫』と呼ばれ、帝国七大騎士団の一つ風の帝国騎士団初代団長を務めた仲間も、飛び抜けた力を所持していたわ」
「どのような力ですか?」
「本に書いてあった事しか分からないのだけれどね。固有スキルが風属性関連だった事。その能力の一つが方向転換が出来なくなる代わりに、あり得ないほどの速度で移動することが出来るらしいわ」
「なるほど……制限がある代わりに強力な力を得るのですね。しかし馬車で往復四週間の距離を一日で移動して、更に作業まで終わらせるとは流石は初代皇帝陛下の仲間ですね」
帝都には六門と呼ばれる大きな門が六つあって、そのいずれかの門を通って帝都内に入ることができる。
六門は東が火門、南東が光門、南が風門、西が水門、北西が闇門、北が土門。
土門と領都レイブンの領都門は一本道で繋がっている。土門は〈土のダンジョン〉へと繋ぐ門という意味になる。
他の門も同様にそれぞれの門が、それぞれのダンジョンへと繋ぐ門になっている。
門が六つある帝都の形は六角形になっていて、それぞれの辺に一門ある事になる。
帝都の形は正六角形ではない。
東西南北それぞれの辺の長さを10とすると他二辺の長さは半分の5となっている。
なぜ辺の長さが違うのかというと、帝都からの距離の違いを表してるからだ。
「グランちゃん、土門の前でいくつかの列に分かれて並んでるけど違いわかる?」
「帝都に来た目的や身分の違いで並んでいるんですよね? 例えば冒険者なら冒険者の身分確認を担当している門番のところに並び、商人なら商人を担当している門番の列に並ぶということですよね?」
「正解だわ」
「あれ? 身分確認もせずに……土門通ってしまいましたが大丈夫なんですか?」
「土門で働いてる人でレイブン家の馬車だとわからない人は居ないから問題ないわ」
「確かにそうですね。顔パスは体験したことありましたが、馬車パスは初めてだったので驚いちゃいました」
帝都入りして一番最初に目に付いたのは、やはり馬屋や家畜小屋だった。商人や冒険者が一番最初に向かうところだし、門の近くでなければ臭い的にも問題があるからだろう。
この辺は、帝都でも領都レイブンでも規模の小さな町でも変わらない。
次に目に付くのは少し先にある沢山の宿屋、飲食店、酒場、屋台など、何処も凄く賑わってる。
更に進んだところには民家街があり、帝都の民が楽しそうに生活している。
「まだ入ってすぐなのに凄く賑わっていて、活気が伝わってきますね」
「領都レイブンも凄いけど……流石に帝都と比べると負けちゃうわよね」
「この先は何があるんですか?」
「次は第五区画だから少しずつ高級な宿やレストランなどが増えてくるわね。今いる第六区画とさっきの第七区画は庶民層向けな店が多くて、この先は裕福層向けな感じから」
「確かに身なりが良い人達が少しずつ増えて来てますし、建物も良くなってますね」
帝都内は第一区画から第七区画までの七段階に分かれている。
門に一番近いのが第七区画で、帝国城がある帝都の中心が第一区画となっている。
「グランちゃん〜次の第四区画は何があると思う? 分かるかな? 」
「そうですね……第五区画が富裕層向けだったので、第四区画は更に富裕層向けになるか貴族向けの区画になるとかですかね?」
「不正解よ。第四区画はね……グランちゃんにも、とっても関係している帝国学園がある区画だわ。15歳から18歳までの三年間は、第四区画にある寮で寝泊まりして、学園生活を送るのよ」
「帝国学園のある区画でしたか。確かによく見たら同じ格好をした10代の男女を見かけますね。15歳になったら自分もあの制服を着て学園生活を送るのですね」
「制服姿の学生を見ると思い出すわね。初めて会った時のラクサスも制服姿で、あの時のラクサ――」
「おい! やめろシオン……その話は」
「あら? ラクサス、書類仕事の方はもう良いのかしらね」
「帝国学園と聞こえてきてな……嫌な予感がしたんだよ」
「聞き耳を立てるとは関心しないわね」
「勘弁してくれ……それにもうすぐ第三区画だろ? 当主の乗った馬車が屋敷の前に着いているのに、いつまでも当主が出てこなくては執事もメイドも困るだろ」
書類仕事をしていた父上が戻ってきた。
恐らく第四区画が近くなった頃から警戒していたのだろう。
初日から何度も書類仕事をする父上に対しての母上の小さな反抗だ。恥ずかしい話をしようとして、それを父上が焦って止める。
初日は驚いたが、今ではすっかり慣れた光景になっている。そんな二人を大人しく見ていたら馬車は止まり、帝都にあるレイブン家の別邸へと到着した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます