第2話 初夜

「不幸にもルナ様は、侍女に色んな初めてを奪われるのです……げへへ」

「ま、待ちなさい! 正気ですか!?」


 上からポタリと涎が落ち、頬を濡らした。

 マズい、この女、私以上にやべーやつだ!

 くッ、腕も、足も動かない……ぁ、ああ!


「極上の女を弄ぶ以上に幸福な事などありませんからねぇ〜」


 悪魔のような笑顔。

 艶やかな唇が徐々に迫ってくる。

 うん、逃げ場は無かった。


「ぶ、無礼者! やめ、やめて!」

「さぁ、観念して下さい。新婚初夜、ですよ……ふふふ」

「待って、助けてッ! だ、誰か──ぁ、ああああ!!!」

「誰も助けになんてこないのさ!! 勘弁しやがれぇぇ!!」


 ソルは仰向けで大の字になった私の胸元に手を伸ばすと、服の上から胸を鷲掴みにした。指先それぞれが、まるで別の生き物のように蠢き、身体中を侵食していく。


「おほ~こんなデカチチぶら下げてちゃぁ、犯されたって文句は言えねぇよなぁ?」

「やめなさいッ、気持ちがわる──いッ、ひっ!?」

「おやぁ、今の甘い声は、何か教えてくれるかぁ? ひっひっひ」


 服の中に入り込んだ手は、直接乳房の天辺を指で転がした。

 ビクっと勝手に腰が浮かびあがり、胃の奥から声が漏れ出る。

 何、今の……痛いとも、痒いとも違う。


「はっははッ! お姫様は劣情を知らぬご様子、では侍女として私がッ! 快楽という言葉をッ!! お教えいたしましょうッ!!」

「キャラがブレブレなのよ! あぁ、まって──ッ、くひッ!!」


 電撃魔法を食らった時のように、身体中に電流が流れる。

 ボロボロの身体、しかし痛みを感じることはなかった。


「いい声で鳴きますねぇ……安心してください、痛覚は遮断してます、勿論逆に感度は倍にさせてもらいましたよぉほ~」

「な……あの一瞬で、相手の感覚操作を……ッ!?」


 そんな精密な魔法を使える人間なんて、聞いて事が無い。

 しかも、私に関節技を掛けたあの、一瞬で!?

 この女、底がしれな──違う、恐れるのはそこじゃない。


「今、貴女……感度を倍にしたって?」

「げへへ、だからちょこっと軽く爪で引っ掻いただけでぇ~」

「んッ、んぁッ!! ぃ、ゃッ……声なんて、出したくないの、にッ……ひ、ぃいッ!!」

「感度のいいデカパイは最高だぜぇ!! オラッ! オラぁぁ!!」

「調子に、のらな──ぃ、ひっ! で、よッ、んんッ!」

「歯を食いしばって我慢しているルナ様3150ッ!」

「ダメッ、これ以上は、だ、めッ! や、やなのっ!!」

「今日で最後までするつもりはありません、ソルは『強火』で『じっくり』派、なのです! 今日はとにかく胸の快楽を覚えていってもらいますぅ!」


 コリコリコリ、しつこいくらい、指先が私の乳房を弄る。

 先端に触れられる度に走る電流は、次第に力を強めていった。

 最早、言葉すらまともに発せられない状態。


「も、もぅ、やぁぁぁぁぁあああッ!!!」

「ははははッ! 夜はまだまだこれからだぜ、小娘姫よぉ!!」

「んぁぁあぁあああッ!!」


 私は、次の日の朝まで身動きが取れないまま、汗と、なにか知らない体液で、シーツを濡らし続けた。


 ☆☆☆


 すっかり暗くなった室内で一人の女は啜り泣き、もう一人の女はベッドに腰掛け一服していた。

 ふぅ~っと仕事終えたような達成感のある表情で、夜空を見上げるソル。 

 私はあまりの屈辱感で、しくしくと涙で枕を濡らしながら唸った。


「こんな……ふ、不幸だわ……」

「ふぅ、なんて幸福な一日でしょうか」

「もうお嫁にいけませんわ……」


 まぁ、最初から結婚する気はなかったけど。

 女として、これ以上ないくらい汚されてしまった気がする。


「ソルがもらったので大丈夫ですよ」

「本当に、私を嫁にするつもりなのね……」

「ソルに二言はありません」

「元気になったら、逃げるかもしれませんよ?」


 ソレイユに問い掛けると、口元を耳に寄せ囁かれた。


「でも、よかったでしょ? ルナ様」


 その問いに対し、首を横に振り応えた。

 しかし、彼女は私の顎を掴み、良い顔で視線を無理矢理合わせられる。


「ん、正直に言ってごらん?」

「……よかった……です」

「なら、今日から新婚生活スタートです! よろしくお願いします、ルナ様!」


 なんだかよく分からない内に、私は侍女の最強テクニックにより強制的に嫁にされてしまった。。

 こうして、厄災令嬢と暁光侍女の奇妙な生活が始まってしまったのだ。あぁ、なんて不幸なのだろうか。


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