第12話 かわいい すてきな おじょうさま2
おいしいおいしいチョコレートをネリーナと一緒になって食べました。けれどすぐに無くなってしまいました。しかし、新作のチョコレートはまだ食べていないようです。
「ネリーナ。この新作チョコを食べますわ。」
「メア様。楽しみですね」
小さめの箱をパカリと開けると中からはチョコレートが出てきます。しかし普通のチョコレートと違うところが一つ。緑色の粉のような物がついています。これは一体何でしょう。
「これはなんですの? きっもちわるい色ですわね。本当に食べれるんですの?」
「これは抹茶というもので、日本という国の紅茶だそうです。たまたま頂いたのですが、チョコレートと一緒に食べているときに偶然チョコレートにかかってしまいまして。それが意外とおいしいものですから店で出してみようということになりました。メア様も食べてみれば気に入ると思いますよ。」
おじさんは自信たっぷりです。きっと、とんでもなくおいしいんでしょう。チョコレート好きのメア様にはうってつけです。
「わかったですわ…」
しかし、どうやらメア様は緑色のチョコレートに抵抗があるみたい。いつもの黒っぽいチョコレートはどこに消えてしまったのでしょう。頑張れメア様。食べればきっと美味しいはずです。
パクリ
「ベッ!! ベッ!!」
あらあらメア様。いけませんよ。せっかくの大好きで楽しみで大切なチョコレートを地面に吐いて捨ててしまいました。
「まっずいですわね!! 何考えてますの? 二度と食べませんわ!!」
どうやらメア様のお口には合わなかったみたい。急な大声にニコニコしていたおじさんも驚いています。しかし、大好きなチョコレートが緑色の粉で不味くされてしまったのですから。怒ってもおかしくありません。
「私は美味しいと思うんですけどね〜。この苦味がいい味を出してます」
メア様はびっくりです。ネリーナは美味しいと言ったのです。この緑色チョコを。メア様としては黙っていられるはずもありません。
「うっさいですわ。ネリーナ。辞めたくなければ静かにするんですわね。」
「はい…」
メア様はとっても怒っています。ネリーナがあんなに不味い物を食べさせられてしまったのです。無理して言っています。
「二度とこんな物を作ってはいけませんわ。こんな不味い物。この店はいつもの高級チョコレートしか作ってはいけませんわ。こんなものを皆が食べたら苦しくなってしまいますわ。それに入り口のゴミみたいに不味いチョコレートも作ってはいけませんわ! あんな物を作ってるからこんな不味いチョコレートができてしまいますの。」
おじさんはとても嬉しそうにしています。自分で作った物の不味さに気づいたのでしょう。自分で作った物の評価は自分では付けられないものです。
「メア様。貴重なご意見ありがとうございます。私ども一同美味しいチョコレートが作れるよう一層努力をさせて頂きます」
メア様はとてもいい気分。とってもいいことをしました。なんと言っても不味いチョコレートから皆を守ったのです。もしお父様が食べてしまえば倒れていたかもしれません。
「わかればいいんですのよ。では、またきますわ。今度はきちんとしたチョコレートを出して下さいまし。」
とってもいいことをしたメア様。今日もロンドンの平和を守ってくれたメア様。皆にはまだ気づいてもらえてませんが、いつも影からロンドンを守っているのです。
この前は不味そうな物を売っている商人を懲らしめて、その前は小さい子供が働かされているのを辞めさせて、その前は街にいた汚い人を追い払って、その前は…その前は…たくさんたくさんいいことをしてきました。
いつかはきっとお父様も認めてくれて昔のように遊んでくれるようになるはずです。メア様はそれが楽しみで楽しみで待ちきれません。
「さっきは危なかったですわー。」
今日のお出かけはまだ始まったばかり。こんどは何処へ行きましょう。
「次は何処に行くかですわね…ネリーナ何かありませんの?」
「そうですねー」
どうやらネリーナも行く先を決めていないみたいです。困りました。どうしましょう。このまま考えているだけではせっかくのお出かけが台無しになってしまいます。それはいけません。
「あっ! そういえば、屋敷のメイドたちが話していたことなのですが、このロンドンで無免も無しに眼科をやっている場所があるみたいなんですよ。そこに行ってみますか?」
「それは免許がいるんですの?」
無知なメア様はなんにもしらないお嬢様。きっととっても悪いことなのでしょう。それは懲らしめないといけません。
「そうですよ。一応無くてもできますけど、じゃあメア様様はあの汚い人に病気を治療してもらいたいですか?」
ネリーナが指差す先には隙間の路地から出てきた汚い男がいました。メア様はそんな汚い人からはちりょうを受けたくありません。むしろ逆に病気になりそうです。
「いやですわ。勘弁してくださいまし。」
「だから免許がいるんですよー。メア様」
ネリーナのお話はいつもとってもわかりやすいです。難しいお話もチョコレートのようにたくさん聞けます。なんと素敵なメイドさんなのでしょう。
「わかりましたわ。使えないメイドの話もたまには聞いてあげますわ。」
こうしてメア様とメイドのネリーナは免許を持っていない悪いお医者さんのところへ向かったのでした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます