第9話

 「なぁ、結局あいつの言ってることわかったのかよ?」

 「……まぁ、大まかにだがな」


 中田は田中になんとか手に入れた情報を共有する。


 「あの金髪の男の名前はウーノ。どうやらあの死んだ男たちを追っていたみたいだ。何でかまではわからないが、状況から見るに、捕縛か討伐が目的だろう。ちなみにあの大柄の男がドーバ。弓を持った色白の男がトレイ。女性がテトラだ」

 「ほとんど名前しかわかってねぇじゃねぇか」

 「ならお前がやってみろよ」



 『それでウーノ。何かわかったの?』

 『名前だけだ。さっきまで話していたのがナカタ。もう一人の剣を持った男がタナカだ』

 『ナカタにタナカ……聞きなれない名だな』

 『言語も通じないし、もしかしたら大陸の向こうからやって来たのかもしれないな』

 『で、どうするつもりだ?』

 『もしあの二人が盗賊どもを討ったのだとしたら、報酬は彼らに譲るべきだろう』

 『まぁ仕方ないわね。無駄足になったけど、後々トラブルの種になりそうなことは避けないと』

 『確認はできるのか?』

 『どこのギルドで依頼を受けていたかは訊ける?』

 『流石にそこまで複雑な質問は無理だ』

 『とにかく、一旦イーゼの街へ帰ろう。二人も連れて』

 『そうだな。ナカタ!』


 ウーノは二人に『一緒に 来ないか?』と問いかける。


 「おそらく共に行動しないかどうかを訊かれているな」

 「どうすんだよ」

 「……お前、今の状況がどのくらいヤバイかわかっているか?」

 「何だよ急に」

 「見知らぬ土地に何故か二人。帰り方はわからない。言語は通じない。金も食料もない。そしてここの人間は武装するのがどうやら普通のようだ」

 「つまり、どういう事だよ?」

 「ここでウーノたちとの関係を終わらせるのは非常にリスクが高いってことだ」

 「てことは」

 「あぁ、彼らにつく」


 二人はウーノたち四人と共にイーゼという街へ向かうことにした。


 移動中も、中田はウーノたちに話しかけ続けた。一刻も早く言語を習得するためだ。身振り手振りを駆使し、聞こえた単語を必死に頭の中に詰め込む。


 一方田中は……一人大人しくしていた。

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