第21話 新川悠5
アキラ。これを読んでいるということは僕の家を訪ねてくれたんだね。君は、僕がやってしまったことを知って、この携帯を調べたんだと思う。パスワードを君に分かるものに変えておいて良かった。
君に謝らないといけない。あの日は、すまなかった。
あの時、君が何と言っていたのか、それをずっと考えていたんだ。結局分からなかったよ。本当に恥ずかしい。自分のことしか考えられないことが。でも、一つだけ思い出したんだ。あの時、君は泣いてた。だから、きっと僕のことを心配してくれてたんだと思う。
そんなことも分からず、僕は、、、
いや、初めからだ。僕は君の境遇を聞いた時から嫉妬していたんだと思う。僕と君を比べてしまって、僕以上に辛い状況なのに明るく振る舞う君に。
この件は誰のせいでもない。僕が弱かったのが全ての原因だ。今君に読んで貰ってるこれだってそうだ。僕は、こんな記録を残さないと自分を保てない。自分の弱さを戒めたくてもできない。抜け出せない。
僕は、僕は自分が許せない。君を、両親を、ひなたちゃんを傷つけてきた自分が。そして、何よりも、あの日、逃げ出したことが。なぜ、なぜ、僕は、戦うことすらしなかったのか。人の前で手が震えるなんて言い訳だ。動悸がするなんて、吐き気がするなんて、なんとかなったはずだ。でも、でも、逃げた。どれだけ今後悔しようと、それが真実だ。それが、僕なんだ。もう、僕でいることが疲れた。情け無い新川悠でいることが。
すまない。心配してくれたのに。結局こんな結論になってしまって。
もし、僕との間にまだ友情を持ってくれているなら、最後に頼みを聞いて欲しい。僕は父さんと母さんをまた酷く傷つけてしまうと思う。だから、たまに二人の様子を見てあげてくれないか?
あと、もう一つだけ、ひなたちゃんに伝えてほしい。「あの時、君に酷いことを言ってごめん。それから、嫌わずに僕のわがままに付き合ってくれてありがとう。もう僕のことは忘れてくれ」って。
最後まで君に頼ってごめん。でも、君にしか頼めないことなんだ。
どうか、頼む。
本当は、僕の思い描く僕になりたかった。胸を張って外の世界へ行けるような僕に。親孝行できる僕に。ひなたちゃんの隣にいられる僕に。
ごめん。
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