第5話
前回、『突拍子もなく』、『いつの間にか』異世界へとやってきていた田中と中田、二人の様子を見てもらった。
しかし、それは転移してから約半年ほど月日の流れた頃の様子だ。
時を少し遡り、転移直前、そして転移直後からしばらくの間を見ていこう。
転移直前
田中の様子。
「ありがとうございました~」
店員の声を背に受け、コンビニか.ら出てきたのは、レジ袋におにぎりや総菜パン、飲料やお菓子などを買い込んだ田中だった。
彼は現在、試験期間真っただ中。授業が午前中で終わり、各々が定期試験へ向けての仕上げに取り掛かる期間だ。
食糧を買い終え、家に戻れば夜中まで勉強漬けな時間が待っていると思うと、たまらなく億劫になり、思わず舌打ちをする。
「くそっ! めんどくせぇ」
ミンミンと鳴くセミの声と、うだるような暑さが田中を更にイラつかせる。
まだ昼過ぎなため両親は仕事中。帰宅した田中は昼食を食べ終え、階段を上がる。
ピンポーン!
玄関からインターホンが鳴り、「田中さーん。お届け物です」と、宅配が届いた。
「はーい」
踵を返し、田中は玄関のドアを開けた――
中田の様子。
ジリジリと照りつける太陽。熱中症だろうか? 救急車がサイレンを鳴らして家の前を通り過ぎていった。
「……」
サイレン音に思わず振り返る中田は、冷房の効いた自室で勉強の真っ最中だった。
調子は順調だった。だが、先程のサイレンで集中が途切れた。いつもなら気を入れ直し、数秒で集中し直すところだが、ちょうどキリのいいところで終わっていたのと疲れから、中田はシャープペンシルを置いた。
「少し寝るか」
眠気も感じていたため、仮眠を選択。スマホのアラームをセットし、中田は瞼を閉じた――
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