第15話

翌日


 時間通りに剣を受け取り、準備が整った。


 再びダンジョンへ足を運び、地下四階へと突入した。


 「ふぅ。あぁ~疲れた」

 「そんなんでこの先どうすんだよ。ほら、早く進みなさいっ!」

 「うぉっと! 急に押すなよ!」


 この階からゴブリンの中にこん棒以外の武器を扱う個体が増える。


 刃が欠けた短剣や今にも弦が切れそうな弓など、粗末な事には変わりないが、殺傷能力は上がっている。油断はできない相手だ。


 「こういう武器とかも回収できればいいんだけどなっ!」

 「グギャブ!」


 短剣を持ったゴブリンを斬り伏せると、手に持った短剣毎、黒い靄となって消滅してしまった。武器もダンジョンモンスターの一部、ということなのだが、例外もいて……


 「何だあいつ? ゴブリンのクセに贅沢なもんぶら下げやがって」

 「あんなのもいるのか」


 二人が発見したのはいつも倒していたゴブリン。だが首から赤い宝石があしらわれたネックレスをかけていた。


 そのゴブリンも同様に倒す。すると、ゴブリン本体とこん棒は消滅したが、ネックレスは消滅せず、魔石と一緒にポトリと地面に落ちて残った。


 「あん? なんでこれ消えねぇんだよ?」

 「知らないが……どこかで見たなこれ」


 うーんと唸りながらも記憶を辿る中田。


 「最近……つい最近……いや、さっき見たような……あっ! これ雑貨店の!」

 「おぉっ!? そういえばこんなのあったな」

 「ということは、これを売れば結構な金額になるんじゃ……」

 「マジかよ! さっそく売りに行こうぜ!」

 「あ、おい! 待てって!」


 

雑貨店


 「で、どうだったよ?」

 「ああ、確かにここで売られているものと同じ物だ。どうやら一部のダンジョンモンスターは装飾品や武器防具、道具を身に着けているらしい。さしずめレアモンスターとでも言ったところか。

 身に着けているものは残って、討伐した冒険者たちの物になるそうだ」

 「へー、どういう理屈なんだろうな。人工物がダンジョンで採れるなんてよ」

 「知らん。知りたくてもまだそこまで複雑な会話ができない」

 「で、肝心の値段は?」

 「大銀貨一枚と中銀貨八枚。店での売値より四分の一以下の金額だな」

 「何だよ! 結構あるけど全然少ねぇじゃねぇか」

 「まぁ、言いたいことはわかるが……」


 中銀貨三枚から四枚でそこそこ贅沢な食事一食分程度の金額。日本円で言えば、中銀貨一枚はだいたい千円前後くらいの価値である。


 大銀貨は一枚で中銀貨十枚分。つまり約一万円前後。ネックレスの売値は日本円に直すと一万五千円から二万円といった具合か。


 二人が泊まっている安宿なら数十日は宿泊できるが、何とも微妙な稼ぎだ。


 「だからもっといい方法を考えた」


 そういって中田は件のネックレスを掲げる。


 「何だよ、結局売らなかったのか?」

 「もっといい方法を考えたって言ったろ? こいつを使えば……」



 「またスッカラカンになっちまったな」

 「そんなの買ってどうすんだよ?」


 魔石を売ったお金を使い切り、中田はダンジョン攻略には必要のない松明、松明に火を灯すための特殊な結晶『火結晶』、そしてガソリンの臭いがする液体を購入した。


 「これを見ればわかるだろ? ボスを火あぶりにするんだよ」

 「そんな上手くいくのか? 相手は魔物のボスだぞ?」

 「その為のこれだ」


 中田は田中へ先程のネックレスを放り投げる。


 「それはお前がつけておけ。作戦の要だ」

 「……何かすげぇ嫌な予感がするが仕方ねぇ」

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