第6話 レイブン家

「父上、母上おはようございます」


 部屋からメイドと一緒に父上と母上がいる食堂へと向かった。既に席に着いている二人を確認した後、俺から朝の挨拶をして自分の席へと座る。



「おはようグラン」

「おはようグランちゃん」


「グランちゃん今日は誕生日だね!! おめでとう。もう生まれてから五年も経つんだね……はやいな〜」


「グラン誕生日おめでとう。以前に伝えたことだが、レイブン家では五歳から教育を始めるが大丈夫そうか?」



「はい! 父上。大丈夫だと思いますよ。特に剣術の稽古は今から楽しみです」



「グランちゃん剣術に興味あるんだ〜やっぱり男の子だね」



「以前、騎士達の訓練を見学した時から、自分もやってみたいと思ってました」


 母上は綺麗な長い金髪に碧眼が特徴的な、なかなかの美人だ。

 学園を卒業と同時にレイブン家へと嫁いで19で俺を生んだから年齢は24とかなり若い。


 父上は前髪が邪魔にならない程度の長さに整えられた銀髪黒眼の男前だ。母上よりも顔一個分くらい背が高く、無駄のない引き締まった体をしている。




「剣術に意欲的なのは結構だが、勉強の方を疎かにはするなよ」


「はい! 父上」


「週末には、帝都から呼んだ家庭教師の先生が来てくれるだろう。まずは言語学と礼儀作法を学び、問題がなければ歴史、地理、算術も学ぶことになる予定だ」



「レイブン家の名に恥じないように頑張って学びますね! ちなみに剣術の方は、いつから始める予定ですか?」



「そうだな……勉強の進行具合で三ヶ月から半年後になるだろうな。剣術を始める時期については、私と家庭教師の先生で相談して決めるつもりだ」



「わかりました! 少しでも早く剣術を始められるように頑張ります」



「グランちゃん、そんなに興味があるのね。なら良かったわ。今年のあなたへの誕生日プレゼントは、私と父さんから剣をプレゼントすることにしてたのよ。渡すのは剣術を始める前になるけど楽しみにしててね」



「父上、母上ありがとうございます」


 レイブン家では、五歳になると貴族として最低限必要な教育が始まる。内容としては、言語学、礼儀作法、歴史、地理、算術、剣術の基本的な教育となる。


 魔法についても学びたいのだが、レイブン家は武術寄りなので学ばない。

 父上にお願いすれば家庭教師を呼んでくれるかもしれないが、まずは勉強と剣術を頑張ってから考えることにする。


 レイブン家とは、俺が生まれたグロース帝国の侯爵家の一つである。グロース帝国の貴族制度は上から皇帝、皇族、公爵、侯爵、伯爵、子爵、男爵、騎士となっている。


 俺はレイブン侯爵家の長男として生まれたので、貴族の中ではそこそこの地位にいる。


 レイブン侯爵家があるのは、グロース帝国の帝都グローリアから北に進み、馬車で2週間のところにあるレーヴァン領である。


 レイブン侯爵家はレーヴァン領を治めている貴族となる。

 ちなみに、先ほど話しにあった騎士達の訓練とはレイブン侯爵家が従えているレーヴァン騎士団の騎士達のことだ。





「父上、義母様と義弟は元気にしてますか? 最近は屋敷でもあまり見かけないので、少し気になっていました」



「フリアとリックなら問題はない。フリアの性格が少々問題ある為に、二人には苦労を掛けて済まないな」



「なら良かったです。義母様は少し……特殊な方ですが、それで迷惑してる訳でもないので気にしないで下さい」



「そうよ。お話することが出来ないのは悲しいけど、私も気にしてないから大丈夫よ」


「二人ともありがとう」




 今代のレイブン侯爵家は、俺、父上、母上、義母、義弟の五人いる。


 俺はグラン・レイブン。

 レイブン侯爵家の長男。


 父上はラクサス・レイブン。

 レイブン侯爵家の現当主。


 母上はシオン・レイブン。

 ラクサスの第一夫人で伯爵家の出身。

 学生時代に父上と出会って恋愛結婚した。


 義母はフリア・レイブン。

 ラクサスの第二夫人で伯爵家の出身。


 義弟はリック・レイブン。

 レイブン侯爵家の次男。



 本来であれば、恋愛結婚というのもあり母上とだけ結婚する予定だったのだが、それは叶わなかった。


 義母のフリアは性格が少々……いやかなり問題がある為に、元々婚約していた相手に婚約破棄されてしまった。

 新しい婚約相手を見つけることが出来ずに半年が経った。その頃から義母の父は焦りに焦って、知り合いの誰かの息子と娘を結婚させる為に動き始めた。


 その知り合いの一人にレイブン家の先代当主、俺の祖父が居たという訳だ。祖父は義母の父に大きな恩があった為に、その話を息子ラクサスに持っていった。

 悩みに悩んだ結果、父上は義母フリアを第二夫人として迎い入れることになった。


 それは丁度、俺が生まればかりの時だった。後から来たのにも関わらず、第二夫人フリアはすぐに父上とラブラブの母上に対して強い嫉妬心を抱いた。

 そんな義母なので、同じ屋敷で生活していても俺と母上は殆ど会う機会はない。


 そして嫁いですぐに身篭ったのが、義弟のリック・レイブンである。





「話は変わるが三ヶ月後、お前を皇帝陛下に顔見せすることが決まった。失礼がない様に家庭教師の先生からその辺の礼儀作法をしっかりと学んでおけ」



「三ヶ月後ですね、わかりました。皇帝陛下に挨拶するという事は……顔見せする場所は帝都グローリアで合ってますか?」



「そうだ。帝国城で会うことになっている」



「帝都グローリアに帝国城ですか。皇帝陛下に会うのは凄く緊張しますが、色々と楽しみにしときますね」



「グランちゃんは帝都グローリア初めてだもんね。帝都も帝国城も見たら驚くわよ」



「そんなにですか? 早く見てみたいです」



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