第12話 魔物とダンジョン
「――こんな感じの国なのだよ」
「多少は知っていましたが……父上から教えられた帝国の歴史は驚きの連続でした。一番驚いたのは勿論、レイブン家の初代当主様が王族の一人だった事ですね」
「そうだな……私も先代から話を聞いた時は驚いたよ。初代皇帝陛下が王城を制圧後に、建国宣言で行った演説と同じような事をしたそうだ。その話を聞いた王族の中で一番理解を示したのが初代当主様だった」
「なるほど……反抗した王族は排除し、共感しない者には地位を与えずという事ですね」
「初代当主様は賢い選択をした。突然、現れた初代皇帝陛下の手によってあっという間に王城は制圧されてしまった。
ほとんどの者は状況が理解出来ずに反抗するか、混乱するかのどちらかだった。そんな中でも初代当主様は冷静に頭を切り替え、未来について考えることが出来たのだろうな」
「しかし一人で王国を滅ぼすとは……初代皇帝陛下強過ぎませんか? 他のパーティーメンバー六人も王国を滅ぼしてはいますが、初代皇帝陛下と比べてしまうと印象が薄くなりますね」
「初代皇帝陛下は帝国史の中でも一番規格外のお方だったからな。建国してから約700年ほど経つが、誰一人として初代皇帝陛下を越えることは出来ておらん。同世代最強となり、二代目皇帝陛下になったお方ですら、手も足も出なかったそうだ」
「帝国の皇族の中でも初代皇帝陛下は飛び抜けて強い方だったんですね。そんな方を越える人はこの先、現れますかね?」
「そういえば、今年選定の儀を迎えた第一皇子が噂によるとかなり優秀らしい。私が聞いた話だと『初代皇帝陛下を越えるので?』『初代皇帝陛下の生まれ変わりなのでは?』『初代皇帝陛下に最も近い皇子』などと他の貴族達が期待を込めて話していたよ」
「それは楽しみですね」
父上からグロース帝国についての話しを聞き、会話をしていると――前方から灰色の毛並みをした狼の群れが見えてきた。
これは初めての魔物遭遇では?
「父上、あれは魔物というものですか?」
「魔物だ。普通のウルフに、群れのリーダーも少しレベルが高いだけで上位種ではないただのウルフだな」
「あまり強くはない魔物なんですか?」
「ゴブリンやスライムなどと比べれば強い魔物だが、駆け出しの冒険者パーティーでも普通のウルフの群れなら倒せるだろう。勿論、ウルフのレベルや群の数次第では脅威度も変わるがな」
「そうですか。一度止まってウルフの群れを討伐するのですか?」
「その必要はない。襲って来るようなら馬か騎士達が討伐するだろう」
「馬もですか?」
「元は上位種の魔物だからな、ウルフ程度なら問題もなく引き殺す」
「そ、そうですか……あの馬は何処から捕まえて来たんですか?」
「私も知らんな。馬車屋が捕獲してきた馬に子供を産ませ、調教した後に販売している」
「そうなんですね……父上でも知らないとは驚きました」
「全ての魔物と遭遇した訳ではないからな。特に珍しい魔物は一割も遭遇しとらん」
「父上はどこで魔物狩りをしてレベルを上げたんですか?」
「野生の魔物や下級ダンジョンなどで、ある程度のレベルになってから〈土のダンジョン〉をメインにレベル上げをした」
「え!? 帝国には、7ダンジョン以外にもあるんですか?」
「規模の小さなダンジョンなら沢山ある。7ダンジョンは階層が50階層以上、それ以外は最大でも50階層規模のダンジョンだ」
「そうなんですね。〈土のダンジョン〉だと何階層まであるのですか?」
「私も知りたいくらいだ。7ダンジョンは誰も制覇出来ていないのだよ。もしかしたら初代皇帝陛下の冒険者パーティー『グロース』なら制覇していたかもしれんな」
「初代皇帝陛下のパーティーならありえるかもですね。しかし誰も制覇出来ないとは……何が難しいのですか?」
「一番の理由は環境変化の激しさだ。進めば進むほど厳しい環境になるので、魔物のレベルが上がる以上に厳しい戦いになるのだよ」
「環境変化ですか……想像しただけでも大変ですね。逆に下級ダンジョンなどは、どんな感じなのですか?」
「大きく分けると二種類あるな。一つ目は〈混合魔物ダンジョン〉名前の通りいろんな種類の魔物が出現するダンジョン」
「もう一つは同じ系統の魔物だけが出現する〈系統ダンジョン〉だ」
「ゴブリン系統なら〈ゴブリンダンジョン〉〈ゴブリン地獄〉〈ゴブリンの墓場〉などと一般的に呼ばれていて、最弱のゴブリンから上位種のゴブリンキングなども、ダンジョンの規模によっては出現する」
「ダンジョンにも色々とあるのですね」
父上から始めて魔物とダンジョンの話しを聞いていろいろと思った。やはり一番は俺も魔物を倒したり、ダンジョンへと行ってみたいという気持ちだった。
まだ下級ダンジョンにすら行ったことのない俺だが、いつか7ダンジョンと呼ばれる最難関のダンジョンにも挑戦してみたい。
最難関にもなると環境変化などの魔物以外の要素でも難しくなる。だからまずは野生の魔物を倒してから簡単なダンジョンへと挑戦して、少しずつ難易度を上げていこう。
ダンジョン挑戦楽しみだな〜。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます