第7話

 叫び疲れ、スマホも圏外なため連絡もつかなければ調べることもできない。仕方がないのでとりあえず辺りの散策をすることにした二人。


 下るための階段を見つけ、とにかく降りることにしてみた。


 段差が急なため慎重に降りる。途中、田中は何度か転がり落ちそうになった。当初は中田が先を進んでいたが、巻きこまれてはかなわないと先を行かせた。


 石造りの螺旋階段を降りると、太陽の光が一瞬視界を潰す。


 光に慣れ、徐々に視界の色が戻ってくると、目の前には広大な草原と、鬱蒼と生い茂る森林が広がっている。


 二人が先程までいた場所は何かの塔だったらしく、周囲の景色との調和を乱し、異彩を放ちながらも堂々と聳え立っていた。


 「本当にどこだよここ」

 「周囲に手掛かりになりそうなものは無し。とりあえず森を抜けるか」

 「森を抜けるって、危険じゃねぇのか? 熊とか出たらどうすんだよ熊」

 「あそこに道ができているだろ。人の行き来があるってことだ。そうそう危険な生物には出くわさないはずだ」


 中田の指さした先には、人為的に造られた道が森の中へと続いていた。アスファルトではないが、ほどほどに整備もされている。今も使われている道であると推測できた。


 もちろん、それでも警戒は怠らなかったが、予想通り森に危険はなかった。木漏れ日が照らしてくれているおかげで視界も良く、不気味さも感じない。


 しばらく歩くと木々の隙間から洞窟の様なものが見えた。本当に熊でもいたら一大事なため、おそるおそる近づいて様子を見る。


 開けた場所の奥に洞窟があり、その入り口には男が座り込んでいた。


 「何であんなところに人が?」

 「寝てんのか?」

 「何であんなところで寝るんだよ」

 「お前もさっき寝てただろ」

 「そうか。もしかしたら俺たちと同じでいつの間にかこの場所に居た人なのかもしれないな」

 「なるほど。お~いそこのあんた」

 「ば、バカ! 軽率に行動をするな!」


 のんきに大声を上げ、ズカズカと近づいていく田中。


 田中の声にも反応を示さない男。何度か呼び掛けても反応がないため駆け足で近づくが、男の容態を見て田中は突然狼狽しだした。


 「うおぁああああああ!?」

 「どうした!?」


 茂みから様子を窺っていた中田も飛び出して駆け寄る。


 「あ、あいつ、死んでる!」

 「何?」


 中田は警戒し、おそるおそる男へと近づく。


 「うっ!?」


 思わず口を塞ぎ、後退りする中田。


 男は確かに死んでいた。腹部にはごついナイフが深々と突き刺さっており、溢れ出した血は止まってこそいるものの、まだ乾いてはいない。


 熊などの野生動物によるものではなく人間によって殺されていた。しかも、殺されてからさほど時間は経っていない。


 中田は警戒心を最大まで高めて辺りを見渡す。


 怪しい気配はない。


 洞窟の中も覗いてみる。暗くて奥までは見えないが、何人もの男が血を流しながら横たわっていた。

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