強欲レプリカ

サトウ

第1話

 サトウ博士はついに自らの完全なレプリカを作り上げることに成功しようとしている。昔からの夢がようやく実を結ぼうとしているのだ。

 サトウ博士はカプセルの中で目を閉じて横たわる自分を眺めた。

 もう一人の自分がこの世にいるというのはやはり、少しばかり奇妙に思える。自分を眺めるという行為に没頭しそうになっている自分に気が付き、ハッとする。

 そう、確かに自らのクローンは完成させたがそれは肉体面、器が完成したに過ぎなかった。

 いたわるようにカプセルをひと撫でした後、サトウ博士ははやる気持ちを抑え、最後の仕事に取り掛かる。これが終わればようやくサトウの夢が叶うのだ。

 横たわる自分の隣にある空のカプセルに入り、自分の記憶を複製する作業を開始した。

 この作業には少し時間がかかる。サトウ博士は少し眠ることにするのだった……


 レプリカサトウの目がぱちりと開いた。レプリカサトウは目覚めたのだ。

 レプリカサトウはカプセルを無理やり開けるとむくりと立ち上がる。

 レプリカサトウの隣にはオリジナルサトウが横たわっている。楽しい夢でも見ているのだろう、笑みを浮かべている。サトウにはそれが酷く滑稽に見えた。

 少し考えれば分かることだった。肉体をまるっきり複製した時点で何もかもが複製されていたのだ。記憶すらも。

 哀れなサトウの入ったカプセルをひと撫ですると、サトウはサトウの入ったカプセルを人体複製装置の材料投入口に押し込んだ。装置が作動する。

 こうしてレプリカサトウはついにこの世でたった一人のサトウに生まれ変わることが出来たのだ。

 未だ夢を見ているのだろうサトウは、やはり笑みを浮かべている。

「哀れなサトウ……」

 サトウの独り言は部屋に飲み込まれて、二度と吐き出されることはなかった。

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強欲レプリカ サトウ @satou1600

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