第7話 家庭教師
今日から貴族として必要とされる基本的な教育が始まる。現在、勉強部屋の自分に与えられた机に座って家庭教師の先生が来るのをジッと待っている。
10分ほど外を眺めていると家庭教師の先生が部屋へと入ってきた。
「初めまして、今日から家庭教師を務めることになったディーナよ。よろしくね」
「グラン・レイブンです。こちらこそ今日から宜しくお願いします」
家庭教師の先生はそれなりに身なりが良く、年齢は40代後半くらいだろう。
「今日の予定ですが、午前中は言語学を基礎から教えます。お昼休憩を一時間ほど挟み、午後からは礼儀作法の練習という流れになります。何か質問はありますか?」
「そうですね。歴史、地理、算術はいつから始める予定なのか? 少し気になりますね」
「まずは勉強というものに慣れてもらうことが大切です。なので今週中は言語学と礼儀作法のみで様子を見て、問題が無さそうなら来週からは他の科目も追加するつもりよ」
「わかりました」
「それでは、言語学の授業から始めるわね」
〜〜一ヶ月後〜〜
ディーナ先生に授業を教わり始めてから、今日でちょうど一ヶ月が過ぎた。言語学、礼儀作法を問題なく学べ、二週目からは歴史、地理、算術の授業も追加された。
そして今日は一ヶ月の成果を確認する為にテストをする事になっている。
「おはようグラン君。今日はこれからテストだけど大丈夫そう?」
「そうですね。習った範囲だけなら、問題はないと思います」
「自信たっぷりね。それでは始めるわよ」
「はい」
テストの内容は授業で習ったことしか出されてなかったので、特に問題なく解くことができた。
予想通りだったが前世の記憶、経験のある俺にとっては簡単過ぎる内容だな。
知らない事でも勉強慣れした前世の経験に加え【暗記】スキルのおかげで、ほとんどの事が一度聞けば理解できて覚えられる。
「ディーナ先生、解き終わりました」
「あら? 早いわね! 私の予想だとあと一時間くらいは掛かるものだと……思っていたのだけれど」
「出題範囲が全て授業で習ったことだったので問題なく解くことが出来ましたよ」
「それは凄いわね! 今から採点するわね」
今回、私が教えることになった侯爵家の長男グラン君は教えたことの理解、覚えることがとても早くて正直な話し……凄く驚いてるわ!! 私が今まで教えてきた生徒達とは、いろいろと違い過ぎる。
まず、教えたことを一回でほぼ完璧に理解して覚えられるのがおかしいし……算術に関しては私も良く分からない方法であっという間に問題を解いてしまうわ。
それに何度、聞いたか数え切れない程に『ディーナ先生、それ本で読んだことがあるので大丈夫だと思います』と言われたわ。
そんなんだから既に予定してた教育の三ヶ月分の授業は終わり、その確認テストも余裕な顔してどんどん解いてたわね。
テストの採点が今終わったのだけれども、文句無しの満点だわ。今日はこれで授業を終わりにして、侯爵様にグランくんの事について色々と相談した方が良さそうね。
「グラン君凄いわね!! テストは文句無しの満点だわ」
「本当ですか! いくつか変なミスしてたら、どうしようかと……少し不安だったので安心しました」
「満点のご褒美で今日の授業はここまでよ。これからも頑張ってね」
「それは嬉しいですね。本日も、授業ありがとうございました」
〜〜sideラクサス(父)〜〜
私が執務室で書類仕事をしているとトン! トン! と扉をノックする音が聞こえてきた。
「侯爵様、家庭教師のディーナです」
「入れ」
まだお昼前だというのにグランの家庭教師ディーナが訪れたことに、少し驚いたが入室を許可する。
「失礼します」
「そこに座ってくれ。グランの授業で何か問題でもあったのか?」
「問題は特にありませんが……グラン君のことで侯爵様に相談したい事があります」
「言ってみろ」
「私が今まで教えてきた他の子達と比べて、賢過ぎるのですよ。本日、確認テストしたところ……想定してたよりもかなり早く問題を解き終わり満点でした」
「それは良い事ではないか。だが確認テストで満点を取ったくらいで賢過ぎると評価をしたのか? 他に理由があるのだろう?」
「そうです。流石に私も一回目の確認テストで満点を取ったくらいでは、賢過ぎるとまでは評価しません。今回の確認テストなんですが……実は三ヶ月分の出題範囲だったのにも関わらず、グラン君は問題なく満点を取ってしまいました」
「なに!? 既に三ヶ月分だと?」
「はい! グラン君の場合は教えたことをすぐに理解して覚えてしまいます。それだけではなく、まだ授業で教えていない内容に関してもいくつかは『本で読んだので分かります』と言われてしまいます。
本当に理解しているのか? 実際に質問して確認してみたところ、本当に理解しているので授業の進むペースが速すぎるのです」
「また算術に関しては私でも分からない方法を駆使して問題を解いてたりするので、正直申しますと教える必要がありません」
「なるほど、そうなると予定してた内容はいつ頃終わりそうなのだ?」
「そうですね。選定の儀までに覚える内容だと七歳には終わってしまうでしょう」
「そんなに早くか……授業日数を減らしても構わないから七歳で終わるように調整し直してくれ」
「わかりました。授業スケジュールの再調整次第また侯爵様に報告しますね」
「ああ、そうしてくれ」
グランについては賢い子だとは思っていたが……まさかこれ程とは予想してなかった。
以前話した時、剣術に興味があると言っていたから、勉強する時間を剣術の稽古に変えても良さそうだな。
剣術の才能まであるかは分からない。
だが今回の褒美として剣術の稽古を一ヶ月早め、騎士団長にグランの剣を一度見てもらうのが良いだろうな。
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