相思相愛な雰囲気はあったよね。
『空』と大きく書かれたTシャツをアキナリは着ていた。
守銭奴のくせに『空』って、と思いながら、
「モモカねえ、男運が絶望的なの、さらに絶対幸せにしないであろう男に限って、モモカに近づいてくるのよ。アキナイくんなら解るでしょう」
「うん、モモカちゃん、優しいから、その優しさに付け込もうとする奴らね」
「そう!」
「モモカちゃん、人が良いと言うか、人を見る目がないと言うか、アホと言うか」
『アホ』とまで言わなくても良いのに、まあ『アホ』なのだが。
「このままでは、モモカは仕合せにはなれない!」
「で、俺に商売の依頼?」
「そう」
「具体的な依頼内容は?」
「モモカの人生でたった一つだけ、モモカをしあわせに出来そうな男がいたの。
中学の時のモモセくん」
「モモセ・・・」
アキナイくんはじっと何かを考えていた。そして、
「はい、はい」
と言って微笑んだ。
「モモセくんなら、モモカをしあわせに出来ると思うの。
男の目線から見て、モモセくんってどう思う?」
「そうだね。男としても良い奴だと思うし、商売人としても信頼できる奴だと思う。
あの当時も、もっとも信頼できる奴だとは思ってた。ちょっと弱気な所があるけど、優しい良い奴だね」
「やっぱり。アキナイくんが良いなら、そうなんだね」
「でも結ばれたら、モモセモモカになるよ。どんだけ桃が好きやねんって」
「それは仕方ない。でね噂で今、モモセくんに付き合ってる人はいないらしいって聞いたの。だから依頼内容は、モモカとモモセくんを付き合わせて欲しいの。出来れば結婚までゴーに、それ以外にモモカがしあわせになる方法はない!ずっと一緒に住んでいて、わたしはそれを確信したの!」
「当時、モモカちゃんはモモセの事が好きだった?」
「うん。相当好きだった、近づくだけでカッチカチに緊張してた。
だから何も出来ずに中学卒業。
問題はモモセくんがモモカを、どう思っていたかってとこ。
男子の側から見てどうだった?」
「モモセ・・・『誰が好きか』って修学旅行の夜に聞いたことがあるけど、どうだったかな・・思い出せない」
「そこは覚えとけよ!大事な事でしょう!」
「でもあの2人相思相愛な雰囲気はあったよね。付き合ってはなかったけど」
「うん、うん。この依頼、出来る?」
「確か今度同窓会があったはず」
「そうそのチャンスに、あの2人を結んで欲しいの」
「面白そう」
アキナイはそう言うと、ギラギラした守銭奴の目で、わたしの顔を見た。
「その顔、金次次第って事?」
「そう」
『財布を出せ』とアキナイは手を出した。『財布ごと?』わたしは怯えながらも、モモカの為と思い、財布ごとアキナイに渡した。
「うわ!」
アキナイはわたしの財布の中身に驚いた。わたしにとっては日常なのに。
「本来なら相場として数万は必要なのですが、貧乏そうなメグミさんには、厳しそうなので、当時の中学生料金の500円で良いよ」
「えっホント」
こうして契約は成立した。
アキナイのにやける顔に、少しだけ不安を覚えたが。
つづく
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